転移6日目 つれないあの子と仲良くなる方法
しばらく2人には関わらずに見守ってあげたほうがいいかな。
あとは若い者同士でゆっくり、と笑くんに任せて部屋を出て図書室に向かう。
この世界についての有力な資料とかが残っているかもしれない。
そう思ったんだけど。
「うーん、やっぱりここって不思議時空なのかな・・・・」
どれだけ探してもどの時代と断定できる資料が見つからない。
例えば、江戸時代の出来事と明治時代の出来事が同時に起こったりしている。
脳内歴史の教科書をパラパラしすぎて、頭がおかしくなっちゃいそうだ。
外の空気を吸おうかな、と図書室を出ようとすると、小さな人影が走り去っていくのが見えた。
白いからダンテくんだろう。何かあったのかな?
考え込んでいると、後ろのほうから声がする。
「ねーぇ、おねぇさん! ぼくたち、お腹すいちゃった! 食べていい物って、ある?」
「わぁっ、惑くん! ちょっと待ってて、今から食事を作るからね」
「・・・・わかった。ねぇねぇ、ぼくも一緒に作っていい?」
「ありがとう、助かるよ」
パンとか食べたいなぁ、とびっきり甘い菓子パンとか。
カレールゥなんかはどうやって作るんだろうか。
元の世界の物の話なんかをしながら食事を作っている間、惑くんは首を傾げながらも話に相槌を打ってくれていた。
ちょっとのんびり作りすぎたかもしれない。
いつの間にか夕方になっていた。
お皿をダイニングに運んでいると、笑くんが駆け寄ってきた。
手には白い紙が握られていて、
「葵さーんっ、見てくださいこれっ!」
「あっ、神様からの手紙じゃん! なんて書いてあったの?」
「あの、それなんですが、私じゃ読めなくって・・・・。あとで読んでもらってもいいですか?」
「わかったよ。あ、それともうすぐで食事だから、ダンテくんを呼んでくれるかな?」
たぶんちょっとは仲良くなっていると信じてそう頼むと、笑くんは渋い顔をした。
あ、これ無理なやつ?
支度を終えてから自分でも探そうかなと考えていると、背後から突然惑くんが現れた。
「あっ、それならぼくが呼ぶよ! ダンテくーん、ご飯だって!」
すると、どこからかダンテくんが走ってきて惑くんを抱きしめた。
依存っぷりがすごい。
耳元で何かを囁かれたのであろう惑くんは、くすぐったそうに笑った。
「そんなに心配しなくても毒は入ってないよぉ、ダンテくん」
「・・・・まどわが言うなら」
これからいちいち惑くんに毒の有無を確認してもらうのもちょっと面倒だ。
毒が怖いなら一緒に作ってもらおうかな。あわよくば仲良くなりたいし。
だから、そう提案してみた。
ダンテくんは、惑くんと接する時とは比べ物にならないほど怖い目つきで私を睨んだ。
「・・・・ねぇダンテくん、毒が怖いなら、一緒にご飯とか作る?」
「うるせぇな。おれはまどわ以外信用しないと決めてるんだよ」
「あっ、はい・・・・」
仲良くなるための道筋が、全く見えない。
幸いにも惑くんと笑くんとは仲良くなれたみたいで、それなりに談笑できている。
今はそれがただ嬉しい。
嬉しそうに食事をほお張る2人と暗い目をしたダンテくんを見ながら、いいことが書いてあるといいなぁ、って手紙の内容に思いをはせた。
和風異世界に転移した女子高生、チートをもらって旅に出る。~世界を救うために仲間をいっぱい集めます~ 絵猫 アオイ @0420114514
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