(三)-5

 そうして妹がイチゴミルクの紙パックの中身を、音を立ててズーズーいわせる頃に、ようやく父がこっちに向かって手を上げた。

 僕と妹は父の方へ歩いて行った。途中、道路とゲストハウスの間にあるゴミ箱に既に飲み終わったコーヒー牛乳の紙パックを投げ入れた。妹も同じくイチゴミルクのそれを入れた。

 母の車の前まで来て、助手席のドアを開いて妹を押し上げて乗せた。母は運転席に既に乗っていた。

「またね、おにいちゃん」

 そういって手を振る妹に「またね」と言ってドアを閉めると、自分も父が待つ車の助手席へ回った。ドアを開けて助手席のシートに尻を収めた。

「行くぞ」

 憮然とした父が低い声でそう言った。……これは相当頭にきているときの証だ。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る