第16話

「真矢ちゃん、辰巳くんって優しいねー」


「そうだね」


晩御飯を食べながら、帰った辰巳のことを話す。


「あいつはいいやつだぞ」


お父さんの方が辰巳のこと知ってるかもしれない。もくもくとキムチ鍋を食べながら話す。


「真矢のこと好きなんでしょ?ひゅーっう!」


「お、まーやはさすがだな!」


「好きとかよくわかんないけどね」


「きゃー!うちの子もてる~」


「真矢、辰巳は不器用だけどいい子だから仲良くしてやれよ?」


「不器用なの?図工?」


「あー、そうだな。人に接するとき、言葉選びが苦手だったり、そういうの。辞書引くといいぞ」


「わかったー」


お父さんは適当だけど、たまにはいいこと言うよ。


「ねぇー真矢ちゃん、キスしたいとか思わないのー?」


「いやいや、まーやそれは早いぞ」


「キスしたけど?挨拶じゃないの?」


「おー、そうか…。真矢、日本ではな…挨拶じゃなくて好きな女子にしかしないんだぞ?」


「え?そーなの?」


「辰巳はお前のこと1番好きってことだ」


「え、辰巳が?」


「うん、真矢を好きなんだ。だから、お前もちゃんと向き合ってやれよ?」


「…うん。そうするよ」


辰巳はお母さんよりも、私がいいってこと?それって、びっくり。


「おはよう、今日も来てくれたんだ」


「おはよう。一緒に行きたくて」


辰巳って、学校ではあんまり表情変わらないけど、今すごい笑顔だよ。辰巳は仲良しな人じゃないと感情が出せないのかも。


「ねー辰巳。ちょっとかがんでよ」


「え?なに?こう?」


身長差があるなぁ。


「もっと下げて、ほらー」


いいかな?


「え?」


「真矢も辰巳のこと好きだよ」


「え?」


キスしてあげたのに。辰巳ったらぼーっとしてる。


「1番真矢のこと好きなんでしょ?ありがと」


「えー!?」


「うるさいよ」


「えー?」


二回も同じこと言う。


「辰巳、うるさい」


「し、心臓がうるさい、やばい」


「え?なにどういうこと?」


辰巳に手を引かれ、胸に手を当てられた。


「ほら、俺の心臓鳴ってるでしょ?やばいよ!し、死ぬかも」


そんなの聴診器じゃないと無理がある。


「よくわかんないー。じゃあ真矢のは?鳴ってるかな?」


「え…」


ほら、わかんないじゃん。辰巳は変なことするなぁ。聴診器使わなきゃわかんないよね?


「さて行きますか」


辰巳は黙ったままついてきた。子供っぽいことして恥ずかしかったかな?

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