★side fiction/森山猫劇場 第5話
昼間、一人娘の美優が大学へ行っていて香織と聡が二人っきりになっている時間ができる。
香織を陥落する。
生活費を全面援助し続けている大恩人の貞淑な人妻。
善良な美優の母親。
自分の母親と同じ年齢で、母親の親友でもある親切な女性。
それも聡を、自分の娘と同じように受け入れて暮らしていきたいとさえ考えている。
香織は聡にとって魅力がないどころか、42歳で出産経験を持つにもかかわらず、その体つきは、まさに熟成された色香がある。
育ての親で、弁護士の
けれど、香織は里中祥子よりも顔立ちは若く見える。
さらに落ち着いた服装の下のEカップほどはある胸のふくらみ、まだ重力に逆らっているお尻のあたりのラインは、激しい欲情を誘うというより、むしろ優しく甘えたくさせるような魅力がある。
ループを終わらせるために、香織に不倫させなければならない。
しかし、妻が聡に寝取られたと知れば、光崎公彦は激怒。
美優は親しくしている聡を、心の底から軽蔑するだろう。
普通に考えたら、聡にとってリスクしかない。
理性や品性で隠されている香織の心の裏側、人には話すことのない肉欲について、聡が知ること。
他人を立場や想像だけで都合良く判断しないようにするための試練でもあり、聡自身の心を全て受け入れて許すための通過儀礼。
7歳の聡は、世界の運命を握る審判者となるために、両親の死の悲しみを与えられた。
本人が望んだものではない。
さらに19歳になって、人が理性や常識で抑え込んでいる性欲や暴力という衝動と向き合うことも望んだものではなかった。
「ねえ、香織さん、今日の下着はどんなやつ?」
気晴らしで庭を散策したあと、聡はリビングにいる香織を追い詰めるように近づいてきた。
「ね、聡くん、落ち着いて。あんなことはしてはいけないわ。あなたの人生が台無しになってしまうから」
もともと、誰に対しても気が弱い香織は、青年を怒鳴りつけ追い払うことができない。
だから、一生懸命に聡を説得しようとした。
本当の両親や、育ての親たちに似て、品性のある子なら、こんなおそろしい行為を続けていて、どれだけリスクがあるかは理解できるはず。
「人生……ね。ふうん、そう、香織さんが僕を避けるなら、これを美優ちゃんに見せちゃおうかな」
香織が本気で嫌なら、はっきりと聡に拒絶すればいい。
それに人生は、8月の終わりで何度もリセットされてきた。
とっくに台無しな人生を何度も繰り返してきた。
……そんな考えが頭をよぎり、聡は、だんだん悲しくなってくる。
香織に自分のスマートフォンの画面を見せて、聡が香織の頬にチュッと軽いキスをする。
「ひっ」
香織が身を強ばらせた。
そして、涙目になる。
見ているのがつらすぎて画面から目をそらす。
リビングのソファーに押し倒され、腰を動かされて突かれるたびに、あられもない声を上げる。
開いた両脚を揺らして、下半身丸出しの正常位でセックスする女性の姿。
それがなまなましくまぎれもない自分の姿だと香織が理解して、ぞわぞわと背筋に冷たいものが走り抜けた。
セックスをしたことがない童貞だから、自信が持てないと相談された。
そのあと、気がついたら、すでにソファーで押し倒された状況の香織は、聡のものを受け入れてしまっていた。
曖昧な記憶。
香織は自分から聡に、これっきりにして、若い人とちゃんと恋をしなさいと言って、断りきれず誘ったような気もしていた。
「こっそり撮られているのに気づかないぐらい、香織さん、夢中だったのかな?」
「香織さん、今、ここでスカートを自分で持ち上げて、下着を見せてくれたら、この動画は消去してあげるけど、どうする?」
動画の再生を止めると、聡がゆっくりとした口調で言いながら、香織から離れてソファーに腰を下ろした。
「隠し撮りなんて犯罪なのに。なにをしたのかわかってるの?」
「記念撮影。僕と香織さんの初エッチの記念に……ね」
(本当に聡くんは、美優に動画を見せるかもしれない!)
耳まで真っ赤になって、うつむいた香織は清楚な色合いのロングスカートのすそを、ゆっくりと持ち上げた。
上げている途中で聡が下ろしていいというまで、そのまま見せ続けるようにと命令された。
ロングスカートが持ち上げられて、香織の乳白色のむっちりとした
そして純白のあまりレースのついていない大人しめなパンティをはいた腰まで、聡の視線にさらさらされた。
催眠で金縛りにした人形のようにして、嫌がる香織を凌辱することも、聡にはできる。
しかし、それよりも、聡は香織の羞恥心をじわじわと麻痺させていくことや、二人だけの秘密を共有することで連帯感を作り上げることを選択した。
(ああ、ごめん、香織さん、本当に、ごめん)
聡は何度も心のなかで謝罪の言葉を繰り返していた。
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