30.睦巳の回想
──睦巳 View
今日は駿+αでバーベキューの日、海だし水着だし駿のやつは期待してるだろうなー、流石に白ビキニは無理だけど、一応ビキニだし気に入ってもらえると嬉しい。
お互いの顔合わせの自己紹介をした後、駿が俺の肩を掴み抱き寄せて。
「睦は俺の女だ、非売品だからな!手を出す奴は絶対に許さん!」
と男子に警告をしていた。
俺の女なんてそんな……嬉しい事を言ってくれる。もっと言ってくれ。
俺も駿に腕を回して周りにアピールしておいた。
良し!俺も念のために女子に警告をしておこう。
「えー、コホン、駿は私のお、おと、男だから!非売品!誰にも渡さないから!」
うん、ちょっとどもった。でも私の男って言うの恥ずかしい。
腕に抱き着き、駿を見上げた。
駿はニコニコしていて、喜んでくれてるみたいだ、俺も嬉しい。
◇◆◇
更衣室で水着に着替えてるんだけど、めっちゃ恥ずかしい、なぜかというと女子たちが一緒に水着に着替えているからだ、当然裸になる。
女の子の身体自体は自分の身体で見慣れている、とはいってもまだ1ヶ月程度で他人の裸を生でじっくり見た事なんか無い。
男の身体と違って嫌悪感を感じるものじゃないはずなんだけど、どうなんだろう、嫌悪感は感じないけど男の時にあった性的な興味は全く無い。
どちらかというと自分の身体が変じゃないか確認するための興味、という感じがある。
女の子になった時に首から下の体毛が全く無くなっていた。そして生えてこない。
気付いた時は女の子は何処にも生えないんだ~、なんて素直に思ったものだけど、そんなわけが無い。
体育の時間なんか周りを見ると普通に脇毛生えてるし、今だって周りを見るとあそこだって生えてる、モサモサの人もいる、それに他の部分も濃い目の人はいた。
流石に俺たちの年齢だとその他部分が濃い人は少なそうだけど。
まあ今日は水着を着るはずだからムダ毛を処理してる人は多そうだ。
で、俺が着替える時に下を少し見られてしまった。
わー、凄い気合入ってるねー、なんて勘違いされたけど、元々生えてないとは言いにくい。
うん、ビキニだからね、ちょっと気合入れて来た!なんて言って誤魔化した。
4人で更衣室を出て、元の場所へ移動していると前方から駿が歩いてくるのが見える、確か荷物番をしていたはずだから、男子の着替えが終わって交代で着替えに行く途中なのだろう。
直ぐに感想を聞きたくて駿に向かって駆け出す。駿もこちらに向かって駆け出した。
駿の顔を見ると少しだらしない表情をしていた、全くエッチな奴め、そんなに俺の水着が良かったのか?
飛び付くように駿に抱きつき、駿の胸で一息ついて距離を離した。
「駿、どう?いつもみたいに感想聞かせてくれよ……」
うん、流石に水着の感想は恥ずかしいわ。
駿もいつものように俺をじっくりと観察し、うんうんと頷いてから感想を述べる。
「まず水着だけど、三角ビキニというスタンダードなビキニはやっぱり素晴らしいと思う、それに腰のパレオが絶妙な長さでチラリズムを煽っててセクシーさを引き立てている。後紐なのは見た目の良さが上がってると思う。」
「次に睦巳自身だ、日本人離れしたスタイルが素晴らしく美しい、胴が短く足が長い、さらにくびれの位置が高くてよりスタイルをよく見せている。そして肌が綺麗で染み一つ無く色白さを際立っている。さらにお尻はキュッと締まっていてGカップのおっぱいは最高。素晴らしいの一言」
「総合的に言って究極至高の水着美少女が爆誕したと思う。俺はこんな睦と一緒にいられて一番の幸せ者に違いない!」
!?……おまっおまっ、駿~~~!!褒めすぎだって!言い過ぎ!持ち上げ過ぎだって!
もう分かる、絶対顔が、いや頭全体が真っ赤になっているに違いない!熱が出ているのを感じるほどだ。
「おまっ!駿!それは!褒めすぎだって!褒めすぎ!盛りすぎだ!」
あ~~!でも嬉しい!こんなに褒められるなんて思っても見なかった!嬉しい!
身体はぴょんぴょんと跳ねたがっていた。
そしていつものように駿に抱きつきたかったけど、恥ずかしくて抱きつけない。
仕方なく駿の服の裾を掴んで感謝を述べた。
「……でも、ありがとう……嬉しい」
◇◆◇
男子更衣室の前で駿の着替えを待っていると駿が更衣室に入って早々に声を掛けられた、多分ナンパだな。
相手は一人、俺は直ぐに、彼氏を待ってますので、と言って後はスルーした。
結構あっさり引き下がってくれて安心する。
その後に駿が更衣室から出てきた、早いな。
と思ったら少し息が上がっていた、急いで着替えたのか?
「睦、ナンパとかされなかったか?」
と聞いてきた、なるほど、心配で早く着替えて出てきたんだな。
だったら心配させないほうが良いだろう、すぐに何処か行ってくれたし。
「うん、されなかった、駿が出てくるのが早かったからな」
と答えて安心させた。
そうか、良かった、と言って微笑んで、その表情が心からの安堵だと分かると、嘘をついた事に少し胸が痛んだ。
◇◆◇
6人が遊んでいるので駿と浮き輪で少し沖の方に行って遊ぶ事に。
海で2人乗りの浮き輪の上で後ろから抱かれてちょっと不安定で怖かったけど駿に身体を預ける。
駿の胸板に俺の背中が直接寄り掛かり、いつものと違う感覚、直接触れ合うお互いの体温と感触にドキドキしながらもやっぱり此処は落ち着ける。
駿は俺の首筋に顔を埋めて来て、俺を求めているように感じた、そのままの位置で横を向いてほっぺたにキスをして、口づけをしようと思ったけど、駿はそのまま動かずに俺のお腹に両手を回して落ち着いていた。
お腹を直接触られるのはかなり恥ずかしくて手をどかそうと思ったけど、駿がすべすべで触り心地が最高だ、なんて言うもんだからどかす事が出来なかった。
駿が甘えてくる事は俺と比較して少なく、もっと甘えて欲しいから出来るだけ駿の甘えたいようにさせたいと思っている。
両手を上げて駿の頭をやさしく触って撫で、俺のお腹に置いてある手に俺の手を重ね、そのまま駿に身体を預けて落ち着いた。
その後は浮き輪を使って遊んだ、なんだ、海で遊ぶの悪くないじゃん、今度は2人で来たい。
◇◆◇
バーベキューで駿の手伝いで飲み物や小皿を配ったり、片付けたりなんかのサポートしていたら、どうやら飲み物が足りなくなったらしく、買い出しに行く事に。
海の家に向かう途中、声を掛けられた、またナンパか~?と思っていると同中の知り合いだった。
駿とは知り合い程度だけど、少しチャラくて中学生のくせに何人も彼女が居たようなやつだったけど、俺とは3年間同じクラスで結構仲良かったしよく話もしていた。
向こうも俺の事に気付いてたらしく、それで声を掛けたらしい。ナンパでは無かったか。
中学卒業以来で少し懐かしく思えて、ナンパじゃなかった事もあって警戒心を解いていた。
どうやら同中で集まって遊んでいるという話で、少し顔出さないか?と言われて、まあ顔くらいなら……と思って付いて行ってしまった。それが間違いだった。
少し人目につきにくい岩陰に行って、おかしいと思い、買い出しが有るから戻るよ、と話したら態度が豹変した。
やっぱりナンパ目的だったようで、ただ同中の俺だったので方針を変えたらしい、そして俺はまんまとそれに引っかかった、と。
まさかこんな可愛かったなんて、なんで中学の時に気付かなかったのか、なんて言ってたけど、そりゃそうだ。
その当時は本当は男だったんだから。
……やっぱり俺を知ってるのは駿だけなんだ、そしてそれ以外の人は俺からすると知らない人なんだ、と、だって知らない女の過去の話をされてもそれは俺じゃない。誰だそれは、と思ってしまう。
腕と肩を掴まれる、このまま無理やりとか勘弁して欲しいんだけど。そう思い腕を解こうとして力を入れ、肩も手を使って払おうとする。
だけど全くビクともしなかった、振りほどけなくて、手で払う事も出来ない、そして抵抗した事でさらに力を入れられた腕と肩は痛い。
痛みを訴えても弛めてくれる様子は無く、俺は恐怖してしまった。
分かってはいたはずだった、男には力では敵わないと、だけど実際に目の当たりにするまでどこか甘く見ていたんだろう、それで半端に抵抗して余計に痛みを受けいている。
そして力だけじゃない、男に声と怒っている顔で凄まれると怖い、何をされるか分からず恐怖で足がすくむ。
力で圧倒されて、凄まれて恐怖を受け付けられ、俺の心は折れそうだった。
心の中で駿にひたすら助けを求めていた。
でも来るはずが無い、だって駿は忙しくて手が放せないから俺が買い出しに来ているのに。
つまり、このまま俺は、……嫌、嫌だ……こんなの嫌だ……。助けて……駿……。
もう俺に出来る事は絶望して泣く事だけだった
「おい!お前!何してるんだ!」
!!!
この声は!
ナンパ男は意にも介さず平然と俺の肩に手を回し、友達同士だから邪魔すんな!と言っていた。
肩に手を回されるだけで俺の身体はビクリと震える。
「睦巳は俺の女だ!今直ぐに手を離せ!」
駿はそう言ってこちらに向かって来ていた。
今ほど嬉しい事は無い、俺の女と言われる事がこんなに安心出来るなんて!
ナンパ男は俺を抱き寄せ、そうなの睦巳ちゃん?といやらしい声で脅しを掛けてきた。
これは大人しくしていろ、という意味だったんだろうか、でも俺は駿に助けを求める事しか頭になかった。
「駿!助けて!」
ナンパ男の手に一瞬力が入ったけど、すぐに手を弛めて俺の肩と腕を離した。
ゴメンゴメンと謝っていたようだ、あの2人は別に喧嘩が強いわけでも無かったから強そうな駿を見て諦めたのだろう。
そしてそんな男にすら力で全く敵わないという事実。
俺の身体は震えていた、どうしようも出来ない無力感と恐怖に打ちのめされていた。
駿はそんな俺を直ぐに抱き寄せ、抱き締めてくれた。
逞しい胸板と汗の匂い、それにいつもの駿の匂いがして少しだけ落ち着く。
「ゴメン!一人で買い出しに行かせてしまって」
俺は首を振り否定する。
「ううん、俺が同中の知り合いだからって信じてついていったのが間違いだったんだ、俺が悪い、俺に問題があるんだよ」
「何言ってんだ、睦は悪くない、悪いのは俺だ、自分を責めるな、それに無事で良かった」
「駿、俺さ、分かったよ、いや、今までも分かってたつもりだったんだけど、理解してなかったんだな、腕力で敵わない事がこんなに怖いなんて、全然振りほどけ無くて、凄まれる事も恐怖で声も出なくて、こんなに無力だったなんて」
話す事によって、恐怖から開放された反動からか涙が溢れてきて、駿の胸元で泣いた。
もう駿に頼るしか無かった。
俺には駿しか居ない、そう、駿が全てなんだって、あらためて気付かされる。
「やっぱり他人は怖い、俺には駿だけだ……」
なだめるように駿が俺の背中をやさしくポンポンと叩いてくれる。
「……それ好き、もっとして」
俺は駿を求めて顔を上げる、駿が欲しい。
駿が俺の顔を見つめて、口づけを交わしてくる。
だけど今の俺はそれでは足りない、もっと駿が欲しい。
思わず舌を伸ばし、唇の隙間から口の中に侵入し、駿の歯や舌を舐める。
駿からの反応が無い、それならそれで都合が良い。
もっともっと、と求めていて、駿の首に両手を回し唇に吸い付き、口腔内を舐め回し、駿を味わう、舌に触れると脳が痺れてザラリとした感触を脳が直接感じるようだ。
駿の舌も動き出し、お互いの口腔を貪り、舌を絡みつかせ、唾液を交換した。
駿の唾液は甘く美味しく、これも脳が痺れ、もっと味わいたいと思わせる。
暫く、お互い無我夢中になって貪り続けていた。
そして終わった後にも余韻が暫く残り、とても気持ち良かった。
◇◆◇
家の前まで駿に送ってもらい、いつものように抱いてもらって背中をポンポンして貰う。
さて次はキスだ、昼間のあれをまたやりたい、そう思い、駿の名を呼んで顔を上げて待った。
しかし今まで通りの口づけしかされず、俺は不満だった。
「なあ、昼間のキスはしないのか?」
まるで催促をしているようだ、じゃなくて催促そのものだった。
恥ずかしさから視線を逸らす。
すると駿から予想外な言葉が発される。
「いやあれはダメだろ、あの時は勢いに飲まれて俺もやったけどさ」
うーん、いや、まあ、駿のいう事も分からんでもない。あれは反動でそこまで求めてしまった面が大きいし、そうだけど、そうだけどさ。
でも俺の中で駿とならしても良い、したい!と思っているんだよね。
よし!ここは本気で駿を落としに行くか!
「駿!俺はあれをもっとしたい!駿としたいんだ!なあ駿、甘えさせてくれるんだろ?……しよ?」
どうだ!コレなら駿はイチコロのはずだ!
駿は見るからに悩んでいる、もう少し押せばいけるか?なんて考えていたら。
「分かった睦巳、だけど線引はさせてくれ、此処までだ、もうこの先はダメだぞ」
落ちた!
でも線引きをしてきた、うーん、まあそうだな、このままだとズルズルと関係を重ねそうだ、俺もそれは望んでいない……はずだ、自信は無い。多分、まあちょっとは覚悟をしておけ。
まあともかく、そうか、此処までか、うん、つまり此処まで程度なら良いんだな?結構進んでるぞ、この行為は。
「んー、ああ、分かった、これ以上の事は望まないよ、これ以上は、な」
駿の詰めが甘くニヤリとする。どの程度まで許されるかなんてさじ加減だと気付いたからだ。
だけどひと先ずは続きだ、続き、早よ早よ!
「じゃあ、早くしようぜ、早よ早よ!」
そうやってもう一度深い口づけを交わした。
ああ、美味しい。
◇◆◇
翌日にまた駿の家に遊びに行こうと思っていたのに、まさかの生理が来て、朝からトイレで叫んでしまった。
お腹の調子が悪いし具合も悪いと思ってトイレに籠もったら便器が血まみれになっていたんだから、始めは何の病気かと思った。
すぐに生理だと気付いたけど、ショックで相当に気分が悪い、体調もよろしく無い、痛みが少ないのは幸いだったけど、これじゃ遊びになんて行ける状態じゃなかった。
お母さんには急に生理が来て、切れた事にして分けてもらって、その後に買いに行った。
とても遊びにいける精神状態じゃなかったので駿には申し訳ないけど、生理が来た事を伝えてゴメンと謝ってまた後日とメッセージを入れた。布団に入っている状態で自撮りして送っといた。
……はぁ、もう身体は完全に女の子になったんだなあ……。
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