最終話:パソコンを打つ音

数か月が経過し、ネットカフェの封鎖された部屋に関する噂は薄れつつありました。人々は恐怖の出来事を忘れようとしていましたが、それでもなお、深夜になると時折、パソコンを打つ音が店内に響き渡るという報告が寄せられていました。


ある晩、ネットカフェの従業員である悠人(ゆうと)は、興味本位から封鎖された部屋に足を踏み入れることを決意しました。彼は前の客の話や噂を思い出し、その部屋に何か秘密があるのではないかと考えたのです。


深夜の静かな時間帯に悠人は封鎖された部屋の扉の前に立ちました。彼は心臓が高鳴るのを感じながら、勇気を振り絞ってドアノブに手をかけました。驚くことに、今度はドアがスムーズに開くのです。


部屋の中に足を踏み入れると、そこには薄暗い光が漂っていました。悠人は緊張しながらも、不思議な引力に引かれるように進んでいきます。そして、部屋の奥にあるパソコン席に辿り着きました。


パソコンの画面はぼんやりと光り、キーボードには薄い埃が積もっていました。悠人は深呼吸をしながら、勇気を出してキーボードを叩きました。すると、部屋全体が静寂に包まれ、彼の打つ音だけが響いていきました。


しかし、突然、画面が明るくなり、奇妙な文字や記号が乱れて表示されました。悠人は戸惑いながらも、その文字を読み取ろうと必死になりました。文字は彼には意味不明でしたが、何か重要なメッセージを伝えているような気がしました。


すると、悠人の背後からひんやりとした風が吹き抜け、彼の脊髄に悪寒が走りました。彼は戦慄に震えながら振り返ると、そこには黒いフードをかぶった人影が立っていました。しかし、これまでとは異なり、その存在は穏やかで優しいものでした。


人影は静かに頷くと、悠人に向かって手を差し伸べました。彼は何故か安心感を感じ、その手に握られるように触れました。すると、彼は過去と未来の断片的な映像を見ることができました。


悠人は目の前に広がる映像の中で、この部屋がかつては研究施設の一部であり、そこで特殊な実験が行われていたことを知りました。しかし、実験の結果、何か異常な存在が引き起こされ、施設は封鎖され、部屋だけが残されたのです。


その存在は人々のエネルギーを吸収し、その力を利用して現実世界とつながることができる存在でした。そして、封鎖された部屋からパソコンを使うことで、その存在が現実世界に影響を及ぼし始めたのです。


悠人は映像が途切れると、再び現実世界に戻りました。彼は深く考え込み、その存在が引き起こす恐怖と危険を止めるために何かできるのではないかと考えました。


決意を固めた悠人は、封鎖された部屋の存在をネットカフェの管理者に報告しました。彼は施設の過去とその存在に関する情報を提供し、協力を求めました。


ネットカフェの管理者は驚きつつも、悠人の話を真剣に受け止めました。彼は警察や関係機関と協力し、部屋の封鎖を解除するための計画を立てることになりました。


数週間後、ネットカフェは再び騒がしくなりましたが、今度は封鎖された部屋が開放され、普通の利用ができるようになっていました。管理者や悠人の努力が実を結んだのです。


しかし、封鎖された部屋の存在が完全に解決したわけではありません。人々は依然としてその部屋が不気味な出来事を引き起こす場所であることを知っています。そして、時折、深夜になるとパソコンを打つ音が聞こえることがあります。


この怪奇な部屋は、人々に警鐘を鳴らす存在となりました。それは、人間の欲望や好奇心が生み出す闇を象徴し、決して踏み込むべきではない領域であることを教えてくれるのです。

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封鎖された部屋のパソコン O.K @kenken1111

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