プロローグ5

 もう俺が勝てない相手は居なくなった。

 アメリカで軍隊崩れみたいな奴らも倒した。

 中国でマフィアみたいな連中も倒した。

 ロシアで戦車を持ってる部隊も倒した。

 日本のヤクザみたいな連中も倒した。

 ただ、倒して、倒して、倒していくうちに自分の強さを自慢し、溺れ、飽きた。

 一言で言うなら……退屈だった。

 一回興味本位で【危険度2】の奴を見逃したら、俺のLEVELが2下がった。

 つまり、【危険度】の表示が出たらどんな雑魚だろうとぶっ倒す必要があるらしい。

 世界中回っている途中、かなり強い反応を感じて日本に帰って来た。

 平和な国である日本でこんな強い反応は珍しい。

 久しぶりの強敵の予感に俺は思わずニヤけた。

 俺は直観が告げる強敵の出現に胸を高鳴らせて、日本へ帰国した。

 この直感は現在の事では無く、未来起こる事を予知していると知ったのはつい最近の事だった。前々から俺が駆け付けられるように知らせてくれているなと、薄々は感じていたが、やはり神パワー流石と言うべきだ。

 羽田空港から直感が告げる方向へ走ると、日本国内で銃撃戦が繰り広げられていた。

 黒い煙が上がり、横転した黒塗りのベンツ。

 防弾ガラスを使われているのか、横転したベンツの側面は弾痕が幾つも確認出来た。

 状況から察するに黒服達が囲むようにして守っている少女を拉致する為に、誘拐犯が襲撃してきたってとこか?

 誘拐犯達の連携の取れた動きは軍隊を連想させた。

 そりゃ、ただのボディーガードが戦争慣れした連中に勝てる訳ねーか。

 アッと言う間に黒服達は銃殺され、誘拐犯達が少女に銃を向け腕を掴もうとした瞬間。

 その誘拐犯を殴り飛ばした。

 突然現れた俺の存在に気が付いた誘拐犯達は、バカなのか俺まで誘拐しようとした。

 掴まれそうになった手を振りほどいて誘拐用の車を殴り飛ばした後、一瞬呆けたもう一人の誘拐犯を投げ飛ばした。

 空中を舞う誘拐犯の頭上には【危険度120】の数字。

 この程度で120って、一体危険度いくつなら俺の相手になるっつーんだよ?

 視界にLEVELUPの文字。これでLEVEL80になった。

 期待していた相手が一瞬で終わってしまった事にがっかりしながら、俺は誘拐されそうになっていた少女を見た。

 強い意志を感じる目と、整った顔立ち。その身なりからどこかのお嬢様って事は一目で察しが付いた。

 ぼーっと俺の顔を見てくる少女に俺は一言、

「……雑魚に興味ねぇ」

 言い残してその場を去った。

 何処かに、俺を満足させてくれる奴はいねぇのか……?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る