プロローグ4
僕が転生をしてから、十二年が経った。
十二年間で気が付いた事が三つある。
一つ目は、僕は神様的な何かの存在によって前世の記憶を引き継いだまま別の人間として、生まれ変わっている事。
二つ目に、超人的な力も同時に授かっていて【危険度】と半透明な文字が頭上に表示されている、世界を滅ぼす可能性がある人間を倒す使命を授かっている事。そして、その人間を倒すと視界に時々LEVELUPの文字が浮かんでくる事。
三つ目に、意識を集中すると自分が今何LEVELなのか知る事が出来る。
小学二年生の頃から小学校には行かず、【危険度】の表示がある人間を再起不能にしていく生活を続けていた僕のLEVELは40になっていた。
LEVEL40がどの程度の強さなのか、大体が一方的に倒してしまい比較対象が居ないので分からない。
分かりやすく、RPGゲームみたいに攻撃力や守備力といったステータスも表示してくれれば良いのに、僕にこの力を与えてくれた神様はドラクエをやった事が無いらしい。
あと、魔法やスキルみたいな事もまだ出来ない。LEVELが上がって覚えるのかと期待したけど、LEVELUPはあくまで身体能力が上がるだけみたいだ。
僕は学校に良い思い出が無いから、学校を避けていたが中学に上がる頃、両親に泣きつかれてしまい仕方なく中学に通う事にした。
中学校はみんな同じ小学校の友達がいて、なんだか場違いな気がしてならなかった。
クラスメイト達とも自然と距離を取ってしまう僕に、友達は出来なかった。
ある日、学校の廊下で不良っぽい男子生徒達三人が横に並んで歩いていた。
みんな内心では廊下いっぱいに広がって歩く三人の事を邪魔だと思っていても、誰も何も言えない。
今こそ、僕の力を使う時じゃないか?
僕はこの力を正しい事にしか使わないと決めていた。この不良達は【危険度】の表示こそないけど、将来絶対悪い奴になる。今倒しておくべきだろう。
胸中に正義感を燃やし、僕は不良達の前に立ちはだかった。
「そんなに広がって歩いたら、みんなの迷惑だろ」
「あ? おい一年、お前今なんつった?」
「……じゃ、邪魔だって言ったんだ!」
睨みつけて来る不良達に負けずと僕も睨み返す。
「おい! お前ちょっと来い!」
不良三人に腕を掴まれて連れられたのは、普段あまり使われない旧校舎の三階だった。
休み時間の終了を告げるチャイムが鳴り、僕は結果として授業をすっぽかしてしまった事を後悔した。親に連絡とかされるのかな? とか考えていた。
旧校舎の使われていない教室に押し入れられると、三人は僕を取り囲んだ。
こんな子供よりもよっぽど怖い大人を何人も倒してきたのだから、上級生から威圧されるのなんて平気だと思っていた。
結果としてそれは大きな勘違いで、三人に囲まれて罵詈雑言を浴びせられた途端、強い吐き気と涙が込み上げて来た。
なんで、なんで僕はこんなに怖いんだ?
今までもっと怖い奴ら倒してきたじゃないか。銃を持ってる奴だって居た。それに常人離れした力も持っているのに、僕の体はその男子生徒が怖くて仕方が無い……。
目からは遂に涙が溢れ、膝が震え、歯茎もガタガタとうるさい。
ずっと不良達が僕に怒鳴っているが、何を言っているのか分からない。ただ、怖い。
僕は変わったはずだ。神様から最強の力を授かったのに……結局、僕は僕のまま。
どんな力を持っていたって、虐められっこのままなんだ……。
その時、不良の一人が僕の左肩を突き飛ばした。が、反対に体制を崩したのは不良の方だった。てっきり吹っ飛ばされるのかと思っていたのに、不良が僕の左肩に触れた時には何も感じなかった。何が起こっているのか分からなかった。
「な、なんだ……?」
不良達もそんな些細な出来事に一瞬動揺し、浴びせられていた罵詈雑言に少し間が出来た。
そのほんの少しの間が僕に心の余裕を与えてくれた。
なんだ、こいつらは強そうにしてるだけでこんなに弱いんじゃないか。
僕は尻もちをついている不良の腕を掴むと、発泡スチロールのように折った。
「あ? あ、ぁぁぁぁああああああああああ?」
心地いい骨の折れる音と、それに続く絶叫。
腕を折られた不良はその場でのたうち回る。
そうだよ。これだよこれ!
僕はもう昔の僕じゃない! どんな相手が来ても簡単に殺せるんだ!
残り二人の不良も僕は逃がさない。全員の腕の骨を折り、足を砕いた。
こいつらみたいな害虫は虫らしく這いまわっていればいいんだ!
泣きながら、教室の床を這いまわる不良達を見て僕は冷静になった。
もし、こいつらが教師や両親にこの事を告げ口したら責められるのは僕の両親では無いか?
今の両親には迷惑を掛けたくない……。
「いいか? この事を僕がやったって言うんじゃないぞ? もし告げ口したらお前達もお前達の家族も殺しに行くからな」
多分、これで大丈夫なはずだ。
もし告げ口したら全員殺そう。例え警察や自衛隊が来ても、僕なら簡単に返り討ちに出来るはずだ。
僕は最強だ! もう【危険度】なんて関係無い。
目についた悪い奴、人に迷惑をかけるやつは全員僕が倒す。
きっと、神様が僕にこの力を与えてくれたのはその為なんだ。
その日から、僕は中学に行くことを止めた。
何かを察したのか、僕の両親もそれを止めなかった。
僕はもっと強くなるために、日本だけじゃなく世界中を旅した。
移動に掛かる金は【危険度】が表示されている人間から奪った。
ゲームだって敵を倒すとお金が貰えるし、このお金は僕が持つ権利があるはずだ。
そして、俺が十五歳になる頃LEVELは78になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます