第8話 Target No.1102

 首脳会議の日を迎えたヒカルとレイの二人は、組織の選抜部隊の拠点で待機していた。


「《閃光》、《黎明》、お前たちに大事な話がある」


 今回リーダーになっていた《英雄》が二人にそう声をかける。


「なんですか?」


 レイがそう言うと、《英雄》は二人のそばに座り直す。


「お前らには今、ある容疑がかけられている。心当たりは?」

「いやぁ……」


 本当は心当たりがある。ユーリのことだろうが、それを言うわけにはいかない。


「じゃああの子供は何だ? 急に現れて、任務にも参加したのだろう?」

「それ……は……」

「お前らは虚偽報告とターゲットの隠秘などをした裏切り者だ。自覚はあるな?」


 完全にバレていたようだった。


 ここに来て、二人は恐怖を感じる。裏切り者と呼ばれたエージェントが受けた仕打ちは教訓としてよく知られているからだ。


「何でこんなことを?」

「だって……俺たちは何も知らされてない。ユーリが何をしたから殺さないといけないのか……そんなことも知らないような、自分で悪人だと思えない人のことは殺せない」


 ヒカルがそう答える。


「なら教えてやろう。アイツは外部組織に情報を漏洩したエージェント《永遠》の息子で、養成所から追い出された後、大臣を殺した。これは国として殺害に値すると判断しておかしくないだろう?」


 確かにそれを聞くと、命令が出るのもわかる。だがヒカルにはユーリが大臣殺しなんてするようには思えなかった。それには何か深い理由があると考えているが、全く思いつかない。


「お前はどうなんだ? 《黎明》」

「オレ……は……」


 レイはいざ聞かれると、何でだったのか自分でもわからなくなってしまった。ヒカルに言われたから、実際はそんなところだが、言えるはずもない。それに、自分にも根拠があったはずだ。だがそれも言っていいものなのかと迷ってしまう。


「なあ、仮にユーリがそうだとしても、何で教えてくれなかった?」


 レイのカバーをしようと、ヒカルがそう聞く。


「教えられてないから判断できない。当然じゃないか。なのにこんなこと言われるなんて理不尽だ。それに、そんなこと言うくらいなら自分たちで行けばよかった。なのに……何で?」

「暇じゃないんだよ。しかも情報を与えるのは《慧眼》の仕事だろ? 文句ならそっちに言ってくれ」


 そう言われても、ケイを疑うことはできなかった。自分たちを誘っておいて放り出すような真似はしないと思っている。だからすぐに、ケイはなすりつけられているだけだと二人は考えた。


「で、《黎明》」

「オレは……オレは組織に失望した。どうせ、オレたちは捨て駒だろ? ユーリのことをいいように使って、組織の穴を消し去ってる」

「何を言っているんだ」

「普通、そんなに人が死んでるならあんたくらいの実力者に任せるべき。それでもオレたちみたいな下っ端に行かせるなんておかしいだろ」


 正直、人手不足なのに切るデメリットの方が大きく感じる。仮に真実なら、よくわからない行動ではある。


「……わかってんなら殺されろよ」

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