第3話

「きゃー!」


ふいに悲鳴が聞こえたので、テント近くを見る。テントより離れたところで、スタッフが困ってるっぽい。行ってみようとしていたら、他のテントのところにいた花田さんが先に向かっていた。


「どうしたんですか?」


「あ、あそこの草むらに…やだ、怖い」


俺も急いでかけつけ、草むらを凝視する。

あれは…蛇じゃないか?

何の種類か考えてるうちに、花田さんは颯爽と草むらに近づいて…


ワイルドに素手で捕まえてしまった。


「毒ないから大丈夫です」


「それ、どこかにやってちょうだい!」


スタッフはパニックだ。


「んーどこやろう?」


花田さんは落ち着いていて、蛇を持ったままきょろきょろしてる。


「ちょっと!辰巳くん、なんとかして!」


「はい」


で、花田さんと話をつけることに。


「この子どうしよう。また来ても困らせちゃうよね」


平然としてる。しかもこの子って…誰の子だよ!


「え、なに?面白い?」


「だって、この子って…怖くないの?」


「毒ないから全然?」


「…ほら、あっち行こう」


なんだよ、こいつ。変なの。

平然と持って歩いてるんですけど。2人で山の方へ歩くことにした。


「柴田くん、ここだと話しやすいの?」


「えっ」


蛇は遠くの山に放ってやった。


「そんな笑うの見たことなかったから」


「え、それは…花田さんが変だったから」


「マヤでいいよ?」


「え、うん。俺も、タツミでいい」


「タツミは蛇嫌いじゃない?」


「…俺は、むしろ…好き。家で飼ってる」


「え!そーなの?すごいね!知らなかったー!」


「言ってないし」


「ふーんそう。ま、そんなのどうでもいいことだしね」


どうでもいいのかよ。


「マヤ、変なの」


「は?タツミが変だよ」


「なにが?」


「お母さんって呼ばれてたでしょ」


「マヤはお父さんだってさ」


「うわーひどい。盗み聞きとか犯罪なんだよー?」


「マヤも聞いてるじゃん」

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