★side fiction/森山猫劇場 第6話
海外へ調査に出ている両親から幼い聡は、香織のところへあずけられていた。
聡の初恋の人は、香織だった。
小学校の女性教師や中学校の女性教師にひそかに憧れていたり、幼稚園の保育士に淡い感情を抱く子供はいる。
聡の場合はそれが香織だった。
(ママ、なんか最近、雰囲気がちがうけど……まさかね)
香織の微妙な変化に、美優は同級生に彼氏ができた時に雰囲気が似ているような気がして、夜、ベッドの中で少し落ち着かない。
――浮かれているような、そわそわとしているような。
香織の雰囲気の変化が、聡が原因なのは、美優もなんとなくわからないこともない。
家のなかに父親ではない若い男性がいるだけで、美優もそれとなく意識してしまう。
子供の頃に両親が亡くなって、泣きそうな顔をしているのに、我慢していた聡に、かわいそうという同情と、自分が守ってあげたいような気持ちになった。
その時の気持ちが初恋だったのかもと、美優は思うことがある。
だから、自分よりもすっかり背が高くなって、それでも子供の頃の面影がある聡のことを見ると、どきっとしてしまうことがある。
(あ~、ママが浮気するはずないじゃない、私、どうかしてるわ)
聡と仲良しの香織に、自分がちょっぴり妬いていると気づいていない美優なのだった。
聡は初恋の相手の香織と、秘密の関係を持ってしまった。
終わりのないループから抜け出す目的のための手段だと考えてみて、自分を納得させようとして葛藤している。
絶頂のあと気だるかった身体も熱く痺れきり、躍るバストの先端で勃っている乳首は痛いぐらい敏感に感じている。
(あ、ダメ、また、イクっ)
仰向けで、香織は両脚を持ち上げられ、聡に体重を乗せて奥へ押し込まれる。
焦れていた場所にはまり込むように打ち込まれ、切れ長の瞳を見開いた香織は、なすすべもなく甘い声をあげて痙攣までしている。
ほとんど最近では日本にいない夫とのセックスは、娘の美優を産んでからは、もう無くなっていた。
すっかりもう香織は快感を忘れて生活していた。
すっかり青年になった聡が、香織の前にあらわれるまでは。
聡の部屋のベッドで、仰向けに寝そべる聡の汗ばんだ肌に密着して余韻を感じていると、香織はそのまま、眠り込んでしまった。
香織の寝顔をしばらく見つめたあと、聡は香織を起こさないように気をつけながら、ベッドから離れた。
一人で熱いシャワーを浴びる。
今のところ、光崎公彦が連絡してきたり、帰宅して「残念」とは言われていない。
(うーん、これは、どういうことなんだろう……香織さんのことは素敵な人で、とても親切な人だと思う。でも、こういう関係は、美優にバレたら、揉めごとになるのに)
香織は19歳の聡と、恋をしている気分になっている。
それでいて、聡のことを自分の子供のように思う気持ちもある。
(美優は、聡くんのことをどう思っているのかしら。あと、もし、聡くんが美優のことが気になっても、私がこんなに聡くんに甘えてたら、遠慮してしまったりしそうな気もするし)
梅雨の6月。
雨音のなかで、聡と香織の秘密の「仲良し」の関係が始まった。
聡は高校卒業までに、彼女を作ろうともしなかった。女子から告白されたりすることはなかった。
もしも霊感の強い占い師が、高校生の頃の聡のことを、本気で占っていたら、こんなことを言われたかもしれない。
「何も心配はないよ。あんたは強いから。でも、普通の恋愛や結婚は最悪だろうね。すごく守護が強すぎて、相手の人は遠ざけられてしまうからねぇ」
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