薄緑色の単
猫セミ
薄緑色の単
それは突然だった。
「あ、辻村さん。あなたに手紙がきてるよ」
そんな言葉と共に差し出されたのは薄緑色をした一通の手紙だった。夏の終わりの昼下がり、湿った掌で
「ありがとうございます……?」
辻村が礼を言うと寮母は手を振って「気にしないで」と言い、キッチンへと戻っていった。そこからは味噌のいい匂いが漂ってくる。今日の晩飯は豚汁だったか。手渡された件の封筒に差出人の名前は書かれておらず、辻村の名と寮の住所が深い青のインクで丁寧に書かれている。
とにもかくにも、辻村宛に手紙が来るなんて珍しい。手紙を出す人といえば辻村の母なのだが、差出人の名はいつも必ず書かれている。それに消印に書かれた郵便局の名は近畿の某大都市、辻村にはほぼ縁のない場所のはずだ。親戚も知り合いもいない。何かに応募しただろうかと記憶を巡らせるがそんな覚えはない。
どこかモヤモヤとしながら食堂を抜け、辻村の部屋がある別棟へと向かう。渡り廊下から臨む別棟こと二号館の部屋は、ほとんど明かりがついていた。二号館で暮らしている寮生はもう帰ってきているらしい。珍しいなと思いつつ足早に渡り廊下を通り過ぎる。
二号館の奥の奥、二階の角部屋が辻村の部屋だ。彼女はそこへたどり着くなり机の上に出してあったペンポーチからハサミを取り出し、手紙の封を切る。良質な和紙でできた封筒はハサミが咬むと、小気味よいじゃきんという音を立ててその口を開いた。差出人は几帳面なのか入っている便箋の端はきっちりと揃えられていた。それを指でつまんで取り出す。
まるで一つの芸術品のようなそれを開いて崩してしまうのはあまりにも惜しい。それでも辻村の好奇心はその気持ちを張り倒して彼女の指を動かし、その内を晒した。開いた便箋はふわりとビャクダンの香りを漂わせた。
『辻村真様へ
突然のお手紙でさぞ驚いたことでしょう。匿名でこの手紙を送らせていただくことをお許しください。どうしでも名を明かせない理由がございます。
他でもない辻村様に一つだけお願いがあります。他でもない先日から行方不明となっている
このキーホルダーですが、赤い菊結びの紐が付いた白いウサギの根付だそうです。
きっとキーホルダーを探していれば私の正体も貴女にしか頼めない理由も、きっと分かることでしょう。無事にそれを見つけ、私の名前が分かったその時はぜひ報告にいらしてください。』
深青の美しい文字はそんな言葉たちを綴っていた。
この手紙、体は美しいがその内容は信じるに値しないものだ。辻村自身は寮生であることを隠していない。クラスで辻村が寮生でないと思っているのは、恐らく辻村とほとんど話をしたことのない僅かな者たちだけだろう。寮の住所も学校関係者であればすぐに割り出せるはずだ。そうでなくても、同じ寮生に訊けばきっとすぐにでも知ることができる。ここの寮生は基本的に口が軽い。部屋番号の記載はなくとも辻村の名前を書いておけば問題ない。
(いたずらしようと思えばいくらでもできるだろうしなぁ)
辻村は頭を軽く横に振り、手紙から目を離して天井を仰ぎ見た。照り付ける西日はじりじりと便箋を焼く。冷房の無い、蒸し暑い部屋の中で、辻村はしばらく手紙と睨み合いをした。
※
辻村以外の寮生は全員が女子バレー部に所属している。そのために部活に所属していない辻村と生活時間が被ることはほとんどない。辻村が帰って来る時間に他の寮生はいないし、晩飯の時間は基本一人だ。それでも今日のように寮生が晩飯の時間には全員揃っているということは月に一度くらいある。
「……まぁ、一人いないけど」
風呂に入ったことを示す札を裏返しながら辻村は小さく呟く。冴谷涼子の札は誰も触っていないのか若干埃を被っていた。二号館はいつも通り静かだ。食堂の方からは賑やかで楽し気な声が聞こえる。いつも通り晩飯を先に食べた辻村に、食堂への用は無い。
少し魔が差して辻村は中庭へ出る。中庭からは食堂のある一号館、多くの生徒が過ごす二号館、そして一部の生徒だけが入っている三号館へ行くことができる。三号館の入り口は換気のためか開けられていた。特別用事がなければ入らない場所。そこへ辻村は踏み込んだ。
そのまま、まっすぐ二階に上がり角部屋を目指す。今現在この三号館を使っているのはたった一人だ。一人の三年生がその部屋を使っている。慎重に、それでも早く前へと足を逸らせる。硬い木を踏む音が静かな館内に響く。それがいつもよりもうるさく感じてしまう。
暗い階段を、廊下を電気も付けずに進んでその部屋にたどり着く。
「やっぱそうだ。ここで見た」
半開きになっている戸を引く。握ったドアノブは少し冷たくて気持ちいい。開けた部屋からは生ぬるい空気が流れ込んできた。ぽっかりと口を開けた暗闇に辻村はいそいそと踏み込む。暗黙の了解を破る感覚に思わず頬を歪めた。
部屋は暗く、物の輪郭さえも定かではないが目当ての物はすぐに見つかった。
電気を付けるための長い紐。その先に括りつけられた白いウサギの根付。菊結びのされた赤い組紐。手紙に書かれた通りの特徴を持っている。
辻村がこの部屋に入ったのは三回目だ。一回目は荷物運びを手伝った時、二回目は黒光りするアレを退治してくれと呼ばれた時だった。これを目にしたのは確実に二回目の時だと辻村は記憶している。確か夏休みに入り、大会が終わって部屋移動も完ぺきに済んだ頃。お盆より後の話だ。たまたま同じ物を持っている、という可能性もあるが何となしに疑ってしまう。とはいえ、冴谷涼子が帰ってこなくなったのはつい先日のことだ。夏休みが明けて一週間も経っていない。
「んん……」
どういうことだろうか、そう考えを巡らせる辻村が首を捻っていると不意に中庭から声がした。それですぐに状況を理解する。中庭から聞こえる声にはこの部屋の主である
とはいえこのままでは鉢合わせるだろう。そう考えた辻村は慌ててその部屋を後にし、廊下に出る。玄関を通り、階段へと差し掛かる足音が聞こえる。辻村は部屋に入るために脱いでいたスリッパを手に持ち、五木の部屋の真正面にある角部屋に飛び込む。埃っぽい部屋の押し入れの前で息を潜める。押し入れに入ろうか迷ったがこの寮の戸類はもれなくガタついているのだ。音を立てずに開けられるとは到底思えない。
足音は階段を登り切り、少し止まった。
無意識のうちに息が止まる。ここで見つかって寮母の信用を失うわけにはいかない。その後のことを考えると苦しすぎる。見つかってたまるか、その一心で息を潜め続ける。足音は再び動き出し、そして戸が閉まる音がした。
それが分かってから数秒間も息を止めたままだった。恐る恐る廊下を覗き見、そこに誰も居ないことが分かってやっと長く息をついた。冷や汗が息と共に流れ出る。緊張感にかき乱されつつも、どこかこの状況を楽しんでいるような、そんな高揚感に辻村は気が付いた。汗ばんだ手で戸をそっと開き、その開いた間に身を滑り込ませる。抜き足差し足を基本に、背を屈めながら三号館からそっと出る。幸運なことに中庭にも、二号館入り口にも人はいない。食堂から中庭に面している窓はすりガラスのため絶対に見られることはない。やっと安心できる状態になり、辻村はほっと息をついた。
「辻村さん? 何してるの」
「……!」
声の主は五木だった。三号館から出てきたらしく、手にはファイルを持っている。先ほど部屋に戻ったのはそれを取りに戻るためだったのだろうか。辻村は努めて動揺が表に出ないようにそれに答える。
「水でも飲みに行こうかなーと……何か用ですか?」
「いや、なにも無いわ。少しぼーっとしているように見えたから」
「あぁ、脱水気味だからですかね……それじゃあ失礼します」
「うん」
五木に背を向け食堂へと向かう。五木の視線が痛いほど感じられるのは気のせいだと辻村は自分に言い聞かせた。
※※※
他愛のない噂話を聞き流しながら、辻村は次の授業の用意をする。次は五限目、午後で一番辛い授業だ。今日一日の授業はまるで集中できなかった。
もちろん例の手紙のせいだ。ものすごく気になるというわけではないが、全く気にならないというわけでもない。それが妙に心のうちに引っかかっているせいで勉強に身が入らない。幸い期末は少し先だが教科によっては小テストがある。期末はまだ先だからと油断できないのがまた、辻村に焦りを感じさせていた。
休憩時間はまだあと少しある。誰よりも早く次の教室に移動した辻村はファイルに挟んでいた例の便箋を取り出した。
(郵便局に出すときに届く日時を指定すれば出来なくはない……けど……なんでこんな回りくどいことを)
悶々と考え込む。辻村は手紙の真意が未だに読み取れずにいた。逆に言えば辻村はそこが気になって仕方がない。
(五木さんの部屋のキーホルダーが冴谷先輩の物かどうかは分からないし……ていうか、そんな被るものかな。分かんね)
ほうと一つため息をついて顔を上げぎょっとする。
「なに見てんのー?」
「うわ……」
四人掛けの机の向かい側に、いつの間にかクラスメイトが座っていた。辻村は驚き、眉をひそめる。
「やば……ちょっと傷ついたかも……」
そう言ってからわざとらしく頬に手を当てる男子生徒は
「思ってもないくせによく言う」
辻村が手紙に目を戻しながらそう言うと、向かい側に座った彼はそんなことないよー、と首を緩く横に振る。
「んで、何見てたの?」
「手紙ー。差出人不明だけどね」
「ラブレター?」
「ラブレターに匿名はどうかと思うけど……違う違う。怪文書」
「怪文書。どれどれ」
そう言いながら虎見は辻村から手紙をひょいと取り上げてしまった。
「お前さぁ、他人の手紙をさぁ」
「まぁまぁそう言わずに。へぇー」
虎見は辻村の絶対零度の視線を躱し手紙を読み始める。短い手紙を読むのにはそれほどかからない。虎見はすぐに顔を上げた。
「ホントに怪文書だね」
「アタシが嘘ついたって思ってたの?」
「そういう訳じゃないけど……この冴谷さんってあの冴谷さん?」
「そうじゃないの? 他にいるの、冴谷涼子」
「俺の知る限りはいないかなぁ。この人保健室にいたことあるよ」
「え、そうなんだ」
思わぬ情報に辻村は怒りを忘れて食い付いた。虎見は得意げに口の端を持ち上げる。
「内田先生と話してたよ。寮の話してた。詳しくは聞き取れなかったけどね」
「へぇ……そーいやあの先生元寮生だとか言ってたな。でも冴谷先輩が保健室にいるのはちょっと意外かも。元気ハツラツ! って感じの人だったし」
「そういえばそんな感じの人だった気がするなぁ。まるで別人みたいだったよ? 寮内でいじめとかあるの?」
「え……いや、どうかな」
虎見の指摘に辻村は考え込むもうと腕を組む。しかしその答えはすぐに出た。
「あったとしても私が知りえないところでありそうだな。寮っていうか女子バレー部の問題じゃないのそれ」
「ん、それもそうか。そっち以外は全員バレー部だっけ」
「そうだよ。ていうかさ、それ盗み聞き?」
「うん、そうだけど?」
辻村の質問に虎見は当たり前だというように即座に答えた。予想できてはいたがここまで予想通りだと逆に少し怖くなる。
「おま……それはきもいぞ」
「って言われても。聞こえたもんはしょーがないって」
話がひと段落したところで教師が教室に入って来る。それを合図に賑やかだった教室が静まり返る。係の生徒が声をかけ、皆が一斉に立ち上がった。
※※
放課後。いつも通り一人で帰寮し、鍵を開ける。
「あれ」
いつもは開いているはずの鍵が開いていた。先に誰か帰っているのだろうか。珍しい出来事に辻村は首を傾げた。からりと軽い音を立てて開いた先、ちょうど右隣にある下駄箱にはローファーが一つ入っていた。他は全てスリッパだ。
(一人早退かな)
スリッパに履き替え、玄関からすぐにある廊下に出る。廊下にある鴨居に設置された名札をひっくり返す。どうやら今寮にいるのは辻村と同じ一年生である
「ふーん……」
今戸内以外に寮生がいないのは明白だ。この札からも、玄関の靴からもそれは分かる。辻村は鞄も置かずに二号館のある部屋へと向かった。戸内の部屋は一階にある。二階の角部屋、今から目指す部屋からは少し遠い。今がチャンスだ。好奇心の赴くままに、それでも足音は控えめに歩を進める。
閉じられた戸のドアノブをそっと握って引く。蝉の声が戸を引く音をすぐかき消してしまう。暑さではない別の何かが原因の汗が頬を伝う。
部屋は辻村が思っているよりも散らかっていた。部屋は半分で分けられているらしいが、ドアから見て右半分から物が雪崩れ込んでいた。ヘアアイロンに、練習用のユニフォーム、ハンドタオル、教科書、ノート、散らばったプリント類。
そして空になったペットボトルの針山に、お菓子のごみ。部屋の隅には短い髪の毛が埃と共に丸くなっている。
「……こりゃまた」
思ったよりも酷い部屋の状態に辻村は思わず声を出した。冴谷涼子、そして黒部が使う部屋だ。冴谷涼子はまだ行方不明、というかいなくなったことが発覚してから三日しか経っていない。部屋移動の目途も当然立っていない。
左奥、おそらく冴谷のスペースであろう所へと踏み込む。この棟で今この部屋に来るものはいないと確信が持てていてもなお、緊張感は絶えない。それでも頭は驚くほど冷静だった。呼吸は深く長くなり、視界は広がっていく。真っ当に生きていてこそ感じる高揚感に辻村は口元を歪ませた。
もし、もしキーホルダーがあるとすればこの辺りだ。鞄に付けていたらもうそれは探しようもない。その可能性の方が高い気もしなくはないが、もう手は勝手に動いている。
ちら、と壁際を見てみれば夏用のスカートがかかっていた。確か彼女はスカートを買い直していた。
(ここにあるのはたぶん、破れた方だな)
そう思ってスカートを観察する。案の定、大きく割けてしまっているところがあった。普通なら捨てるものだが、彼女は「柄もかわいいし、飾るにはちょうどいいかなって」などと言っていた。荷物運びを手伝ったときの話だったか。
(ん、犬の毛)
スカートについていた白い毛の正体を辻村は見抜く。親戚の家の柴犬の毛がこんな感じだ。壁際の物色を終えた辻村は机へと目をやった。
冴谷の机は、部屋移動の際の負担を考えたのか軽くあっさりとしたデザインの座卓だった。机の上にはブックエンドに挟まれた教科書やノート、それから引き出し付きの小物入れがある。辻村は手始めにその引き出しの一番下に手をかけた。
引き出しはどこに引っかかることもなく、するりと開く。薄いプラスチック製の百均に売っていそうな引き出しだ。引き出しは開くと同時にふわりとビャクダンの香りを漂わせた。小さな引き出しの、その一番下に入っていたのは薄緑色のレターセットだった。
思わずそれを引っ張り出し、触って確認する。ビャクダンの香りも、手触りも大きさも、辻村に届いたものと同じに見えてしまう。恐る恐るファイルに入れていた、辻村の元に届いた便箋を取り出し見比べる。触って比べる。
(いや、そんなまさか)
便箋自体模様などの装飾が一切ないシンプルなものだ。色ムラだってない。今の時代百均や雑貨店にいくらでも売っていそうなものだ。引き出しの隅には練り香が置かれている。ビャクダンの香りの元はそれらしかった。
ふと思いついた手紙の差出人の正体を確定させたい一心で中段の引き出しを漁る。筆記用がいくつも入っているその中に指を突っ込んで弄る。小さくなった消しゴムが四つ、空になったシャーペンの芯入れ。角の欠けたプラスチックの定規が一本。辻村が思っているようなものは入っていない。何かに追い立てられるようにして最上段の引き出しに手をかける。
「なにしてるの」
「っ!?」
反射的に振り返った先には戸内がいた。彼女は部屋の入り口を塞ぐようにして立ち、辻村の方を凝視している。逆光のせいかその表情はよく見えない。
「……ちょっと、探し物があってさ」
特に取り繕うこともなく正直にそう返す。彼女がどう出てくるのか、辻村はじっとそちらを見つめて様子を伺う。
「探し物? 人の部屋で?」
「そう、他人の部屋で。あるとしたらここだろうし」
「……どういうこと?」
責めるような声ではなく、純粋に疑問に思っているようだった。辻村は引き出しとレターセットを元あったようにしまい立ち上がった。
「どういうことも何も。それじゃあ」
何事も無かったかのように、ごく普通であるようにして辻村は戸内の横をすり抜けようとする。が、その腕を戸内は勢いよく鷲掴みにした。
「ちょっと待って。なに何事もなかった、みたいにしてるの!?」
「あー……お願い! ちょっとの間だけでいいから秘密にして!」
辻村はなりふり構わず両手を顔の前で合わせて懇願する。戸内は明らかにドン引きしている。
(かくなる上は土下座でもするしか──)
辻村が膝を折ろうとしたとき、戸内が辻村の手を取った。
「え、へ?」
変な顔をして辻村は戸内を見下ろした。
「もしかして、冴谷先輩がどこにいるのか、知って──」
「いや、それは知らない」
変な誤解が生まれる前に辻村はバッサリとそう言い切った。戸内の眉が下がる。あまりにも悲し気なその顔に辻村は慌てて付け加える。
「でも、手がかりくらいは持ってるかも……しれない」
「うち、辻村さんがこんな人だとは思わんかった」
辻村の部屋に招かれた戸内は、開口一番にそう言った。
「むしろどういう人だと思ってたんだか……」
辻村は苦笑いしながら初対面の時を思い出す。春、辻村が寮に来たその日のことだ。戸内たちバレー部は辻村より一足先に入寮していた。寮生は辻村以外女子バレー部に所属している。必然的に最後に入寮したのは辻村だった。部屋の片づけが終わり、晩飯の時間を過ぎた頃に一年生が集団になって辻村の部屋にやってきた。辻村も別に悪い気はしなかったので全員部屋に上げた。その時の第一声がこれだった。
「えあの、セフレいますか!?」
この時のことは一生忘れないだろう。どういう意図なのか、寮母から事前に何を聞いていたのかは知らないが、ロクな奴らではないと辻村は即座に判断した。これまで一切距離を詰めなかったのは、この出来事が主な理由だ。
(ホントにどういう人だと思われてたのかマジ気になるな)
鞄を定位置に置き、スカートを脱いでハーフパンツ姿になってから戸内の前に座る。
「どういう人……うーん、進学クラスだし真面目そうだなーと」
小首をかしげながら彼女はそう言った。
「……まぁいいや。それで、どういうこと? なんであそこに?」
「足音がしたからだよ。寝てたら分かるでしょ」
「あー、それもそうか」
スリッパは脱ぐべきだったのだろう。辻村は後悔もしつつ戸内に話を促す。
「辻村さんこそどういうつもりであんなことを?」
「って言われても。信じる?」
「それは聞いてみないことには」
「そりゃ当然ですわ」
半ばもうどうにでもなれという気で辻村は例の便箋を渡した。それに目を通す戸内の反応を辻村は黙って待つ。
「これどういうこと?」
「それが分かっ……あー、分かんないんだよね。キーホルダーあるなら部屋じゃね、って思って探してたってわけ」
「じゃあ別に、先輩がどこにいるのか知ってるってわけじゃないんだ」
「さっきから何度も言ってるけどそう。第一寮内にいるわけないじゃん。一応訊くけど、それ書いたの戸内さんじゃないよね?」
「違う違う。こんなに綺麗な便箋持ってないし。わざわざ手紙とか」
期待通りの返事に辻村は少しほっとする。
「キーホルダーどこで見たの?」
「五木先輩の部屋だけど」
「え、なんで?」
「知らないよ。それが分かったらこんなに困ってないし、家探しもしなくて済んだって」
「そっか……でもあのキーホルダー、冴谷先輩が持ってるの見たよ。彼氏から貰ったんだって、嬉しそうに……あ、これ秘密だったんだ」
うっかり言ってしまったと言わんばかりに戸内は口を押さえた。
「そのー……」
「別に口外しないって」
本来なら脅されてもおかしくない立場である辻村がそう言う。ここまで戸内と話してみて、辻村はこの戸内さつきという人物を誤解していたのではないかと思い始めていた。あの発言はともかく、辻村が思っているほど脅威ではないのではないか。
そんな辻村の胸の内を知らない戸内はほっと胸を撫で下ろした。
「よかったぁ」
「んで、その彼氏は誰?」
「それは……そこまでは知らない。でも学校内にはいないはずだよ。絶対別の学校の人だと思う! これは先輩自身が言ってたし……本当だと思う」
「それ嘘だったらどうするのさ……いや、そうでもないのか? 学校外の彼氏かぁ」
痴情のもつれの気配を感じた辻村は口先を尖らせた。どうにも面倒ごとのにおいしかしない。そもそも「そこまで調べる必要があるのか」と聞かれれば、今の辻村は確実に「無い」と答えるだろう。
もしかしなくても学校外の彼氏の家にいるのではないか?
そんな邪推が湧いては消える。そんな可能性はいくらでもある。なにせ寮は窮屈だ。特にこの梅咲寮はその中でも群を抜いているのでは、と考えてしまう。そのくらいに、環境はいいと言えない状態で運営されている。もちろん、他の寮に立ち入ったことはないのだが。ここが底だと思えば、諸々の苦痛が軽くなる気がするからだ。
※※※
「それからー、最近無言電話の件数が増えていますので、これはできる限り無視してください。用事があって電話する人はすぐ喋ると思いますので。最後に、あんまり塀の方に近寄らないでください。警備が作動してアルソックが来ます。今月で三回目なので気を付けてください。以上です」
寮長である五木が注意事項を述べ、寮会議は終わる。いつの間に髪を切ったのか、五木のセミロングはボブへと変わっていた。
(様になってるなぁ)
辻村はぼーっと五木の方を眺めながらそう思う。あの後調べてみたところ、あのウサギの根付は市内にある神社で売っているものだった。寮からも歩いて行ける距離にある。その神社を中心にして歩いて行ける場所にある高校は辻村たちの通う柴咲高校と、少し南にある来宮高校だけだった。
この県出身ではない冴谷のことだ。県外に彼氏がいてもおかしくはない、が。手紙の差出人は彼氏ではないだろうか。そんな気さえしてくる。冴谷があの便箋を持っていたのは文通をしていたからではないか。
(お揃いの便箋で文通か……青春を感じるな)
などと能天気なことを思ってしまう。
「あの、寮母さん。この便箋って見覚えありますか?」
寮会議が終わり、寮生もまばらになった頃合いを見計らって寮母に訊いてみる。
「え? あー、そういえば何回か見たことがあるような……」
「それって冴谷先輩宛てでした?」
「そうね。それは確かだったわ。でも、差出人の名前はいつも無かった気が……ごめんなさいね。ちょっと覚えてないみたい」
「いえ、ありがとうございます」
辻村は変に追及される前にそそくさとその場を離れようと、少し早口で礼を言って食堂から出ようとした。その足を止めたのは、電話の音だった。在寮を示す札の近くに置かれた固定電話を寮母が取りに行く。
寮母は少し話した後に、舎監宿泊用の部屋に入って行ってしまう。そのただならぬ雰囲気に食堂にいた辻村含む寮生一同が顔を見合わせた。
「……冴谷さんが、見つかったって」
概ね予想通りの言葉を寮母は口にした。
どこかそんな予感はしていたが、実際に聞くとどうにも実感が無い。明日警察の人がくるかもしれない、それだけを伝えて寮母はまた舎監宿泊用の部屋に入っていった。食堂ではつけっぱなしのテレビから、バラエティー番組が流れていた。
※※※
九月上旬。
学園祭を前に騒ぎ出す教室の中で、辻村は一人机に突っ伏していた。昨晩は読書に夢中になってしまいよく眠れなかったのだ。どうしても点呼で朝が早いのだから、当然早く寝なければならない。しかしそれはそれとして眠れないことはあるのだ。例えばそう、悩みごとのある夜なんかは特にだろう。
さて、冴谷が発見されたのは近所の河川敷の藪の中だった。残念ながら保護には至らなかったのである。その身体には扼殺の痕があり、警察は事件に巻き込まれたとみて捜査を進めた。その後どうなったのか、表上に出ることはなかった。学校では人間関係に関するアンケートがされ、学校内では彼女の最期に関する邪推が絶えなかった。女子バレー部は一週間の部活動停止を言い渡された。これは罰としてではなく、生徒の精神状態を気遣ってのことらしい。
(こういう時は暇を作らない方がいいと思うんだけどなぁ)
思うだけで特別口に出すことはない。
二限目が始まろうとする学校内を辻村は歩いている。いつもであれば授業のために教室移動を済ませている時間だが、今日だけはとある用事のために保健室へ向かう。
ノックをしてから返事を待たずにその中へ入る。ツンとしたにおいが鼻をついた。蒸し暑かった廊下から冷えたその中へと踏み入れる。汗が冷える感覚が心地よい。
「ん? どうしたの?」
養護教諭の内田は辻村を見るなりそれだけ口にした。いつもならばサボりに来たと言うところだが、今日は違う。
「冴谷さんのことなんですけど」
辻村のその言葉に内田は目を細めた。若く、柔らかな表情が彼女のトレードマークだが、それはすっと消えてしまう。その反応に辻村はさっそく手ごたえを感じた。
「先生ですよね。私に手紙を送ったのって」
昨日辻村が冴谷の部屋で見つけた紙束に答えが載っていた。紙束は手紙の下書きだった。シャーペンでいくつもの文言が書かれていた。そのうちの一つに『内田先生』とあったのだ。その下書きから推測できる手紙の内容は『束縛の強い彼氏に困っている』というものだった。
「なんでこんな──」
「それね、口では言いにくいって言ってたからあげたものなんだよね」
辻村が追及を始める前に内田は自ずから語りだす。その語り口は酷く静かで、ゆったりとしていた。夜、静かな湖に舟が漕ぎ出すように滑らかに話は始まった。内田は机の引き出しから薄緑色の便箋を取り出し机の上に置いた。ビャクダンの香りが立ち上がる。一瞬見えた引き出しの中には練り香水らしきものがあった。
「口で言いにくいなら紙に書いてみたら? って言ってあげたものなんだよね。クラスも学年も違うしたぶん知らなかったと思うけど、冴谷さんは放課後ちょくちょく保健室に来ててね。それで話を聞いていたって感じ」
「……」
辻村の望む答えはまだ出てこない。じれったく思いながらも辻村は話の続きを促した。
「でもあの子ね、表沙汰にしたくなかったんだって」
「それは部活のため、ですか?」
恋愛禁止に連帯責任。一部員にかかる責任は重たいものだった。
彼女一人が問題を起こせば、それは部全体の行き先に関わることになる。大会への出場停止はもちろん、普段の活動だってままならなくなるかもしれない。それを彼女は恐れていたのだろうか。
内田は少し首を傾げてから、こう答えた。
「それもあるけど……無理言って寮生になったから、問題を起こすと学校を辞めさせられてしまうんじゃないかって怖かったんだって。きみとちょっと似てるね。今はそこまで気にしているようには見えないけど……冴谷さんはすごく気にしてたみたい」
「別に気にしてないって訳ではないですけど……根付はどういうつもりで私に?」
「それは、いた、もう白状しちゃおうかなぁ。実のところ迷ってたんだよ。彼氏のことを言うか言わないか。教師としては失格なんだろうけど……あの子が家のことで思いつめているのを見るとどうしても軽々しく言えなくて。事態を悪化させるってワケじゃないし、むしろ言わなきゃいけないんだろうけど……あの子の気持ち、分かるからなぁ」
少し遠い目をしながら内田はそう話した。この内田という人は梅咲寮で暮らしていた柴咲高校の卒業生だ。確か関西に実家があるのだったか。元寮生ということもあって、寮の管理をする事務室からも相談役として頼りにされている。辻村が保健室で頻繁に休むことができるのはこの内田がいるから、というのもあった。
「だから、根付が見つかったり、私が出したことがバレたりしたら言うつもりにしてたんだ。結果はもう出たけどね。これも仕事だからと割り切らなきゃいけないのがつらいところだね」
何でもないように内田はそう言った。彼女は何とも言い難い顔をしている。
「それにしても、何で分かったの?」
そこから一転、内田は話題を変える。その問いに辻村は心臓を跳ねさせた。
「あー……えーと、その、下書きを見つけて読んだので……」
内田の追求返しに辻村は正直に答えた。内田はその答えに目を丸くする。
「え、じゃあ部屋に入ったってこと? 事前に渡されていたとかじゃないんでしょ?」
「まぁ、そんな感じです」
「今回は知らないけど、止めなさいよ? プライベート空間なんだから」
「き、気を付けます」
「まぁでも、そうねー……しょうがないけど他の先生方にも話してくるよ。ありがとうね」
内田は辻村に頭を下げ、決心したように立ち上がった。
「このまま休んでいく?」
「そうします。おかげさまで夜寝れなかったので」
「それは申し訳ないわね……」
「結局、大事にするのを冴谷さんが避けていたから、今の今まで先生は黙っていたということでいいんですか?」
「そうね。貴方に手紙を送ったのは賭けもあったんだけどね。思い通りにはまぁ、いかないよね。根付も見つからずって感じ?」
「ええ、まぁ」
「…………それもそうか。あの子が持っていたんでしょうね。なら仕方ないか」
「そうだと思います。おそらくは鞄かスマホに付けていたのだと思います」
「まぁ分かり切っていたけどね」
その言葉に辻村は面食らった。
「違うのよ。藁にもすがりたいって感じで書いてあったでしょ? 本当にそうだったんだから。侮っていたわけではないけど、貴女がそこまでするとは思っていなくて」
それに関して辻村はなにも言い返せない。少しばかりばつが悪くて黙り込んだ辻村に、内田は肩をすくめながらこう言った。
「ふふふ、気になることを確かめたいっていうのは立派だけど、好奇心で身を滅ぼさないようにね? あれも一種の狂気だから」
と、いった具合の話をした。結局大事になってしまったのは無念なことだ。しかしどうしようもない。大事に仕立て上げた役者の誰一人として、悪意を持った者はいないはずだからだ。各々の役割を全うしただけである。
※
「……? 辻村さんが来るなんて珍しい……どうしたの?」
五木は勉強中だったのか、右手にはシャーペンが握られていた。夕食の後、辻村は五木の部屋を訪ねた。
「あの、一つ訊きたいことがあるんですが……今大丈夫ですか」
「いいけど、なに?」
「あの電気の紐にぶら下がっているキーホルダー、誰に貰ったんですか」
半分はあてずっぽうで、半分は推測。もしかしたら、というよりは適当を言って何かボロが出ないか。そんな期待の方が大きい。
「……どういうつもり?」
五木は眉をひそめた。その目は辻村を疑い、見定めようと瞳孔を開く。
「いや、もしかして……彼氏に貰ったものだったんじゃないかと思いまして」
「元、よ」
辻村の言葉に五木は強くそう付け加えた。己が地雷原に突っ込んでいっているのは理解していたが、今は自分の身以上に根付のことが気になって仕方がない。
「伊藤さんですか」
ぴく、と五木の眉が動いた。
『・鬼電も怖かったですし、何より、必ずこう言うんです。家に泊まりに来いって。寮生だからって断っていたんですけど、やっぱり嫌で嫌で。それを一度だけ友達に相談したんですけどまともに取り合ってくれなかったんです』
今件をややこしくしているのは彼の存在である。
関係としては冴谷の現彼氏であり、五木の元彼氏。五木が何を言い返さないのをいいことに、辻村は邪推に邪推を重ねる。
「……冴谷さんから伊藤さんについて相談をされていました?」
「だったらなに? ねぇ、どういうつもりなの?」
五木のうちで必死に隠されていた不快感が露わになる。辻村はそれを当たりと捉え続ける。
「いえ。気になったんです。誰が冴谷さんを殺したのか」
その言葉に五木の顔はより一層険しくなる。
「伊藤さんが関係しているの間違いないとは思いました」
ただそれだけではなない。
「無言電話、あれ最近聞きませんね」
そう。寮会議でも取り上げられていた無言電話はぱったりと止んでいた。冴谷涼子が見つかってからというものの、無言電話は一切かかってきていない。寮母はホッとした様子だったが、辻村はそれが気になっていた。一番激しかったのは盆前後。無言電話は決まって食事の時間にかかってきていた。絶対に誰かしらが食堂にいる時間。嫌がらせにはもってこいだろう。
「それが何の──」
「私、出たことがあるんです。何も知らなかったので。その日はちょうど遅く帰った時だったので」
帰ってきて、その足で電話を取った。人の声の代わりに、犬が吠える声が聞こえた。中型犬かそれ以上の犬の鳴き声だ。
「元彼さんのお家には犬がいたんですね。柴犬ですか。おそらく無言電話は貴方に向けてやっていたんでしょう。着信拒否をされたから、寮の方にかけた感じですかね。しかし相手にされない。盆の前に増えたのは、貴方に対する抗議だったんじゃないんですか」
辻村は言葉を切って強く念を押すようにこう言う。
「『お前も殺したんだぞ』って」
五木はやや間を開けてから重々しく口を開く。
「あのさ、本当にどういうつもり? いつの間に探偵にでもなったの?」
ゆっくりと上げられた顔は険しい。視線は強く刺すようだった。
「ねえ、答えてよ! 知ってどうするつもりなの!?」
がば、と身を起こして五木は辻村の胸ぐらを掴みかかった。じわじわと鳴く蝉の声が廊下にこだましている。興奮した様子の五木は辻村の答えを待っている。
「えぇと、探偵のつもりかと言われたら、確かにそう──」
「は?」
そうなる、と肯定しようとした辻村の言葉を五木は遮る。
「なに? 知らなくてもいいことを知ろうとして人のこと嗅ぎまわったってこと? 人様が必死に隠していることを探し出して、晒そうってワケ? 進学だからって、賢人気取りのつもり!?」
目を見開き、興奮した様子でまくしたてるように五木はそう言った。その勢いに気圧されてしまい、後ろに下がろうとするが上手く動けない。
「止めてよ……もうダメかもしんないのに、なんで関係ないアンタが私を追い詰めて来るの?」
一際強い力で胸ぐらを掴み上げた後に、五木はその場に膝をついた。
「……何が起きたのかは知りませんけど、私はただ冴谷さんがどうしてこうならなきゃいけなかったのか、知りたいだけです。そりゃ、あの根付も気になりますけど」
「ねえ、分かるでしょ。聞いたよ、アンタんちもなんか厳しいんだって?」
「そう、かもですね……誰から聞いたんですかそれ?」
「寮母さん。あの人は口が軽い方なの……じゃあさ、一緒なら分かるでしょ。アイツだってそれは分かってたはずなのに、なんでっ!」
錯乱する五木の様子を見て、辻村の頭の中で情報が繋がっていく。
(まさか、学校を辞めさせられるかもしれないから、相談を受けなかった、のか?)
冴谷の家もそこそこ厳しいことを辻村は知っていた。内田の話もあるが、それについて以前冴谷と話したことがあったからだ。その親近感からか、辻村にとって冴谷は寮生の中で唯一扱いが違う人になっていた。あの人だけは信用しても大丈夫だ、そんな気でいた。
実際のところ冴谷が行方不明になって気が気でなかった。問題を起こせば辞めさせられてしまうかもしれない。という彼女の発言を覚えていたからだった。
やはりというべきか、そういうことだったらしい。
「つまり、冴谷さんが内田先生や寮母さんに例の彼氏のことを相談しているのを知った貴方は……相談するのを止めろと言った。学校を辞めさせられるよりずっといい。尊厳だって保たれる。誰かの嫌な想像に付き合わされることもない。現状維持が一番いいと、伝えたんですね」
「その言い方だと……私が悪者みたいじゃない」
「そうですね。確かに、それでは問題がありますね……だってお二人は悪くない。悪いのは例の彼氏なんですし。だからこそこの件は複雑になっているんですね」
「……どうするつもり」
「例の彼氏が口を割らないとは思えませんけど……アタシは何も言いませんよ。ただ知りたかっただけなので」
「最ッ低……本当に自分の好奇心を満たすためだけに、こっちをかき乱したの……!」
それには返事をせずに辻村はその場を離れる。
間違いではない。どこか自己嫌悪にも似た感覚と、人の秘密を暴き出す爽快な感覚。それがぐちゃぐちゃに混ざり合って、蝉の鳴き声と共に溶けていく。いやに気持ちがいい。よくない感覚だ。そう思いながら息を吸った。
玄関先にある在寮を示す札は、一つ減っていた。
薄緑色の単 猫セミ @tamako34
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