第7話 ユーリとレーブン
首脳会議当日。
二人の任務に参加しなかったユーリは、とある飲食店に向かった。
「いらっしゃいませ……?」
入ってきたのが子供だったのが珍しくて、店員の頭にはハテナが浮かんでいた。
「予約してた黒川……の連れなんですけど」
「かしこまりました。こちらです」
店員は疑いながらも奥の個室にユーリを案内した。
案内された個室の中には男がソファに座っていた。そしてユーリのことを見ると、笑みを浮かべた。
「よく来てくれたね、ユーリ」
男はユーリの注文したココアが届いて店員が出ていくと、そう話を始める。
「お前が手紙の?」
ユーリは男の対面に座りながらそう聞く。
数日前、黒薔薇城にいた時の筋から手紙をもらった。その手紙でここを指定されていたので、ユーリはこの店に来た。
「ああ。俺はレーブン。レーブン・ブラックローズ」
「ブラックローズ?」
「そうだ。俺は君の父親だ」
「父親?」
いきなりすぎて、急には受け入れられない。
「証拠は?」
「黒薔薇城に物資を手配していたのは俺だぞ?」
「それが親だって証拠には……」
「暗号の手紙を書いたのも俺だ」
暗号の手紙というのは、ユーリの名前などが記されていた手紙のことだ。そこに書いてあったので、ユーリは黒薔薇城に籠城していた。
「確かにあれには助けられた。捨てたのもお前だけど」
「仕事のために引き離されたんだ。そんなつもりはなかった」
「仕事って、エージェント?」
「ああ。コードネームは《永遠》」
ユーリはその名前に聞き覚えがある。優秀なエージェントだ。そんな人物を保持しておくために引き離した。なんとなくあの組織ならやりかねないとユーリは思った。
「母親は?」
「病弱で死んだ」
ユーリの記憶によれば、《永遠》の妻は同じエージェントで、病弱ではなかったはずだった。ただ幼い頃の記憶なので曖昧になっているのだろうと気に留めなかった。
「それで、別に用件があるんだろ?」
「ああ。協力してほしいことがある」
「協力?」
「そうだ」
今まで売られた恩を考えたら、簡単には断れないような状況だ。
「何するんだ?」
「今のエージェントが悪人を殺し回って平和を保っている状況は、真の平和とは言えない」
「僕にはそれが当たり前」
「他の国ではそんなものが無くても平和にやってる」
「他の国なんて知らないし、合わせるも必要ない」
「とにかく、俺はこの組織を潰したい。だがその様子だと、とても協力はしてくれないみたいだね」
「うん」
正直、組織を潰したらヒカルやレイの仕事が無くなってしまうのでユーリは潰したくなかった。
「じゃあ国際警察に協力するっていうのは? この国にいてもユーリの技術は活かされない。スパイとして……どうかな。少なくともこの国の外に出ればユーリは悪人にはならない」
国外に出れば殺すことはできない。少なくともそうだろう。
今の生活に未練はあるが、二人をこれ以上巻き込みたくないという気持ちもあった。
「わかった。でも僕の手で組織は潰さない。それは勝手にやってくれ。それ以外だったら国際警察のスパイでもやってやるよ」
「それはよかった。それじゃあ、場所を変えて詳しく話そう」
「う、うん」
そしてユーリはレーブンが奢ると言ったので、会計を任せて先に外に出た。
少し外で待っていると、扉が開いてレーブンが出てくる。おしゃれな女性とすれ違って……
「えっ……」
ユーリの視線の先にいたのは、その女性に刺されたレーブンの姿だった。
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