5、赭国の歴史

 と、まぁそんな感じで私たち双子の時間は勉強・授業に割かれた。残念だ。


 今からは歴史の授業だ。ザフィーアは歴史が得意だ。計算や外国の言葉より楽だし、楽しい。ヴァイスは計算が得意らしい。所詮双子であれど、人の性分は千差万別だ。


 講師の男が入ってきた。この人は苦手が無いのだろうか。まぁいい、これも千差万別のひとつだ。


 「今日は血筋の歴史についてやっていきます。これを見てください」


 と大きな紙を広げる。家系図のようだ。中心の大きい並びは唐島の、王の家系図だ。

 その横に広がり、少し小さめの並びは寿島。ヴァイスとザフィーアの名前もある。

 その反対の横に広がり、最も小さい並びは華島だろう。

 不思議なことに、ヴァイスとザフィーアどころか、全員に王の血が流れている。思いもよらなかった。いや、でも考えたらそうか。自然だ。

 

 ヴァイスの方を見てみる。目を見開いているから驚いているのだろう。

 

 と思ったらヴァイスが珍しく青ざめ、小声で「お父様・・・」と洩らした。


 え?と思い父の場所を見てみると



  父は、王の血が流れていない。


 

 ガツン、と殴られた様な衝撃が走る。

 

 父は、華島の統治者の系列ではないのだ。

 母は、間違いなく寿島の系列。


 直感だが、昔に何か物凄いことが起こっている。そう体が訴えている。

 

 「大丈夫?」


 と声をかけてくれたヴァイスも真っ青だ。


 何があったのだろうか?それが2ヶ月ほど前の母の言動に繋がっているならば?

 嫌な予感しかしない。


 最近の疲れがどっと押し寄せてきた。

 

 そこが限界だった。

 ザフィーアは意識を手放した。



  ◇◆◇

 「大丈夫?」


 と声をかけてくれているのはヴァイスだろう。

 ゆっくりと頷いて目を開ける。

 

 ヴァイスを見ると目に涙を浮かべ、次の瞬間抱きついてきた。


 「あのね、ザフィーアは、2年寝てたんだよ?」



 

 「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」と絶叫が屋敷中に響いたのは言わずともがな。


 

 それはつまり、私は14才。

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