第17話アーミside
エルは本当に何も知らない子供のようだ。
実際、『子供』なのだろう。神殿は聖女候補に余計な知恵を付けさせない為に『純真無垢』という言葉を具現化したような少女に育て上げるのだとか。
そうしなければ『
レヴィの事は伝えていない。言えなかった。家や神殿に守られてきた私達と違い、レヴィは宮廷魔術師として国の裏を知っている。そのため、これから先も国のために奉仕を続けなければならないと聞いた。父上の様子からして碌な目にはあっていないのは明白だ。
あと一つ。
私はエルに嘘をついている。
ジャコモの事だ。
彼が捕まりどうなったのかを私は「知らない」と答えたが、それは嘘だ。ジャコモは護送中に死んだ。役人と護衛兵の目の前で突如炎上し、焼死した。
暗殺か、それともジャコモの
ただ、分っているのは口封じされた――――という事だけ。
どこの国の手の者なのか。
どんな組織なのか。
何一つ分からないまま、この事件は闇に葬られた。
「アーミさん!」
「どうした?」
「この仕事依頼いいと思いませんか?」
「どれ……」
エルが持ってきたのは、とある国で頻発している魔獣討伐の依頼書。報酬額を見て眉間にシワを寄せた。
「……これ、危険度が高いぞ?それに見合った報酬ともいい難い」
「ですがランクを上げるには絶好の機会です!まだ誰も受けたがらないそうです。成功すれば一気に名前もランクも上がります。これは受けるべきですよ!!」
確かにエルの言う通りだが、あまりにもリスクが大きい。
しかし、この依頼を受ければ確実にランクが上がる。
迷う案件だ。
こういう時、黒曜がいればと思う。
彼は受ける依頼と報酬について事前に調べ上げ、メリットデメリットをしっかり把握した上で相談に乗ってくれていた。その采配は見事だったと今更ながら気付かされた。その彼はもういない。目を輝かせているエルは後ろ盾を失っても無邪気なままだ。
きっと彼女はこの先もずっと変わらず、このままだろう。
神殿の聖女教育の賜物か、それとも彼女自身の気質か……因果なものだ。
「……分かった。やってみよう」
「わあ!」
まるで花が咲いたような笑顔をするエルに苦笑するしかない。
「では、早速準備に取り掛かろう」
「はい!」
こうして、私たちはこの危険な任務を受ける事になったのだった。
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