第7話 三十層
「なーにいちゃついちゃってんのさ」
ピンク髪の女性が近づいてくる。
「ん?ミアに見られてた、恥ずい」
「んー!本気なのかなぁ?」
「ひみつー!ヒナは秘密の多い女なのですよ」
いーっと口を引き攣らせて抗議する。
「それより、仲良くなれたんだね。良かったじゃん」
ミアはレストラン街に歩いていく。
「でしょ!もーちょー仲良くなったんだ!」
小走りでついていくヒナ。
「それはなにより、うちに来そう?」
「それは知らなーい!いまは仲良くしてる」
「連れて来なよ」
「やだ、無理はしないことにした」
「あらら、本当にお熱だね」
「さー?」
レストランに入って注文をする。
「私が奢ってあげる」
「金欠のヒナが?ばかな?」
「今日だけで五十万だしねー!」
「えっ!なんでよ!」
「ひみつー!」
ヒナはニコニコだ。
「そのレクト君は?」
「八百万くらい稼いでた」
「ぶっ!」
「汚いなぁ」
「私も狙うわよ!」
ミアの目が光るが、
「ダメでーす!仲良くなってないもんねー!」
ヒナがイーッとする。
「子憎たらしいわ本当に!」
「奢らないぞー?」
「もっと頼んでやる」
注文するミアに微笑むヒナ。
「食べなさい食べなさい!」
「くっそ!なんか負けた気分だわ」
中級ダンジョン一層、
『ゴールドスライム収集』
倒してカードを集める。
「な、なにそれ?そんなことできたの?」
「あぁ、できる」
「ずっこいぞ!」
「鑑定いるか?」
「いる!」
カードを渡す。あとのは合成と錬金だった。
「他のカードは?」
「これはダメ、自分でなんとかしなさい」
「なー!レアモンスターなんてみたことなかったのに!探せるわけないでしょ」
「あははは」
十層から始めていく。
「レアモンスターは?」
「いいのでなかったから無視でいいよ」
「そうなんだ」
「呼ぶか?」
「うん!」
「しょーがねーな『ナイトシャドウ収集』」
「うおっ!三体だね!」
一体逃して二体倒した。ドロップ品はシャドウローブ。
「えーっ!結構いいじゃん?」
「そうか?」
「似合う?」
ローブを被ってポーズを決めるヒナ。
「まぁまぁだな」
「そこは似合うでしょ?」
「嘘がつけない身体なんだ」
「はい、うっそー!」
こんな感じで十五層、
「ここもいるの?」
「いるぞ?呼ぼうか?」
「いい、ここはさっさと行こう!」
俺に引っ付いて歩くヒナ。
「『グール収集』」
「きゃーーーー!!」
10秒程で片付ける。
「もういいぞ」
「あ、全部倒したんだ?」
「あぁ、『ドロップ品収集』アイテムボックス」
「おぉ、そんなこともできるんだね!」
「覚醒してからな」
「覚醒する前は?」
「収集だけだからダメダメ」
「ほー、覚醒してすごくなったんだー」
「凄くはないけどな」
「凄いよ、だって自分で考えたんでしょ?凄いじゃん」
「そんな誉めんな」
顔が赤くなる。
「赤くなった」
「言うな」
「かっわいい!」
「グール呼ぶぞ?」
「ごめんなさい」
ほんとに…だけど、楽しいかもしれないな。
二十層、アイアンコング。
「ほれ、やれば出来る」
「硬いって!ウインドカッター!」
アイアンコングには効いていない。
「無理無理!何でこんな硬いの!」
「アイアンコングだからだよ」
「くっそー!どっかやわらかいとこ!」
ヒナは頑張って一人で倒すらしい、
「ウゴォ!」
「あ!関節柔らかいじゃん!みっけ!」
そこからは早かった。
「ヒナの勝ちー!」
「パチパチ」
「口で言うな!」
宝箱が出てくる。
「ヒナが開けていいんだよね?」
「ヒナが倒したんだからな」
ヒナが開けると短剣が入っていた。
「やった!えーと、飛龍の刃だって!カッコいい!」
「良かったじゃん」
「イェーイ!」
ようやく三十層、キメラ。
「ここは俺が」
「私がやる!」
ヒナが飛び出していく。
ヤギのブレスをかわし、ライオンのカミツキをいなして傷を与えていくが、なかなか倒れない。
「くっ!ヘビがうざい!」
尻尾の蛇を切り裂いて背中から攻撃している。
何とか倒せたがギリギリだったみたいだ。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ、」
「ちょっと休めよ」
「はぁ、はぁ、はぃ、はぁ」
短剣だときついもんがあるなぁ。
かと言っていまさら変えないだろうし。
宝箱が出て来てそれを開ける。
「お!指輪だ!素早さの指輪だって!つけてつけて」
「なんでだよ」
「けちー、けちー、けちー、」
「わかったよ、つければいいんだろ?」
右の薬指らしいのでそこにつける。
「顔真っ赤だぞ?」
「い、いいの!」
やっと、帰れる。
転移陣に乗って一層につくとギルドビルに向かう。
「えへへ、やっと追いついた!」
「だな」
「ヘトヘトのペコペコだよ」
「飯でもいくか?」
「待ってました!その言葉!」
「現金なやつめ」
「三十層までのドロップはヒナのものだからちゃんと売るものと売らないものを分けとけよ?」
「うん!わかった!」
結局はほとんど売ってたように見えるが、まぁいいか。
「凄いよ!五百万近くになった!」
「良かったじゃん!まぁ、今日は俺が奢るからどこ行きたい?」
「肉!肉食べたい!」
「んじゃ焼き肉だな」
「いいなぁー!わたしも混ぜて!」
ピンク髪の女性が手を掴んでくる。
「んな!ミア!」
「友達か?」
「うん、友達」
「ならいいよ、一緒に食べようか」
「やった!私はミアね」
「俺はレクトだ」
ブンブンと手を振ってくる。
「ミア!レクトにそんなことしないの!」
「ヒナが怒るのー、レクトクーン」
「ミア!」
戯れてるようにしか見えない俺は笑うしかないな。
「あははは」
「行こ!レクト!」
「あーん、まってよヒナー」
ギルドビルのレストラン街で焼き肉屋に入る。
「ビール三のユッケ三、上タン塩にー」
注文は任せていいみたいだな。
俺の前にヒナ横がミアだ。
「うっまーい!」
「美味しいな!」
「ビールが沁みる」
最初からバクバク食べてる、こっちが見てて気持ちいいくらいだ。
「二人は同じ所属って言うのかな?」
「そうよ。おなじクランメンバー」
ミアが答える。
「そうなんだ、よく連んでるの?」
「まぁね。私が面倒見てあげてるの」
「逆転したけどね」
ニマッと笑うヒナ。
「まさか」
「中級の三十層ですね」
「嘘!なんで?」
「本当ですよ。ヒナが頑張って一人でやってましたから」
ドヤ顔のヒナに顔が引き攣ってるミア。
「これが三十層での宝箱から出たんだー」
指輪を見せびらかしているヒナ。
「くー、私だってすぐに三十層だもん!」
「もうミアは私を抜けない」
「呪いみたいにいうな!」
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