第9話

「辰巳…それは花田さん?」


「暇って言ってたから連れてきた」


先に行っていた友人らはびっくりしてる。


「花田さんと遊ぶの初めて!いつも稲賀さんべったりだからね~」

「花田さんと話したかったんだよねー」


みんな予想外に喜んだ。女子も稲賀さんにびびってたんだな。


「そうなの?嬉しい。ありがとう」


真矢って素直だなぁ。


「じゃ、遊ぼーよ!」

「プリクラから!ね?」


しばし、女子に真矢が連れ去られた。

ので、友人と遊ぶことに。男は割と自分勝手だし、1人で遊ぶ奴も多い。それぞれで遊ぶ。俺は格闘ゲームを2人ですることに。俺のこと大好きな金井とやる。


「辰巳、花田さんのこと気になってんの?」


「は?」


「だってわざわざ稲賀さんからとってきたわけじゃん?」


「…わざわざねぇ」


「ま、花田さんはいつもと変わらないけどな」


確かに…。


「おーすごい!これ楽しいね!これがUFOキャッチャーか-」


真矢の声がする。楽しそう。俺のことなんてどうでもいいのかも。


あーゲームオーバー


「辰巳はぼーっとしてるけどさぁ、優しいし、友達も多くて、気がきくし、たくさん長所あるから」


「そう?」


「花田さーん!こっち来て辰巳と話してやってよ!」


「えー?今?ちょっと待ってー!」


UFOキャッチャーに夢中な真矢。無邪気だ。


「花田さんは、俺からすれば先生みたいなタイプかな?しっかりしてるから」


「そう?変人だと思うけど」


「え、そうなの?そこが好きってこと?」


「うーん、好きなのか?」


「ごめん、お待たせ!」


ようやっと真矢がやってきた。


「じゃ、辰巳と遊んでやってよー」


2人にされた。ので、今やってたゲームを勧める。真矢はゲームやったことないとか不思議すぎ。


「楽しいね。連れてきてくれてありがとう」


「いや、別に」


だめだ。意識して手元が狂う。

あーゲームオーバーした。


「よし、休憩しようよ。飲み物奢るからさ」


「やったー!金持ちだねー」


「そうだけど?」


「羨ましいね」


「そう?」


俺はあまりお金を使わないかもしれない。友達と遊ぶ時くらい?でも、普段は奢らない。

2人でベンチに座って話す間、みんな遠くでゲームに盛り上がってる。


「俺の長所ってなんだろう」


「え?…そうだなぁ、いつも自分らしいとこ?宿題ちゃーんとしてるとこ?笑顔なとこ?」


「真矢は誰にでも優しくて、裏表なくて、素直で元気なとこ」


「裏表?辰巳もそんな感じ?」


「うん」


「じゃ、一緒かもね」


「真矢ともっと遊びたいなぁ」


「遊べばいいよ?」


「そうじゃないし。耳かして」


「え?なに?内緒話?」


髪の毛搔き上げるの恥ずかしくてできなくて、耳元に手をやる。真矢が近い。そっと言う。


「俺は、真矢が好きです」


恥ずかしいから、すぐ離れた。


「なに、連想ゲーム?」


「違う」


「じゃーなに?」


理解してもらえない…。


「嫌だったら離して」


「え?」


ぎゅっと抱きしめた。恥ずかしい、けど離したくない。


「どうしたの?泣くの?」


「真矢が好き、で、苦しい」


「は?苦しいなら離れる?」


「バカ、そうじゃねぇよ。真矢が好きだって言ったじゃん」


「あーそうだったね。うん、私も好きだよ?辰巳はいちいちうるさくないし。あ、でもうるさい気もしてきた」


「好きだよ?愛してる、の好き」


「それよくわからないんだけど」


「一緒だと思うけど」


「ふーん?」


なんでそんな余裕なんだ。せっかくくっついたのに離れた。今度は真矢に顔を近づける。でも、逃げないし。…もう知らない。


「なんでいきなり挨拶?」


いや、いきなりキスしたのに何その反応。

ぷっ。真矢は変人だ。

それも全部大好きだ。


「え?なに?そんな笑って。どこが面白かった?」


「別に?」

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