第弐章 旅立ち
一、地震と赭国の決まり
1、地震
その日の夜、ヴァイスとザフィーアはお母様に呼び出された。
こうして廊下をザフィーアと共に歩けることが本当に嬉しい。2年ぶりだ。
本当に目覚めないかと思うくらいで、何度も自分を責め、後悔した。
医者は、日々の疲れと衝撃が混じった上、それが食事に入っている滋養強壮剤・睡眠薬と過度な反応を起こし、至ったのかもしれない。
故意にやった事もあり得る。
まぁ、本人はけろっとしているし、目覚めてよかったと思う。
そう思いながら廊下を歩いていると不意にドォンと音がしてグラグラと地面が揺れた。地震だ。相当強い。
屋敷中にいろんな叫び声が飛び交う。廊下のシャンデリアがガシャンと落ちて砕け散り、下敷きになる者がいる。まさに地獄絵図だ。
廊下を歩いていた者はシャンデリアのない場所に一塊で頭を守り、揺れに耐えた。
10秒くらいだっただろうか。揺れが収まった。実際には短かったが、ヴァイスには何分にも感じられた。
ザフィーアの方を見ると、腰を抜かしたようで、涙目で床にへたりこんでいる。
よく考えたら地震はここ1、2年で頻繁に起こり、毎回ピクリとも動かないザフィーアを連れて逃げていた。
それまで地震もあまり起こらなかった為、ショックは大きいだろう。
ヴァイスも最初の地震はこのような状態だった。
ザフィーアの隣に座って「これが地震だよ」と教える。
「えっ、これが地震?」
あのプレートがひずんではね上がったことで起きる地揺れ、と呟く。
2年前のこともちゃんと覚えているらしい。感心だ。
さぁ、と私はザフィーアに手を差しのべる。
「お母様の部屋に行きましょう。様子を見に行かないと。怪我は?」
「ない」
ザフィーアは私の手を取って立ち上がり、歩き始めた。
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