第4話 【ASMR】美彩ねえ秘伝の安眠膝枕

かがみ

「湯者さん、すっかりリラックスしてるみたいだね。」

「わたしもね、湯者さんが言うとおりにしてくれて、勇気が出てきた、かも……。」

「催眠術なんて突然言われて……それでも付き合ってくれて……ありがとう。」


「わたしのおもてなし、まだまだこれからだよ!」

「えっと、それじゃ……湯者さん、ちょっと頭持ち上げるね。失礼しまーす……。」


   #頭上から、かがみの声がする。

   #膝枕で、湯者は真上を向いているイメージ。

   #声がぐっと近づいて、吐息交じりに。


かがみ

「うん、こんな感じかな……?」

「あ、あのね? これはね、美彩ねえ秘伝の膝枕なの……。」

「美彩ねえ、サッカーやってるから、太ももに自信があるみたいで、あっ……、ゆ、湯者さんの顔、こんなに近くで見たの初めてかも……。」


「うぅ、ひゃあ……ど、どうしよ……。なんか、体がぽかぽかしてきて……。」

「あう……! ゆ、湯者さん! 膝枕はそのままでいいからあっち向いて!」


   #左から、かがみの声がする。

   #湯者、横になって、かがみのお腹の逆を向いた。

   #吐息交じりではなく通常の声に戻って。


かがみ

「うん……。この向きなら、湯者さんと目ぇ合わないし、緊張しないでできそう……。」

「ふう……。よかったぁ。心臓がドキドキして、死んじゃうかと思ったぁ……。」

「湯者さん、寝心地どう? わたしの太もも……変じゃないかな?」


「目はそのまま閉じててね。体も、力を抜いたまま……。」

「わたしのことは気にしないで、いつでも寝ちゃっていいよ。」

「おやすみなさい、湯者さん。」


   #10秒くらい間。


かがみ

「ど、どう? 湯者さん、眠れそう? ん、まだかな……?」


   #再び10秒くらい間。


かがみ

「んと……そろそろ……どうかな……? あ……まだ起きてる……。」

「もぉ……。美彩ねえ、『こうやって膝枕すれば、湯者は気持ち良すぎてソッコー寝るはず!』って言ってたのに……。」

「湯者さん、ごめんね。そんなすぐには寝れないよね……。」


「でも大丈夫。わたしには、他にも秘策があるから! 湯者さん、目を閉じたまま、わたしの声に耳を傾けてね……。」


   #かがみ、あやすように囁いて。


かがみ

「カジカガエルが一匹……。」

「カジカガエルが二匹……。」

「カジカガエルが三匹……。」


「カジカガエルが四匹……。」

「カジカガエルが五匹……。」

「カジカガエルが六匹……。」


   #かがみ、通常の声の大きさに戻り。


かがみ

「えーと、うーん……。」

「ふ、普通は羊を数えるところを、カジカガエルにしてみました~っ!」

「…………。あ、はは……。ち、違うの。わたしもそう思ってたんだけど、美彩ねえが~~!」


「『かがみ、カジカガエル好きなんでしょ? だったらカジカガエルでゴー!』って……。」

「うぅ~っ……! もぉ、ほんとに美彩ねえはぁ~……!」

「さっきも話したけど、美彩ねえって子どもっぽいところがあって……、遊び相手が小学生でも本気で勝とうとするし、わたしや砂和ねえに男の子みたいなイタズラするの。」


「一緒に水着を買いに行った時なんて、わたしが試着しようと思ってたやつをいつのまにか別のとすり替えて、『元の水着返してほしかったら、先にそれ着てよ~』って……。イジワルでしょ?」

「だからわたし、仕方なく着たんだよ。美彩ねえとお揃いの、ブルーに白いラインが入ったビキニ……。」


「お腹のところに布がないから、スカスカして恥ずかしかったよぅ……。美彩ねえ、すっごい写真撮ってくるし……。」

「あ、でも、すぐに解放してくれて、欲しかったのを買えたんだけどね。」

「わたしが買ったのはね、白いワンピースの水着なの。裾のとこが二段のフリルになっててとってもかわいいんだよ♪」


「最初は去年の水着で済ませようと思ってたんだけど……、その、試しに着てみたらね、む、胸のところがちょっと……きつくなってて……。」

「砂和ねえに見せたら、新しいのを買った方がいいよって言ってくれたんだ。」

「砂和ねえもね、最初は買うつもりなかったみたいだけど、わたしと美彩ねえが試着してるのを見て欲しくなってきたみたいで、黒の……モノキニ? を買ってた。」


「モノキニって知ってる?」

「前から見るとワンピース、後ろから見るとビキニに見える水着のことをモノキニっていうんだって。」

「お腹はしっかり隠れてるのに、脇腹の布地がなくて、背中まで素肌が見えるから、すっごくセクシーなの。」


「砂和ねえは『これなら露出も少なめだし、おへそも隠せるし、安心♪』なんて言ってたけど、大胆すぎるよぅ……。わたし、絶対にむり……。」

「あっ、ちがうちがう……。いつのまにかお姉ちゃんたちの話になっちゃってるね。」

「えっと、話を戻して……。今度こそ湯者さんが眠れるように、羊を数えてみるね。」


   #かがみ、あやすように囁いて。


かがみ

「羊が一匹……。」

「羊が二匹……。」

「羊が三匹……。」


「羊が四匹……。」

「羊が五匹……。」

「…………。」


   #かがみ、通常の声の大きさに戻り。


かがみ

「うーん、なんか違う気がする……。や、やっぱりカジカガエルで……! すー……ふう。」


   #かがみ、あやすように囁いて。


かがみ

「カジカガエルが一匹……。」

「カジカガエルが二匹……。」

「カジカガエルが三匹……。」


「…………。」


   #かがみ、通常の声の大きさに戻り。


かがみ

「あはは。やっぱりカジカガエルも違うよね!」

「くすくすくす……。なんだかおかしくて、寝れるような雰囲気じゃなくなっちゃった。」

「でも、湯者さんとこうやってお話するの、とっても楽しいな……。」


「くす……。ね、湯者さん……。今度、一緒に水着買いに行こうね♪」



《第5話へ続く》


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