37.交代
──睦巳 View
「よし!おい、睦、こっちの準備は出来たぞ」
「うん、やってくれ」
「その前に睦、確認なんだけど水着のままで、……本当に隠さなくてもいいんだな?」
「あー、うん、考えたんだけど洗う時邪魔だろ?だから水着のまま洗ってくれ」
「分かった、睦がそう言うなら」
「よし、じゃあ行くぞ!」
「よしこい!」
駿の手が俺の背中に触れ、そのまま肩甲骨辺りをくるくると弧を描くように洗っている。
駿に素手で触れられる感覚、自分で洗うのとは全く違うその感覚にくすぐったさと戸惑いと興奮を覚える。
そのまま下に降りていく駿の大きな手、紐の上から背中を洗う。
「ちょっと待ってくれ、紐の上からじゃなくて下に手を這わせてくれ」
「……良いのか?」
「?──良いぞ」
紐ごと巻き込んで洗われると背中の感触が悪い、だから紐の下で洗ってくれという意味なんだけど、そんな確認する事か?
駿は紐の下に手を通し両手で円を描くように、くるくると背中を洗い進めた。
駿の手は大きく、両手だと背中がずっと覆われているように感じる。
安心感が増していて、もっと背中を預けたくなる。
手が下に下がっていくに従って少し緊張する、駿がスケベ心を出してお尻まで洗わないだろうか。
少しの緊張となぜか少しの期待感を感じつつ、手の感触に集中する。
背中から腰辺りで手は止まり、安堵と落胆を同時に感じる。これじゃどっちがスケベなんだか。
「背中終わったぞ、次はどうしたらいい?」
「俺が洗ったように順番に洗ってくれ」
「分かった。じゃあ次は肩と首だな」
駿の手の平にすっぽりと収まる俺の肩に驚く。
そして首、首ヤバい、これも駿の両手に少し余るくらい、簡単に首を締められそうに感じる。
うん、鍛えた男に女が勝てるわけが無いという事が良く分かる。
多分、駿は優しくやってるつもりだろうけど首は少し痛い、そしてそのまま俺の鎖骨へと。
鎖骨はそれこそ駿が指に力を入れたら簡単に折れるのでないと思うほどだった。
腕は俺が扱くように洗ったのとは対象的に駿は優しく丁寧に洗ってくれた。
そして何度も言うのだ。
「柔らかいな」
そうだな、俺が駿の腕を洗う時に感じた筋肉質な硬い腕とはまるで違う。
見た目からして太さや大きさが違うのだからそうなるだろう。
手と関しては指好きな変態駿らしく、丁寧に優しく、一本一本隅々まで洗ってくれた。
正直、その最中に声が漏れてしまうくらいに丁寧でねちっこかった。
えーと次は確か側面から正面か、それなら駿を向くか。
くるりと椅子の上で向きを180度向きを変え、駿に振り向いた。
駿は膝立ちでボディソープを手に取り、泡立てている最中で、股間のタオルは床に落ちていて、臨戦態勢のそれが丸見えだった。
ほんの僅かの間だったが駿は固まっていた。泡立てる手が止まり、微動だにしなかった。
直ぐに慌ててタオルを拾い、隠す駿。
俺はというと好きな人のそれだから、脳裏に焼き付いたし、もっと見たいとも思わせた。
前の自分にもあったらしいがもう知らん、覚えてない。サイズは駿のほうが上だし。
形もまあ……いや覚えてないんだった。
「睦、お前いきなりこっち向くなよ」
「いいじゃんか、前風呂入った時は気にしてなかったろ?」
「あれは睦が俺の身体に興味がないって思ってたからだ、今は違う。俺が見たい、って言ったら見せてくれるのか?」
「……ううん……確かに、無理だ……」
見せても良いという思いもあるけど、それ以上に恥ずかしいという思いが強い。
そもそも裸を見せて良いと思ってるなら水着なんて着て来ない。
「分かったか、そういう事だ」
しょうがない、後ろから洗って貰うか。
「しょうがないな、じゃあ後ろから洗ってくれよ」
そう言って後ろをくるりと向いて、駿に背中を向けた。
「じゃ、じゃあ脇から洗うからな」
駿は脇の下に手を這わし上下に洗う、紐の下に手を通し、身体側面を上下に手を動かす。
直ぐ側に胸があり、少しでも手を前に出せば触れるし揉む事も出来る、駿は今葛藤しているのではないだろうか。
しかし手が前に来る事は無く、側面下、腹横に下りていった。
一安心したのも束の間、駿はお腹への執着を示した。
腹横を撫でるように洗い、そのまま腹へ、お腹の前から横まで優しく撫でられる。
俺のお腹には当然筋肉はついておらず、柔らかく薄く脂肪がついているのみ。
肌感触以外の楽しさは無さそうだが駿は執拗に撫でまくっていた。
おヘソの穴に指を入れてきて、そこも洗う、中指でくりくりとへそを弄られるのはなんだかお腹が痛くなりそうだ。
「駿、お腹はもういいから、次行ってくれ」
なんだか変な気分になってきた俺は次に進んでもらおうと駿に話した。
「そうすると次は胸なんだけど、どうしたら良い?」
水着で覆われた部分以外を洗ってくれとお願いした。
駿は無言で手の平を上に上げていき、下から包むように洗う。
胸の側面、上部、下部、水着に覆われていない部分は全て大きな手の平と指で、手触りを確かめるように触り、洗われた。
谷間に手を通して洗う事なんかもして、気持ちは分かるけど好き放題されていると感じる、許可したの俺だけど。
俺は普通に洗う事をお願いしたつもりだったんだけど、駿の洗い方は違った。
鼻息が荒い気がするし、俺もなんだか変な気分になってきた、早く次へ行ってもらおう。
「駿!次行ってくれ、次だ」
ハッと駿は正気に戻ったのか、一言すまない、と耳元で囁いてから足を洗い始めた。
耳元で囁くの禁止、ゾクゾクして全て許してしまいそうだ。
俺の背中に胸板を密着させ、背後からそのまま足を洗い、足を持ち上げて指も、駿に抱えられてるんじゃないかと思うくらいに力強く、そのまま洗い終えた。
その時にも耳元で駿の呼吸音が聞こえ、背中に駿の逞しい胸板を感じ、危険だった。
駿に湯船に入って目を背けて貰い、水着で覆われていた部分を洗った。
シャワーで身体からボディソープを流している最中、次を考える。
浴槽に入って落ち着いている時に今度こそ話をしようと思う。
元々は洗って貰っている最中からするつもりだったけどそれどころじゃなかった、考えが甘かった。
まずは駿が俺たちの関係をどういう風に考えているかを聞く事からだ。
「駿、目つぶってて貰えるか」
「ん、良いけど」
駿に目を瞑ってもらい、水着を脱いだ。
水着にはボディソープが染み込んでいて、このまま浴槽に入るのは不味いと思ったからだ。
そして俺は、意を決して駿の股の間、いつもバックハグで入るボジションに浸かった。
そして普段より背中と腰をぴったり密着させる。
「え!?睦?まて!離れて入るんじゃないのか!?」
「ここで合ってる、俺の居場所なんだから」
そう言って俺はそのまま背中の駿の胸板に寄りかかった。
一応胸は腕で隠しているとは言え、心臓がバクバク言っていて、緊張のしすぎで少し視界が狭い気がする。
「駿、目を開けていいぞ」
「ごめん、もう開いてる」
「しょうがないやつだ」
「……ところで、水着はどうした、まさか脱いでるのか」
「ああ、ボディソープが中々落ちなくて脱いだ、まあ前回の時も湯船では脱いでたし良いだろ」
俺はいつものように駿に振り向き、見上げて名前を呼び口づけをねだる。
「睦、お前なあ……」
そう言いつつもそれに応えて口づけを交わす。
でもこれで少し落ち着けた気がする。
湯船の中とはいえ駿と肌で密着している、背中も、腰も。
駿は少し苦しいかも知れないが我慢してもらおう。
「睦、その……良いのか?その体勢で」
「ん?良いけど?問題あったか?」
「いや、睦が良いなら良い」
背中では駿の鼓動を感じられた、力強く早い心臓の音が聞こえる。
それが駿の命の鼓動なんだ。
そしてそれすら、俺を感じてそうなっていると思い、嬉しく感じる。そして駿も同じなのだと安心する。
同じだと思うと俺も落ち着いてより安心出来る。
やはりこの場所は俺の居場所で間違いないと確信する。
駿も少し落ち着いたのか両手を広げ、浴槽の縁に腕を置いてくつろぎ始めた。
俺も思わず落ち着きそうになるけど、ここからだ。
さて、そろそろ本題に入ろうか。
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