11.シュンニウムの枯渇
──睦巳 View
お昼ご飯は女子達と一緒で続けている、段々と慣れてきて、それなりに話も出来るようになってきて馴染み始めていると思う。
休憩時間はそこの繋がりで女子とも話をする、けど男友達ともそれなりに話が出来るようになった。
ただ、違和感を感じるようになった男友達とは話を避けるようにしている。
そして金曜日、その避けるようにしている男友達からメッセージが入った。
なんで知っているのかと思ったけど、男友達連中は男だった頃にアドレスの交換しているんだった、忘れていた。
放課後にある場所に来て欲しいとある、これは告白の可能性もあるのだろうか。
そうじゃなくても良い予感はしない、どういう対応をした方が良いだろう。
やっぱり駿に相談するべきだと思った。
早速駿にメッセージを飛ばした、元男友達に放課後呼び出された事、話をしていると違和感を感じていた事、今週から避けている事、どうするべきか教えて欲しい事を伝えた。
すると直ぐに返事が返ってきた、流石は駿だ。
駿が先に待ち合わせ場所に行って他に誰か居ないか確認する、告白された場合は今は興味が無いと言って断る事、告白じゃない場合も基本的に断る事、何かトラブルが起きそうな場合はすぐに助ける、と、なんだか色々と細かい所まで指示された。
全く駿は心配性だなと思ったけど、それだけ俺の事が心配なんだろう。ちょっと嬉しいぞ。
よろしく頼む、ちゃんと断るからな!と駿に返事して、放課後になった。
◇◆◇
駿はちゃんと先に行ってくれているだろうか、今になって不安になってくる。
呼び出された場所に向かう途中、駿からメッセージが入った。
どうやら1人で待っているようで、そういう意味では安心して良い、とあった。
ちゃんと駿が先に居る事、確認してくれた事に気分を良くした俺はちょっとテンションが上がったけど、今から会う相手は駿じゃないので落ち着いた。
呼び出された場所に行くと確かに元男友達は1人で待っていた。
よく考えたらクラスメイトだし変な事はしないだろう。月曜からも顔を合わせるんだから。
結論から言うとやっぱり告白だった、今週からの俺の美少女っぷりに告白に踏み切ったらしい。
まあ男友達だったんだしイケるかもと思うのは仕方ない事なのかも知れない。そこはちょっと同情するけども。
当然断った、そういう事に興味が無い、という理由で、とても無難だ。
駿に告白した人みたいに相手の存在、つまり駿の時なら俺、今回の俺なら駿を知っているのかと思ったけど、この人は駿を知らないようでそこは何も言ってこなかった。
まあ言わないだけで知っているかも知れないけど。
とにかく、告白を断った、振ったという事。
振った以上ここには長居する理由は無い。
直ぐに踵を返し、えーと、何処に行けばいいんだっけ、カバンも何も持ってない事を思い出し、とりあえず教室に戻った、早く駿に会いたいしな。
戻る途中で考える、今の俺にとって、男時代の男友達って一体何なんだろう?
例えば、今の俺にとって女性は以前感じたような女の子の仕草や雰囲気にときめきを感じなくなっているし、男の時のような恋愛感情は持てないだろうと感じる。
以前距離が近かった男友達連中はどうだろうか。
今回告白をしてきたやつもそうだけど、知り合い、クラスメイトという程度ではなく、明確に男友達と呼べる存在だったはずだ、つまり駿ほどではないけど仲が良かった。
じゃあ恋愛感情を持てるかというと、それは無理だと感じる。
多分、友達だという感情が希薄になっていて、必要以上に寄られると嫌悪感を感じる。
ここまで考えて、大前提を思い出した、それは俺の男の記憶の有無だ。
駿だけが覚えていた、男の記憶、それが今頭に浮かんだ女子や男友達には無い。
多分、その時点で男友達だったやつらとの友達関係が無くなっているんだ。
結局俺には駿しか居ないといういつもの結論になってしまった。
◇◆◇
その後は特に何事も起こらず、駿と合流し、いつものようにテスト勉強をした。
「あ、土日はちょっと家族旅行で親と和香姉さんに付き合わされる事になった、日曜の夕方からなら多分一緒に勉強できるけど、悪い」
とても残念、凄く残念だ。
折角の土日で時間も沢山あるから勉強と休憩半々くらいで楽しめると思ってたのに!
……まあでも仕方ない、駿の親と和香さんには俺もお世話になってるし、多分この土日の為に和香さんは戻ってきているのだろう。
「あー、うん、大丈夫、偶には家族水入らずで息抜きしてきてよ」
「まあ姉さんがいると俺はこき使われるから息抜きになりにくいんだけどな」
「そうなの?俺が見てる限りだと優しいお姉さんだけどなあ」
「そりゃ睦がいる時はな。
お前は最近特に姉さんに気に入られてるみたいだからなあ、もしかして妹が欲しかったのかも知れないぞ」
「なんだよ妹かよ、でもそうだな、女の子になってから凄く優しくなったように感じるし、案外その通りかもな」
「優しいと言えばさ、なんか睦が女の子になってから俺達の親もなんか変わった気がしないか」
「分かる、なんか前より親同士も仲良くなってる気がするね、なんなんだろうなアレ」
「ご飯とお風呂とかな、前じゃ考えられなかったもんな」
「まあ親同士の仲が良いのは良いことだよ、悪いより遥かに良い」
「確かに」
「でさ、そういうわけだから日曜の夕方からだけしか勉強できなくなった、本当はもっとやりたかったけど、ごめんな」
「うん、うん、まあしょうがないよ」
2日間も駿と会えないなんて、俺は大丈夫だろうか、今日別れたら日曜の夕方まで会えないなんて。
「睦、そんな悲しい顔するな、そうだな、──よし!テスト終わったらさ、なんでも1つ言う事聞いてやるよ」
「本当に?膝枕を満足するまでやってもらうのとは別でだよ?」
「え、まじでそれやるのか?いいけど」
そんなに顔に出ちゃってたか、駿を不安がらせたくないし、気をつけないとな。でも……。
「よし、じゃあ約束だぞ、何でも1個な!」
「約束するよ、でもあんまり変なのは止めてくれよ」
「ダメだね~"何でも"だからな、裸で学校来てもらおうかな」
「いやそりゃ無理だろ」
「はは、流石に冗談だよ、あ、すぐに聞いてもらわなくてもいいよな?」
「ああ、いつでも1つ聞くよ」
「よし、じゃあ取っておいて此処ぞ、という時に使う事にしよう、楽しみだな~」
「おいおい、手加減してくれよ……」
また駿に気を使わせてしまった。
頼らせてしまったなあ、俺は駿に頼られたいと思っているのに、中々難しい。
ああ、でも。何でも1個言う事を聞いてくれるという、駿ならきっと約束を守ってくれるだろう、だからそれは大事に使いたい。
ほんと、駿に甘えすぎだと思う。
よし!駿が帰ってくるまで、なんとか1人で頑張るとしよう。
あ、でも今日の勉強が終わったら膝枕でシュンニウムの補給をさせてもらうからな。
◇◆◇
土曜の夜、そろそろキツくなってきた、まだ一日しか経ってないというのに、駿に会いたい、声が聞きたい。
ここ1週間はずっと毎日夕方以降一緒だったんだ、急に会えなくとこんなに寂しくなるものなのか。
流石に旅行中に電話やメッセージは邪魔だろうと思ってそれは我慢している。
ああでも、電話を掛けてしまいそうだ、スマホの発信を押しそうだ。
そう思っていたら突然、駿から電話が掛かってきた。
あれ?俺は発信を押してないよな!?俺の駿の声が聞きたいという思いが届いたのだろうか。
すぐに電話に出る。
「お、睦か?」
「駿!駿なんだな!もう我慢出来なくなってて電話掛ける所だったぞ!間違えて発信ボタン押したかと思った声が聞きたいっていう思いが届いたんだなそれに駿の写真もさもっと撮っておけば良かったって後悔したし!帰ってきたら沢山撮るからな駿にさ迷惑掛けたくなくてこっちから何かするのもなって色々考えたけどもう我慢出来なくなりそうで電話掛ける所だったぞ!間違えて発信ボタンとかさ声も聞きたいっていうか写真とかも!」
「ちょ!ちょっとまて!落ち着け!」
俺は捲し立てるように早口で駿に話し掛けた。
あれ?なんかおかしかったか?
「あれ?駿、どうした?」
「いやちょっと勢いに飲まれたというかなんというか。まあでも喜んでくれて嬉しいよ」
「うん、邪魔しちゃ悪いと思ってさ、メッセージも電話もしないようにしようって思っててさ」
「そうだな、電話はともかく、メッセージくらいなら別に邪魔にならないから良いぞ、あ、でも直ぐには返事出来ないと思うけど」
「うん別にいいよ、じゃあメッセージは送ろうかな」
「あー、姉さんに呼ばれた、スマンこれで切るぞ、じゃあ明日な」
もう切れてしまった、短く、あっという間だった、もっと会話をしたかったけど。
まあでも、声が聞けただけでも嬉しかったし、メッセージが送っても良いみたいだし、これでなんとか過ごせそうだ。
時間が無い中なんとか電話を掛けてくれた駿に感謝しつつ、邪魔にならないようなメッセージを考えて考えて、送った。
そんな事で顔は緩んでいた。
◇◆◇
日曜の夕方、駿が帰ってきて、俺の家に来てくれた。
帰ってくる時間やうちに来るタイミングなんかはメッセージで聞いていたので心の準備は万端だ。
「よお、来たぞ」
「お帰りなさい、お風呂にします?ご飯にします?それともわ・た・し?」
「なんだそりゃ、全部準備出来てないって聞いてるけど」
「ノリが悪いな、そこは恥ずかしがるかどれか選ぶところだろー、俺も恥ずかしかったんだぞ」
「俺がそんなので恥ずかしがるわけないだろ、まあ睦が裸エプロンでもしてきたら少しは恥ずかしいし睦を選ぶと思うけど」
頭の中でそれを妄想してしまった、玄関で、裸エプロンを着て、三つ指ついて、恭しく駿を出迎える姿を。そして駿が俺を選ぶところを。
一気に顔が真っ赤になり、頭をブンブンと振り、妄想を振り払った。
「は!?そ、そんなんするわけないだろ!エッチ!エロ駿!」
「お前何想像してんだよ、冗談だ冗談、でさ」
「うん?」
「はいこれ、お土産」
「ナニコレ、犬だかクマか謎の4本足生物の……ゆるキャラ?のキーホルダー?」
「ああ、なんか可愛いだろ?カバンにでも付けたらなと思って。俺とペアで買ってきた」
「え?ペアで?マジで?可愛さは微妙だけどそれは普通に嬉しいんだけど」
「そうだろ、喜ぶかなーって思ってさ、でもそうか、可愛さは微妙か~」
「いやでもマジで嬉しい、やった、んふふ、ちゃんと付けるよ」
その微妙な可愛さの謎生物のキーホルダーを抱えてピョンコピョンコと跳ねていた。
女の子になってから嬉しくなると何故か跳ねたくなってしまう、後何故かスキップもしそうになる。何故だ。
その後はテスト勉強、そして多めの休憩でシュンニウムを補給した。
駿はしっかりと俺の家族へお土産を渡していた、これはお菓子だった、そうだな、そういうの大事だよな。
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