(三)-4

 ……と、僕はまた始まったと思った。もちろんその口論はひとたび始まれば、しばらく収まらない。

 怒鳴り合う二人を放って置いて、僕は妹を母の車から降ろし、PAのゲストハウスの方へ向かった。

 僕はズボンのポケットから小銭を出して自動販売機で飲み物を買うことにした。妹に「どれがいい?」と聞くと、紙パックのイチゴミルクがいいというので、それを買ってあげた。僕は同じ紙パックのコーヒー牛乳にした。

「また喧嘩してるね。お父さんとお母さん」

「そうだね」

 ゲストハウスの建物を出たところの壁に寄りかかりながら、僕と妹はそう言い合うと、ストローからドリンクを吸い上げた。

 喧嘩中はなるべく離れた所にいた方がいい。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る