第3話 契約精霊
「いらっしゃい、主」
召喚したガンショップの扉を潜り、中に入ってみれば店員と思しき男に声を掛けられた。
それも、カウンター越しに。
「銃砲店ガンショップにようこそ」
「……えっと、あなたは?」
「ここの店員を任されている、契約精霊だよ、主」
「契約精霊?」
「そ、契約精霊。
主のユニークスキル、扉召喚はあらゆる扉を召喚することができる。
それも、存在している扉ならどんなものでも、だ」
詳しいんだな。
スキルを持つ俺よりも詳しい店員に、ここはいろいろレクチャーしてもらおう。
「あ~、聞きたいことがあるんだが、質問いいかな?」
「構わないぞ、主。答えられるものなら、何でも答えてやろう」
「ありがとう。
早速だが、あなたに名前はあるのか?」
「名前?」
「ああ、あなたを呼ぶのに便利かな、と思ってな?」
「それなら、我のことはロバートと呼んでくれ。
この銃砲店の店主の名前と同じだ」
「分かったロバート。
じゃあ、ロバートはここで何をしているんだ?
銃砲店だから、銃の販売か?」
「主な業務は、銃の手入れや修理だな。
後は、在庫の管理と銃弾などの仕入れをしている」
「在庫……ねぇ」
俺は、この店に並ぶ棚を見渡す。
実は、この店に入ってきて不思議に思っていることが一つある。
それは、銃が一切無いのに棚だけがたくさん並んでいるのだ。
まさに、新規オープン前の店内だ。
「主、それは主のレベルが低いからだぞ?」
「俺のレベル?」
「そうだ。
主も見たはずだ、扉召喚で呼び出した扉の中は、主のレベルで変わると。
つまり、この銃砲店の品揃えは主のレベルによって決まるということだ」
……なるほど、レベル1の俺では何もない状態ということか。
しかし、武器がなければレベル上げは難しいぞ?
「それじゃあ、レベル1の俺は銃を持つことができないのか?」
「いや、主が選べる銃は……」
そう言いながら、ロバートはカウンターの奥へ移動する。
そして、奥にもあるのだろう棚を物色し始め、一丁のハンドガンを持ってカウンターに戻った。
そして、それをカウンターの上に置く。
「これは?」
「ベレッタM9タイプをファンタジー仕様にした、銃だ。
命中補正と弾丸に魔力が纏わされていて、この世界の魔物にも有効な攻撃力を持つ。
装弾数は15発で、装填済みのマガジンも用意した。
銃の弱点は音が五月蠅いというが、魔法も剣などの武器も五月蠅いのは変わらないから弱点とは言えないだろう」
カウンターに置かれた銃を持ってみる。
すると、ずっしりと結構な重量があることが分かった。
「重いな……」
「命のやりとりをする重さだよ、主。
それに、剣などの武器も結構重いんだよ。
それを、職種の補正や剣術などのスキルで補って装備しているんだ」
「へぇ~」
「ああ、それと。
撃つ時は片手で撃たずに、両手で撃つこと。
そうすることで、ブレずに命中率が上がるから」
「分かった」
「あとは、このホルスターを腰に巻いて銃をここにしまっておく」
ロバートが、俺の腰にホルスターを取り付けてくれたので、手に持っていた銃をしまった。
ん~、予備のマガジンが二つというは不安だな。
「ロバート、同じ銃をもう一丁くれるか?
それと、装填済みのマガジンを後十個ほどつけてくれ」
「良いけど、もう一つの銃はどこに取り付けるんだ?」
『アイテムボックスに入れておくんだ、予備としてね。
装填済みのマガジンも、同じようにアイテムボックスに入れて管理する」
「了解。今用意するよ、主。
ああ、それと、この後は服屋に行った方がいいぞ」
「服屋?」
「主はスーツのまま、異世界を動き回るつもりなのか?」
「あ、なるほど……」
確かに、スーツのままでは動きづらいよな。
探偵事務所から、この世界に来たから着替えることができなかったんだ……。
「でも、今の俺で服屋に入ったとして、動きやすい服が手に入るのか?」
「……ああ、そうか。
今の主のレベルは最低だったな。
ならば、選べる服の数は無いに等しい……。
ならば、主の家の玄関扉を召喚して、主が持っている服で動きやすいものを選ぶしかないな」
「確かに、俺の家ならば動きやすい服もあるか。
他に何かあるか? ロバート」
「ならば、注意点を一つ。
主、主の扉召喚は、本物の扉を召喚するわけじゃあない。
何故なら、本物の扉を召喚したらもともとあった場所の扉がなくなるだろ?
だから、複製された扉を召喚している。
そのため、扉の中も複製されたものだ。
そして、中の物は主のレベル次第で品揃えが変わる。
だから、まず主がこの世界でしなければならないことはレベルを上げること。
上げて上げて、上げまくってくれ。
そうすることで、主の戦力も支援力も上がることになるからな」
「わ、分かった」
「それじゃあ、はい、予備の銃と装填済みマガジン十個だ。
ああ後、銃のメンテナンスは欠かさずしてくれよ。
もしできないなら、ここに持ってくること。
俺が主に代わって、銃のメンテナンスや弾丸の補充などをするからな」
「ああ、了解だ」
俺はカウンターの上に置かれた、もう一丁の銃とマガジン十個をアイテムボックスにしまうと、銃砲店ガンショップから出た。
召喚した扉から出て、扉を閉めると床の魔法陣に扉が潜っていった。
……なるほど、こうして送還されるわけか。
それから俺は、ロバートに言われた通り自宅の玄関扉を召喚した。
床に魔法陣が出現し、そこからマンションの玄関扉がせりあがってくる。
普通の、どこにでもありそうなグレーの玄関扉だ。
扉を開けて玄関に入ると、奥からメイドが一人現れた。
「おかえりなさいませ、主様」
「えっと?」
おかしいな、俺の家に金髪メイドはいないはずなんだが?
しかも、背が高くスタイルもいい。
特に胸のあたりは、平均よりかなり大きく見える……。
いや、そんなことよりも、日本人の俺はマンションに一人暮らしだったはずだ。
金髪メイドなんて、雇うはずがないし、雇えるほど給料もない。
ならば、このメイドさんは誰だ?
「あ~、聞きたいことがるんだが、いいかな?」
「はい、何でも聞いてください主様」
「……君は誰かな?
そして、何故、俺のマンションにいるのかな?」
「あ、自己紹介がまだでしたね。
契約精霊のアニスと申します。
主様の自宅でのお世話をするため、メイドとして働かせてもらうことになりました。
今後とも、よろしくお願いいたします」
マジか~。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます