エピローグ
最終話「機械仕掛けのフェアリー・ハート」
リリー
ギルド長の父親を持つ少女。少々気が強い。
テト
町に住むロボット工学の博士。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
傷口からは、青紫色の液体が流れだしている。
「デ、デリーズさんっ……」
マイキーが口をぱくぱく動かして、口から液体を流し、涙を流しながら片手を力なくデリーズに伸ばした。しかし、その手は触れあうことなく。
デリーズは、彼の手を冷たく払いのけた。
「マイキー、ご苦労。フェアリー・ハートは、俺が有難く使ってやる。強大な力を手に入れる為にな。貴様は、俺の糧になり、迷わず地獄に逝け!!!」
何とデリーズは、マイキーの胸に手を伸ばすと指を突っ込み、宝石を探り当てた。
そして、一気にマイキーから引きちぎり、液体が付いた
マイキーは絶命し、その場に倒れ伏した。
「やった、やったぞ。とうとう、フェアリー・ハートを手に入れた!まさか、俺のAIが持っていたとは。
「しかし……こんなちっぽけな宝石だったとはな」
マイキーを殺めた。デリーズは、最早人間とは思えない。表情をしていた。
「自分のAIを殺しやがった!あんなに慕ってた奴を!!」
ソラは、ギリッと歯ぎしりをした。
ミランダは声も出せずに涙を流して、絶句している。
『あんたなんか、人じゃないっ!』
アリスの怒声が響く。
「さあ、小僧。この世に別れは出来たか!」
デリーズは、フェアリー・ハートを頭上にかかげた。
「さあ、フェアリー・ハート!俺を圧倒的な力を持つ、支配者にしろ!」
フェアリー・ハートは、その声に呼応するようにキラキラと光り始めた。
「くそっ、デリーズ!」
ソラ達は悔しそうな表情を浮かべながら見ている。
その時、砂の奥から巨大なデザートゲイターが砂を巻き上げ現れ。
デリーズを宝石ごと、一瞬にして噛み砕いて呑み込んでしまった。
静寂、ソラ達は何とも、言えない悲しみと後味の悪い感情を残して戦いを終えた。
◇ ◇ ◇
ソラは自宅のベッドに運ばれ、医者に治療された。
ソラが、夕方頃に薄暗い部屋のベッドで目が覚めると、ドアの隙間から光がもれている。
部屋の外からは、ミランダやアリス。そして、ギルド酒場のリリーの話し声が聞こえてきた。
彼は、音をたてないようにそっと、ドアの隙間から覗いてみた。
「それで、ミランダさん。これからどうするの?」
リリーが聞いた。
「私は……行く所もないけど。ちゃんと、父さんや母さん。一族の皆のお墓を作って、弔ってあげたいから、里に帰るわ。」
ミランダは、切なそうな微笑みを浮かべながら少し、うつむいた。
緑色のソファーには何と、マイキーの亡骸が寝かされていた。
「
アリスが言う。
「何だか、可哀想になってね。連れて来たの。どうにか、直せないかな?」
アリスとリリーにミランダが、問いかけた。
すると、リリーは少し考えてから。
「パパの知り合いのロボット工学専門の博士が、この町にいるのよね……頼んであげようか?」
「えっ、二人とも正気なの?リリーはともかく、ミランダ。あんたは、こいつの主人に酷い目に遭わされたっていうのに!まあ、こいつも、可哀想な奴だけどさ」
アリスは驚きながら、ミランダを見た。
「うん、私もそう思う。けど、根は悪いAIじゃないと思うのよね。デリーズに利用されていただけだと思う」
「僕もそう思うよ。ミランダ」
ソラはドアを開け、部屋から出て来た。
「「ソラ!」」
アリスとミランダは、同時に声を上げた。
「大丈夫なの?ソラ、あの後、倒れたから。私心配したのよ」
ミランダが、ソラの横に移動して支えるために肩に手を添える。
アリスがそれを見て、むっとして急いで飛んで行き、ソラの肩にとまり頬をぺちっと叩く。
「駄目よ。ソラ、あんたは
「大丈夫だよ。これくらい。アリスは、心配性だな。僕もこいつのことは、気になってたんだ。ありがとうミランダ。アリスもね」
ソラは、アリスとミランダを交互に見た。
アリスとミランダは照れて頬を染め、自然に微笑みを浮かべた。
◇ ◇ ◇
ソラ、アリス、ミランダはリリーの案内で、町のロボット工学のテト博士の家に着いた。
「テト博士、このAIを直して欲しいのよ」
リリーは、博士に頼み込む。
二十代後半位のテト博士は、マイキーの状態を診た。
「うーん。コアが取られて、中のコードや回路がイカれちまってるな。こりゃ。酷いことをするもんだ。これは、砂賊団長デリーズのAIだろ。見たことがある」
「博士、何とかなりませんか?助けたいんです!どうしても」
ミランダは懸命に頼み、手を合わせて身を乗り出す。
「僕からも、お願いします!博士」
ソラも頭を下げて頼んだ。
テト博士は、ソラを見てから、ミランダをまじまじと見て頬を少し染めた。
「こんな、可愛い子に望まれているなんて、羨ま……いや、こいつも、嬉しいんじゃないの」
彼は、マイキーに視線を落とした。
「よし、俺が直してやるよ。金は、出世払いな!」
テト博士は、ミランダやソラにウインクをして微笑んだ。
◇ ◇ ◇
マイキーは、テト博士により、修理され生命回路を移植された。
「ミランダお嬢。わしは、あんたに命を救われた。だから、停止するまであんたに忠誠を誓う。でも、賊長のことは」
マイキーは暗い表情でうつむいた。
彼は、ミランダに恩義を感じて忠誠を誓ったが。デリーズのことはどうしても、忘れられないようだった。
そんなマイキーにミランダは、優しく微笑み。
「忘れなくても良いわ。ただ、あなたが良ければ私について来てくれない?」
「もう一度、この町に戻って来ても良いなら……お嬢と行かせてもらいやす」
マイキーは少し、切なそうだったが、その表情は喜びにも満ちていた。
ミランダはそれを見て、嬉しそうにうなずいた。
◇ ◇ ◇
五日後の昼にミランダは、ソラとアリスに別れを伝えて、町を後にすることになった。
また、落ち着いたら町に戻ると約束をして。
博士は、ミランダを心配して車で語り部の里まで、送って行くことにした。
ソラはミランダを見送りながら、切なげな表情をした。
「あの子のことが、女として好きなんでしょ。悔しいけど可愛いし、良い子だもんね。」
アリスの言った言葉にソラは驚き、頬を染めて彼女を見た。
「確かにミランダのことは、友達として、大切だけど。別に好きとか。そんなんじゃないよ!」
「嘘よ、アタシがいるのに。ソラの浮気者~」
アリスは、
ソラは、むすっとしてアリスに自分の唇を押し当てキスをした。
アリスは顔を真っ赤にしてソラを見つめる。
「アリスが意地悪するからだよ! 僕が好きなのは君なのに」
その言葉を聴いてアリスの表情がゆるむ。
「アタシもソラ、大好き!」
彼女もソラの唇にキスをして微笑んだ。
二人は、ミランダが乗った車の姿が、見えなくなると自宅にゆっくり、戻って行った。
その後、戦いの傷を癒したソラは、アリスと共に冒険者ギルドでガンマンの鍛錬をしている。
ミランダは語り部の里に戻り、復興するために尽力し始めた。
彼女の傍らには、元気になったマイキーが寄り添っていた。
機械仕掛けのフェアリー・ハート。ソラとアリスが共にいる限り、それは正しい煌めきを失わないだろう。
~fin~
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
これにて、「機械仕掛けのフェアリー・ハート」完結です。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。
最終話の後にちょっとした後書きをご用意しています。
よろしければ、お読みくださると嬉しいです。
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