プロローグ3

 神的な何かが僕に与えた使命、それはこの世界を滅ぼす可能性がある存在を事前に消滅させる事だった。

 生まれたばかりの時にはさっぱり意味が分からなかったけど、小学校二年生に上がった頃に街で見かけたおじさんの頭の上に【危険度1】と表示されていた。

 最初は目の錯覚かと思い何度か目を擦ったが、やはり変わらず【危険度1】という半透明の文字がおじさんの頭上に表示されたままだった。

 もしかして、このおじさんがあいつの言っていた世界を滅ぼす可能性がある存在なのか?

 あいつが僕に与えた力は二つ、一つは前世の記憶が全て残っている事。そしてもう一つは人間離れした身体能力だった。

 本気を出して走れば車より早いし、ブロック塀なんかも粉々に出来る程度の握力は生まれつき備えていた。

 この力を無闇に使えば騒ぎになる事は目に見えているので、僕の力を知っている人間は誰もいない。

 正直言って、常人には負ける気がしなかった僕は【危険度1】と表示されているおじさんの後をつけた。

 おじさんはビルとビルの間にある薄暗い路地に入ると、そこで柄の悪い若者に何かを手渡しで交換していた。

 柄の悪い若者の頭上には何も表示が無かったので、若者が立ち去った後に僕はおじさんに声を掛けた。

「ねぇおじさん、こんな所で何やってるの?」

 演技じみた言葉におじさんはビクッと肩を震わせると振り向いた。

「僕こそ、こんな所で何をしているのかな? お父さんやお母さんは一緒じゃないのかい?」

「ううん、僕一人だよ」

「そうかそうか。こんな所に居ちゃ危ない。おじさんと一緒に行こう」

 強引に僕の手を握るおじさんの手を握り返して、潰した。

「ぎゃぁあああああ!」

 指と手の甲の骨が砕ける音が鳴り響き、手を握りつぶされた激痛で路地裏をのたうち回る。

「急に何なんだよお前! 痛い! 痛い痛い痛い!」

「駄目だよおじさん。何も分からない子供だと思ったら痛い目見るよ」

 コンクリートの上に転がるおじさんの両足を踏み潰し、脛骨の折れる音が脳裏まで響いた。

「ぎゃぁああああああああああ! ゆ、ゆるし、許してください!」

「もう悪い事しない?」

 首の骨が折れるんじゃないかと思う程、激しく何度も首を縦に振るおじさん。

「ならよし!」

 良いことをした充実感で胸がいっぱいになった僕は、満面の笑みでその場を離れた。

 あのまま放置しておけば、駆け付けた警察が捕まえてくれるだろう。

 突如、視界に【LEVELUP】という半透明の文字が出現し、体の底から今までに無いほど膨大な力が溢れるのを感じた。

 なるほど、こういうゲームか……。

 僕は直観を頼りに【危険度】が表示された人間が他に居ないのか、街を探し歩いた。

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