第2話
俺の名前は「水戸名護屋」。製薬会社に勤めている一社員だ。この社に勤めて六年になるが、やりがいも何も感じず暮らしている。
主な功績もなく、同僚からは下に見られ後輩にも気を使われて、もう転職しようかなと思うほどだ。どちらにしろ、こんな人材は迷惑極まりないだろう。
俺はマッチ棒をこすり自分の家に投げた。火はついておらず結果は失敗した。同僚の火をつけるためだけに買ったマッチの本数は今投げたのが最後だった。地面を軽く蹴った。
ポストに何かが入っていた。
「この意気地無しが。」と書かれた紙。同僚のいたずらだろうか。少々の不快感を得た。
「人生嫌になりましたか?」
どこからか出てきた男が俺に対して聞いてきた。
「あぁ。」
俺は瞬時に答えた。
「でも、自分で死ぬのは嫌なんですね。」
「え?」
俺は相手の言葉に戸惑った。自分ではそうは思っていない。
「だって、さっきのマッチ棒、ちょっと浮いてたじゃないですか。火がつかないように。」
…確かにそうだ。俺は怖くて、自分の家に、火がつくのが。
「寿命で死にたいんでしょ?」
「あぁ、できるなら。」
男はポケットから謎の色がついたクーポンのような紙を取り出した。少しだけキラキラしていた。
「これを使えば勝手に老けて勝手に死んでいきます。」
男はそれを聞くと葛藤した。自分はこれを使って報われるか。それともただの詐欺商品ではないのか。
いや、決断した。
俺は男にクーポン券と思われるものを返すと、
「すみません。いらないです。」と呟き、家に入っていった。
それからというもの、謎の伝染病が蔓延したが、意外とワクチンを作ることに時間はかからなかった。
同僚からの胴上げ、心にしみるようなものだった。
甘い考え Rotten flower @Rotten_flower
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