第3話 【ASMR】砂和ねえ直伝のリラックス術

   #左から、かがみの声がする。


かがみ

「すー、はー。すー、はー……。よ、よし。始めるね……。」

「え、えっと……。まずは湯者さんに、砂和ねえから教えてもらった、リラックスできる催眠術……をかけてあげようと思うの。」

「さ、催眠術って言っても、怪しいやつじゃないよ!?」


「わたしも最初はびっくりしたけど、なんか、有名なリラックス法のひとつで……。」

「なんだったかな、寝る時にはたらく、ふくこーかんしんけい(副交感神経)? っていうのを優位にする方法なんだって。」

「んと、砂和ねえはお医者さんの知識にも詳しくて……だから、ちゃんとしたやつ……だと思う。」


「わたしが勝手に催眠術って呼んでるだけなの。」

「こ、このあと……湯者さんのために、ちょっと恥ずかしいリラックス法を色々用意してあるんだけど……。」

「そ、そのままじゃ、恥ずかしい、から、最初に湯者さんに催眠術をかけて、湯者さんをぼーっと、ねむねむな状態にしておきたいの……。」


「ど、どうかな!? うまくできるか分かんないけど、わたしが勇気を出すためにも……催眠術、やりたいんだけど……いい、かな?」

「……えへへ、ありがとう。やっぱり、湯者さんは優しいね……。」

「えっと、それじゃ、早速始めるよ。」


「湯者さんはそのまま、そのまま……。そのまま、わたしの声に集中して……。」「吉井川の流れも……カジカガエルの鳴き声も……何も聞こえない……。」

「わたしの声だけを聴いて……頭の中でイメージを膨らませるの……。」


「そしたらね、目を閉じて。」

「これから順番に、頭、肩、お腹、腰、足……全身の力を抜いていくよ……。」

「体の力を抜くのってすごく難しくて、わたしもまだうまくできなくて……だからね、筋肉が張って、硬くなってるところがあっても大丈夫。」


「それが自然なことで、誰でもどこかには力が入ってるものなんだって。」

「その力を抜いて、リラックスしていこうね……。」

「じゃあ、行くよ。一つずつ順番に、ゆっくり筋肉をほぐしていこうね。」


「まずは、顔から。顔の力を抜いて……。ふにゃ~~~……。」

「もうちょっとやってみよう……。もっと、もっと力を抜いて……。」

「ふにゃあああ~~~~……。そうそう、そんな感じ。」


「変な顔してるかも、なんて気にしなくていいよ……。」

「今、ここにはわたしと湯者さんしかいないから、湯者さんはどんな顔してもいいの。」

「どんな顔してたって、わたしにとっては優しい湯者さんだもん……。」


「次は……肩の力を抜いてみよっか。」

「肩をかるーく、ゆらゆら動かして、ふっと止めて、だら~んとするの……。」

「まずは、右肩。ゆらゆら、ゆらゆら……。右肩に意識を向けて……。はい、力を抜いて……だら~ん……。」


「次は左肩。ゆらゆら、ゆらゆら、動かして……はい、止めて。だら~ん……。」

「そのまま、どっちも力を抜いて……。もっともっと、だららら~~ん……。」

「どうかな? 肩だけじゃなくて、肩から先……両腕の感覚も、とおーく、おもーくなってきたかな……?」


「まるでお布団の中に沈んじゃったみたいだね……。」

「自分の腕なのに、腕じゃない……。不思議な感覚だよね……。」

「次は、お腹の力を抜こうね。ゆっ……くり呼吸して……。お腹を膨らませて、へこませながら、少しずつリラックスしていくの。」


「ゆっくり吸ってー……。ほわ~~ってはいてー……。」

「ゆっくり吸ってー……。ほわ~~ってはいてー……。」

「もっともっと。もっと楽になれるよ。」


「ほわ~~~~ってはいてー……。ゆっくり吸ってー……。」

「ほわ~~~~ってはいてー……。」

「うんうん、湯者さん、とってもいい感じだよ。」


「湯者さんの体が少しずつ動かなくなって、お布団に沈んでいく……。」

「湯者さんはふわふわのお布団に包まれて、どんどん、どんどん気持ちよくなっていく……。」

「このまま体ぜーんぶ、だらんとして、もっともっと気持ちよくなっちゃおうね……。」


「最後は足だよ。まず、右足の力を抜く……。」

「力を抜いて、お布団に預けるの。いつも、たくさん歩いてくれてありがとう……お疲れさま……って、心の中でお礼を言いながら、だら~ん……。」

「次は、左足の力を抜く……。力を抜いて、お布団に預けるの。」


「今日も支えてくれてありがとう……明日もよろしくね……って、お礼を言いながら、だら~ん……。」

「どうかな? これで、湯者さんは全身の力を抜くことができたはずだけど……。」

「そう……。湯者さんは何もかも忘れて、幸せに包まれてる。わたしの声だけを聴いて、わたしに全てを預けてる……。」


「ねえ、湯者さん。このまま深呼吸してみよっか。」

「わたしもね、足踏み洗濯が終わったあとに『んーーーっ』って、伸びをしながら深呼吸するの。深呼吸って気持ちいいよね。」

「ね、一緒にやってみよう?


「さあ、息を吸って……。すー……。吐いて……。はー……。」

「もう一度……。すー……。はー……。」

「繰り返して……。すー……。はー……。」


「湯者さんが息を吸って……。すー……。吐くたびに……。はー……。心と体が落ち着いて、リラックスしていくよ……。」

「吸って……。すー……。吐いて……。はー……。湯者さんはどんどん気持ち良くなってくね……。」


「吸って……。すー……。吐いて……。はー……。どんどん体が楽になってくね……。」

「吸って……。すー……。吐いて……。はー……。」


「どんどん心が穏やかになってくね……。」

「すー……。はー……。すー……。はー……。」

「すー……。はー……。すー……。はー……。」


「えへへ。お疲れさま。」

「いま、湯者さんは全身の筋肉がリラックスしてるよ……。」

「わたしの催眠術にかかって、心も体も柔らかくなって、ふにゃふにゃになっちゃってるの……。」


「ふふ。気持ちよさそう……♪」

「だって湯者さん、ふにゃ~って、とってもかわいい顔してるよ……♪」


「ほよほよほよほよほよ……。」

「ほよほよほよほよほよ……。」

「えへへへへ♪ 湯者さんがすっごく気持ちよさそうだから、カジカガエルも喜んでるよ♪」



《第4話へ続く》


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