17.誕生日プレゼント


──睦巳 View


駿がキスをしてきて、それが上手くて、駿にとってはキスは普通の行為になりつつあって、それが嬉しくて。

駿が能動的に俺に甘えてくれる、その数少ない行為だなあ、なんて思っていると。


「それでさ、睦」

「ん、何?」


駿が何かリボンの付いた箱のようなものを取り出して、俺に渡してきた。


「コレさ、睦の誕生日プレゼント、17才おめでとう、受け取ってくれるか」

「エッ!?誕生日……プレゼント!?良いの!?ありがとう!」


「これ、開けても良い?」

「ああ、俺も直ぐに見て欲しい、まあ、高校生だから高い物じゃないけど……」

「良いよそんな値段なんて気にしないし、駿からなら何でも嬉しいよ」


俺は昨日寝た振りした時に駿が誕生日プレゼントを買った事を聞いていた、だけど、一日経って、キスされて、それをすっかり忘れていた。


直ぐに開封すると、中からはネックレスが出てきた。

ピンクゴールドで小さなハートが2つ絡み合ったようなデザインで綺麗さと可愛さを両立させていた。


「うわあ、綺麗なネックレスだ!ねえ、早速着けてみても良い?」

「良いよ、睦が着けた姿を俺もみたい」

「うん、じゃあ、あっち向いてて」

「ああ」


駿はくるりと後ろを向き、俺も後ろを向いた。

まずはそのまま着けてみたけど、Tシャツには似合わない、やっぱり着替えたほうが良さそうだ。


まずはTシャツを脱ぎ、ミニスカートを履き、次にストラップレスブラを……うーん、めんどいから着けない!

次にフロントファスナー付きオフショルダーを着て、ファスナーを大きめに下げて、ネックレスを改めて着け直した。

ネックレスの位置は谷間の少し上、丁度良い位置にハート型のアクセサリが来る。

凄く似合ってるような気がする。


嬉しさと喜びでテンションが上がってノーブラのままドキドキしながら駿に声を掛けた。


「駿、こっち向いていいぞ」

「なんか長かったな、──!!」


駿が俺の胸元を見つめて、首を、首筋を見つめて、俺の顔を見た。

もう分かる、これは絶対に喜んでくれてる顔だ。


「どう、かな。似合ってる?」


それでも敢えて、駿に感想を聞きたいと思った。


「──うん、やっぱり睦に凄く似合ってる、ピンクゴールドの色合いも睦の色白な肌に合っているし、ネックレスの長さも丁度良いみたいで、狙い通りの場所になってる。

しかしこうして見ると染み一つない肌が綺麗でネックレスに合うな」


「睦はさ、俺の趣味で胸元が空いた服を着る事が多いだろ?

だからさ、ネックレスで丁度胸の谷間の少し上の位置にアクセサリーが来る長さが良いかなって、それに色合いも睦らしいイメージで。

それでトータルで睦には一番似合うんじゃないかって思った」


「正解だったみたいだな、凄く綺麗で色気もあって、女の魅力が増したように思う。

でも俺と会う時意外は着けないで欲しい」


黙って聞いていた、やっぱり駿は何が一番俺に似合うか考えてくれて、少しエッチな駿らしい、最高の答えを出してくれる。

一番の親友だからこそ、そこまで分かるし、考えてくれる、普通の恋人同士だとこうはいかないと思う。

自然と涙が溢れてくる、駿の良さを、頼りがいを、心の支えを感じている。

駿みたいな最高の親友が居てくれて、俺は幸せだと思った。


「うん、駿に会う時しか着けないよ、だから安心して。

それでね、駿、俺は今最高に嬉しい、幸せなんだ、この姿を今からでも外にいって見せびらかしたい気持ちで一杯になってる!」

「俺も嬉しいよ。でもな、今の格好で人前には出ないで欲しい」

「え?なんでだよ、そんな変な格好してるか?」

「いや今の格好は相当エロいからな、ノーブラだし、谷間が大きく見せていて、ネックレスがそれを綺麗に強調していて、本当にエロい、だから人には見せたくないし、親にも合わせたくない」


駿はそう言いながら椅子に座り、足を組んだ。

何格好つけて……そういう事か、察した。


「分かったよ、ちゃんとブラ着けるし、ファスナーは上まで上げるから」


そう言って駿と反対方向を向き、上着を捲くり、ブラを着けて、ファスナーを一番上まであげた。

駿は慌てて目を逸らしたみたいだ。


「よし!これで良いだろ?おばさんに見せびらかしてくる!」

「ちょっとまて!もう少しまて!」

「嫌だよ、駿が収まるまで待ってたらいつになるやら……じゃ!」

「おい睦!」


駿が呼び止めるのを無視して、俺は部屋を出て階段を降りていき、リビングに向かった。

リビングにはおらず、脱衣所兼洗面所に居た。


「おばさん!これ見て!駿の誕生日プレゼントなんだけど、似合う?」


駿のおばさんは俺の胸元、首筋、顔の順に見て言って、にっこりした。


「うん!睦巳ちゃんそのネックレスすっごく似合ってる!駿がプレゼントしたの?良かったー、睦巳ちゃんの誕生日覚えてて。

そのネックレスを着けた睦巳ちゃん綺麗だし可愛いし色気もあるしで、一番の美少女ね、駿には勿体無いくらい、あ、でも駿をこれからも宜しくね、見捨てないでね」

「大丈夫です、私のほうが色々お世話になっちゃってるし、見捨てるなんてとんでもない、私が見捨てられないように頑張ります」

「まあ、睦巳ちゃんなんて良い子なの、将来が楽しみね」


駿のおばさんは我が事のように凄く嬉しそうだった、良い人だなあ、流石は駿のお母さんだ。


あ、駿のおじさんだ。


「おじさん!このネックレス、駿が誕生日プレゼントでくれたんです、どうですか?似合いますか?」


駿のおじさんは胸元を見る目線が少しエッチだった、そして身体全体を見て、嬉しそうに言った。


「睦巳ちゃん誕生日おめでとう!駿のやつのプレゼント、とても似合っているよ、とても綺麗だね、駿も良いチョイスをするもんだ、やるなあ。

これからも駿と仲良くね」

「はい、私こそ、これからも駿のお世話になります、よろしくお願いします」

「こりゃ将来が楽しみだなあ」


駿のおじさんも嬉しそうで、駿を褒めてた、駿が褒められるとも嬉しい。


駿の部屋に戻ると駿がぼんやりしていた。


「駿、誕生日プレゼント本当にありがとう、お返しは楽しみにしとけよ、ちゃんと似合うものを渡すからな」

「そりゃ楽しみだ、でも俺は睦が喜んでくれただけで十分に嬉しいけど」

「そういえば、これで俺のほうが年上だから、お兄ちゃ……じゃなくて睦巳お姉ちゃんと呼んでもいいんだぞ」

「呼ばねーよ」


まだまだ見せびらかしたい気持ちがいない、外に行きたいなあ、ダメかな。


「なあ駿、一緒に外行かないか?」

「んー、ダメ、今の睦はなんか危なっかしいから、なんかやらかしそうなんだよなあ」

「なんだよやらかしそうって、大丈夫だって、2人一緒なんだからさ、腕組んで行けば恋人同士にしか見えないって」

「いや恋人同士に見える必要ないだろ……学校じゃないんだからさ」

「何言ってんだ、前に話しただろ?普段から恋人みたいにしようって、だから良いだろ?」


駿は静かに考え込んでしまった。

ていうか、2人で外出して、恋人同士みたいに見えるのがそんなに嫌なのか?

そういえば女の子になってから駿と2人で学校以外で外出した事ない!

テスト勉強があったからしょうがないとはいえ、2人でそろそろ出掛けたいよなあ。


「やっぱりダメだ」

「えー!なんでだよ、そんなに俺と一緒に外出したくないのかよ!」

「そうじゃない、でも今日外出はダメだ」


あまりにもダメ出しされるので嬉しかった気持ちが段々と萎えてきて、少し悲しくなって来た。

そんなに嫌なのか、外を一緒に歩けないほどに、俺はこんなに駿と一緒に出掛けたいと思っているのに、俺だけがそう思っているなんて。

大体今日外出はダメってなんだよ、誕生日プレセント貰った今日だからこそ一緒に出掛けたいんだろ。

ネガティブな事ばかり考えてしまって、悲しみと寂しさが溢れてきて、涙になっている。


「……なんで、グスッ、ダメなんだよぉ……、ヒクッ、駿は俺と一緒は、嫌なのかよぅ……」


「違う!そうじゃない!俺も睦と一緒に居たいさ!」

「じゃあ……なんで……」


駿は頭をポリポリと掻き、天を仰ぎ、決意を込めた目で俺をみた。


「──正直に言うぞ。

今のお前が魅力的過ぎて、人に見せたくないんだ。

それに、睦も昨日家に来た時に言ってただろ?出掛けないからその格好をしてるって、それはさ、つまり、その姿は俺にしか見せたくないって事だろ?

俺もそう思ってて、睦の今の姿は俺が独占したい、他人に見せたくない。

だから、一緒でも外には出掛けたくない、いや、睦を出掛けさせたくない」


駿にそんな事を言われた俺は涙の質が変わっていた。

これは嬉し涙ってやつだ、悲しさや寂しさは吹き飛んで、駿が独占したいと思ってくれる嬉しさと幸福感、高揚感で心が一杯になってそれが涙になっていると思う。

全く欲張りなやつだ、でも嬉しい……。


「……駿、そういう事ならさ、早く言ってくれよな、泣いちゃったじゃん。

俺さ、駿にそんな風に思ってもらえて凄く嬉しかった」


「すまん、でもさ、こんなの一方的な俺の個人的理由だったからさ、中々言えなくて」

「ううん、俺もプレゼントを貰ってテンション上がりすぎて忘れてた、そうだな、この格好は、"人には見せられない"な」

「そうだな、"人には見せられない"な、今の睦は……」


その日は2人一緒にダラダラしたり、イチャイチャしたりして、最後は家まで送ってもらって、駿に優しいキスをして貰って、そんな風に心が充実した一日だった。


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