side fiction /森山猫劇場 第22話
聡は
だから、呪符を剥がして、
聡は
香織が柴崎教授を呪殺せずに、生かしておかなければならなかった理由を考える余裕がなかった。
朝食を終えて、この日、美優が出かけずに邸宅にいる予定だとわかった。
出かけたのは香織で、この日は茶会があるということで、午後は邸宅にいない。
朝食時に、その日の予定を、家人へ伝えておく習慣がある。
朝食の時間は、給仕をしているメイドのメイリン、香織、美優、聡の全員が、朝食のために、食堂に集まっている。
柴崎教授は、聡に夕方まで自分の提案を受け入れるかを考える
紫クダキツネの柴崎教授は、朝食の時間のうちに、聡には眠っていると伝えておいて、書斎からこっそり抜け出している。
聡は香織が出かけていくと、美優の部屋を訪ねた。
聡が8月末に世界がループしないようにしていること。
その条件の達成のため
そのループを阻止する条件のなかに、香織と関係を持つことがあったこと。
こうしたことを説明してから、今夜は、メイドのメイリンに夜這いをかけなけばならないことも、美優へ打ち明けた。
紫クダキツネと、柴崎教授の肉体がメイドのメイリンだということを、聡は美優に話さなかった。
先日、聡はどうして人妻の香織と関係を持ったのかと、美優に質問されていた。
その聡のたどたどしい答えを、美優は口を挟まずに聞いていた。
「聡くん、それをお母様にもお話したの?」
優美とキスをする柴崎教授の提案の件を、どうやって切り出そうか聡が考えて黙り込んだ時に、美優は聡に質問した。
「うん、話したら、香織さん、泣いてたけど」
それを聞いた美優は、何かを納得したようにうなずいた。
「もし、無事に9月を迎えられたとしたら、聡くんはこれからどうするつもりなの?」
「どうするって?」
「私は大学を卒業したら、結婚することになると思う」
美優は光崎一族以外に財産を分配しないように、光崎家の分家の誰かと、母親の香織が分家の光崎公彦と結婚したように、自分もお見合いで結婚することになると聡に言った。
「今どきそんなことがあるかと思うかもしれないけど。お母様は聡くんが自分と関係を持てば、聡くんが欲求不満にならずに、私に興味を持たないと考えたのかも」
「僕なんかでは、光崎家にはふさわしくないってことかな?」
聡はこの時、ループし続けてもいいと考えた。
聡はどうにか無事に9月を迎えたとしても、美優と結婚する未来はないと、絶望してしまった。
早朝、紫クダキツネの柴崎教授から、ここで失敗したら、また同じ決断をせまられてループが繰り返されるだけだと言われて、未来が欲しいと思ったけれど、美優は自分では手のとどかない名家のお嬢様だとあきらめるしかないのかと落胆した。
「逆に財産を分散しないってことなら、聡くんは適任者よ。聡くんのお父様は大学教授だった。聡くんのお母様は、私のお母様のご学友。聡くんの学歴は私と同じ。そして、私のお父様が聡くんを育ててくれた夫妻に資金援助したということは、名字がちがうけれど、遠縁かもしれないけれど、光崎家の一族につながる家系の人たちと考えられるから」
「僕は光崎家の一族の人間じゃないってことだよ」
「同じ一族で財産を分散しないようにした王家や貴族の家が海外でもあったの。エジプトの王家や、ハプスブルク家が有名。その近親婚の結果、似た遺伝の悪い部分が集まってしまった人は、見た目でわかるほど目立つ障害を持って生まれてきて、とても短命だった。だから、他の一族の人を途中で迎える必要があるの」
「つまり光崎家から血縁関係はないけど、財産を分散しない人?」
「聡くんはきっと子供のときから適任者だと思われてたのかもしれない。だから、ずっと私のお父様に援助されてきた。光崎家の一族では、女の子が産まれることがほとんどで、男性は家系図をみても養子か婿養子ばかりなのは、書斎の系図や古文書を見たらわかることよ」
さらに美優は、光崎家に伝わる祟りの話を聡に打ち明けた。
「あと、再婚していることが多いこともわかる。養子や婿養子で迎えた人が長生きしていないから。男性が直系で産まれたあとは、何代かは、養子や婿養子を迎えるのが、光崎家の風習になっているのよ」
先代当主の光崎嘉朗は、美優の祖父は直系にはめずらしい他家からの養子や婿養子ではない人物。
「聡くんはお父様が婿養子として適任者として目をつけた人。お母様はお父様が亡くなったら、自分の再婚相手として目をつけた。あのね、これはここだけの話で、他言無用の話なんだけど、お父様が私にもう妹か弟はできないと、話してくれたことがあるの。お父様は勃起障害になったからって。でも、これで長生きできるともおっしゃっていたわ。光崎家の女性は他の女性よりも、その……性欲がね……強すぎるらしくて、セックスしすぎて男性が亡くなってしまうと伝えられているの」
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