第7話

決して大きくもないし、小さくもない店に着いた。


「あのー」


恐る恐る中へ入る。


「いらっしゃいませ」


店のカウンターには、派手な柄の服を着た真矢がいた。


「柴田ですけど」


「え?柴田くん?買い物?」


「いやお使い。これお前のお父さんから」


ビニール袋を渡す。真矢は受け取り、中を確認する…


「あー!これ私のなんだけど!どういうこと!?」


なんかわかんないけど怒ってる。


「それで、お父さんはどこ?」


カウンターにばしっと手を置く真矢の手元には、冬休みの宿題が。


「ボランティアだけど」


「はぁ?もー、どっか行ったと思ったらこれだからね」


「真矢は、今暇?」


「暇。だって、お兄ちゃんはライブだとかなんとか?明美ちゃんは塾でしょ?うちには真矢しかいないよー」


「俺も暇だし、話し相手になってよ」


「いいけど。柴田くんうちよくわかったね」


「くじらの名刺に載ってた。これ。それよりさ、真矢は外国人なの?」


「は?なんで?」


「英語うまいから」


「中国語の方が得意だけど?」


「なんで」


「中国にいたから」


「それで?英語できるってわけ?」


「まぁ、普通だけど?」


「あのさぁ、なんで話かけてくんないの?」


気がついたら、うっかり聞いていた。


「え、眠いんじゃないの?」


「眠くないとき」


「難しくない?」


「稲賀さんと話してること多いじゃん。他の人より」


「そーかな?」


「そうだよ」


「辰巳はいつも男の子に囲まれてるイメージあるなぁ。みんな辰巳と話したがってるよね」


「そうだよ?よく知ってるね」


「委員長だし」


「委員長ってそうなの?」


「知らないけど?」


「俺のことも話していい?」


「なに?」


「俺のうちは蛇飼ってる。バイヤーっていうやつ。で、ちょっと手伝ってる」


「偉いね」


「いや、真矢と同じだよ。でも夜中だから学校で眠くなるんだよね」


「中学生は成長期だから寝ないのはよくないよ。相談したら?」


「相談、そうか…その手があった!」


「お母さんに言うとかしたら?」


「お母さんは女優してる」


「え、すごいじゃん。かわいい人?」


「そうだよ」


「辰巳に似てる?」


「逆だし、なにそれ」


真矢はさっぱりしてるな。他愛のない話をしてすごした。そろそろうるさい母が帰ってくると聞き、帰ったけど…もう少し話していたかった。

冬休みは他のボランティアもあったし、真矢と会ったのはそれきりだ。

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