side fiction/ 森山猫劇場 第31話
イタリア風メンズファッションの初老の男性、神社の宮司の
「お久しぶりです、光崎様」
小野さんと花純さんが挨拶を済ませ、最近は株で投資をしているという小野さんの世間話のあと、香織さんに要件をたずねた。
応接間に香織から呼ばれて三人が入室すると、花純は驚いて目が点になっていた。
(もう、これは何がなんだか、私にはわからないわ)
聡は全身がうっすらと赤い淡い光に包まれているように見える。強い「精気」の持ち主に見える。
その後ろから、そおっと顔をのぞかせて目が合うと隠れてしまう「もふ」には、白い獣の耳やしっぽが見える。人間ではない?
そして、以前に何度か同じ年齢の光崎家の御令嬢とは面識があるが、目の前の人はまるで別人のように見える。聡とは異なる霧のような白い淡い光に包まれているのが、花純には見えている。
「花純さんは、もう気づかれたようですね」
香織が微笑を浮かべて、花純に向けて言った。
小野さんは、特別な力のある術者ではなく、神社の経営者なので三人を見ても驚かない。
神社の「神主さん」の小野さんはソファーから立ち上がり、愛想良く全員に軽く一礼した。
花純も、異界に自意識を飛ばして、そこで不動明王の浄化の力を具現化することはできる。
しかし、今、いるところは現実の外界で、これほど鮮明に力が見えてしまったり、「もふ」のように具現化しているように姿が見えるのは、あり得ないはずだった。
「……なるほど」
小野さんは、陰陽師の香織に、巫女の花純が協力して、異界で光崎家の御令嬢の美優を探索するという依頼だと考えた。
鼻すじの通った細面の落ち着いた雰囲気がある美しい顔立ちの花純さんは、光崎家の御令嬢の自意識が失踪しているいきさつを聞かされて、呆然としている。
クダ使いと陰陽師の現実の外界を異界化した「奇門遁甲」の結界内での戦い。自意識のない肉体の法術による使役。霊獣クダキツネと柴崎教授の憑依融合。光崎家の令嬢へのキツネ憑きと、クダ使いの自意識の再生。霊獣クダキツネと術者のクダ使いの肉体との憑依融合。人間と霊獣が融合した「もふ」に「精気」をたっぷり分け与える人間離れした調伏。
自分の知っている術者たちの実力とは、あまりにかけ離れすぎていて、すぐには理解できない。
「あの、光崎様、私は何をすればいいかわかりません」
この花純さんの返答を、夢ですでにみていた。だから、同じタイミングで同じことを言うと、花純さんはじっと顔を見つめてきた。
「読心術……私の唇の動きを予想して、同じことを言ってみせたのですか?」
「ちがいますよ、そんなことは、僕にはできない」
説明されているうちに、巫女の花純さんは、香織さんや柴崎教授からいきさつを聞いていた時のような困惑した表情は消え、緊張した表情で何度もうなづいていた。
・巫女の小野花純に、この世界がループを繰り返していることを伝える。
それが8月26日のループ阻止の条件として、
それがどんな意味があって、何が起きるのかまでは、伝えて来なかった。
8月25日の朝から「もふ」に餌やりをして、がんばりすぎたのか気絶するように眠ってしまい、夢をみた。
そこで昼食の頃にちょうど目を覚ましたあと、昼食を食べながら香織さんと柴崎教授に、巫女の小野花純という人を知りませんかと相談してみた。
香織さんは、花純さんを知っていた。子供の頃から修行を行って、現在はある神社でお祓いを行っている女性で、美優ちゃんと同じ誕生日の巫女だという。
「色白で、左目の下に小さな泣きボクロがある人ですか?」
「ええ、聡くん、たしか黒子があったと思うわ」
巫女と聞いて、柴崎教授は眉をぴくりと動かして、顔をこわばらせた。クダ使いは神社からインチキ
香織さんは、神社の宮司の小野さんに連絡して、小野さんと花純さんを邸宅へ呼んでくれた。
「では、今月末まで、そちらに娘をあずけましょう。いつもとは逆ですな」
小野さんは、他の神社の宮司たちが手に負えないという案件を引き受けてくる。
娘の花純が忙しく手が回らなくなると、仲介料をもらい、陰陽師の香織さんに依頼して処理してもらってきた。
(ああ、どうなることかわからないけれど……それにしても、本当に
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