転移2日目 神様が加護をしてくれるみたい

翌日。

私は魔法陣のあるお家(なんなら魔法陣の真上)で目覚めた。

服装が変わっていないことに安心しつつ、そっと外を窺ってみる。

村人さんたちは口論しているようだ。きっと私か笑くんについてだと思う。


視線を中に戻すと、見覚えのない白い封筒が魔法陣の上に置いてあった。

・・・・罠とかじゃ、ないよね?

恐る恐る開けてみると、印刷のように並んだ黒い文字が、淡々と私に何かを訴えていた。


「何々、明谷葵様へ・・・・」


あなたは神に選ばれし特別な人間です。

悪しきを祓うことのできる実力を評価し、この世界の問題解決のため転移させていただきました。

困ったときはそのぬさを振ってくだされば、サポートを致します。

事が片付き次第元の世界に戻し望みを何でも叶えますので、どうかよろしくお願いいたします。

指示は必要になり次第この紙を送りますので、従ってください。

まずはこの村にいる天才陰陽師を仲間にしましょう。


読み終えてしばらくは、頭がふわふわしっぱなしだった。

”特別”だなんて言われて、高揚しない人間がいるだろうか。

それに”神に選ばれし”だって、実際に転移しているのだから信じないわけにいかない。


神様って、いたんだなぁ・・・・。

そんな気持ちのままに幣を上下にゆらゆらさせていると、急に瞬間移動した。

大きい家の中のキッチン、クローゼット、居間、様々な場所に切り替わる。

最後についた場所は玄関だったので、私は迷わずドアを開けることができた。

・・・・とりあえず、戻って笑くんを探さないと。


「笑くーん!どこー⁉」


ちょっと村内を走り回ると、笑くんはすぐに見つかった。

いかにも悪ガキって感じの子供たちに囲まれて、怯えている様子でいる。

私の腕の見せ所だ、と石を構えて走り寄ろうとしたその瞬間。


地面がボコボコと煮えたぎるように爆発し、笑くん以外の子供は全員吹っ飛ばされてしまった。

私も少なからず被害を受けて、尻餅をついている。


あっ、手紙手紙! 笑くんに見せようと思って持ってきたんだった!

脳内でぺろりと舌を出しつつ近寄ると、彼はこちらをぎろりと睨んだ・・・・と感じたのは一瞬だけ。

彼の頬に伝う涙を拭おうとしてやめたせいで、私のポーズはちょっと珍妙。


「あ、葵さん・・・・?」

「う、うん。あの、今、時間ある? あるなら、これ見てほしいんだけど・・・・」


紙を広げて笑くんに渡すと、彼は書かれた文字を一生懸命に追いはじめた。

瞳が少し輝くけれど、すぐ首を振って払い飛ばすようにしている。

数十秒経った後に笑くんは顔を上げ私に紙を返した。

そして呟いた。


「・・・・これが、どうしたんですか」

「ふっふーん、待ってました! 私、神様に選ばれたんだよね。だから、笑くん一人くらいなら養えるんじゃないかなと思って!」

「・・・・誰かのいたずらだとかは、考えないんですか?」

「ううん! だってさっき、私、試してみたの!」


 えっ、と笑くんが呟くのも束の間、私は笑くんを抱き上げ幣を振った。

和風豪奢なお屋敷が、そこには堂々と立っていた。

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