第2話 ステータスの確認
神崎なな子探偵事務所にある、俺の机から一瞬で薄暗い場所へ景色が変わった。
何が起きたのかと周りを見渡すと、だんだん目が慣れてきたのか周りの様子が分かるようになり、石でできた大きな建物の中だということが分かった。
さらに、足元には大きな魔法陣のようなものが、青白く淡い光を放っているのを確認した。
「……魔法陣?」
大きさは、俺の歩幅で四歩から五歩ぐらいの直径。
二重丸に、三つの異なる三角形が重なるように描かれていて、どこの文字か分からない文字が、いくつもの単語のように書かれていた。
「ん~、もしかして、これが召喚魔法陣とかいうものだろうか?
……とすれば、これは勇者を召喚するものなのか?」
勇者召喚陣かもと思ったとき、俺は周りに誰かいるのかと見渡すも誰一人と居らず、少しがっかりした。
そして、俺の暗闇に慣れた目は階段を発見する。
わずか三段ほどの階段だが、上がれば何かあるかもしれないと魔法陣の上から離れ、階段を上った。
すると、大きな広い場所があった。
どうやら、魔法陣があった場所は建物のほんの一部でしかなく、こっちの広場がメインなのだろう。
周りの柱ごとに明かりが設置しており、デパ地下のように広く明るかった。
「……なるほど、神隠しで消えた人たちはここにきていたのか」
さらに、広場の中心にあるオベリスクのような石柱にはいろいろなことが記されていた。
『ようこそ異世界へ!
ここは、地球とは違う世界でホルバークスという。
君たちの大好きな、剣と魔法のファンタジー世界だ。
この世界で、どう生きていくかは君たち次第といえるだろう!
ただ、今の君たちではすぐに生きていけなくなる。
そこで、私が召喚陣にある仕掛けをしておいた。
気に入ってくれることを期待している。
では、異世界にて良い旅を!!
大賢者ルフとゆかいな仲間たちより』
……何だ、これは!!
異世界で、剣と魔法の世界?!
ある仕掛け?
良い旅をって、ふざけたことしてんじゃねぇ!!
俺はその場にしゃがみ込むと、頭を抱えてしまった。
神隠しの犯人は、この世界の大賢者のルフとゆかいな仲間たちで、しかも、今まで神隠しで消えた人たちもここに召喚されていたということかよ……。
さらにこの文面からは、元の世界へ帰ることができるのかどうか書かれていない。
つまり、一方通行ってことなのか?
「おいおいおい、勘弁してくれよ……」
どうすればいいのかと、途方に暮れているとある物を発見する。
それは、石碑の足元にいくつも貼ってある紙だ。
さらによくよく周りを見渡せば、いろいろなところにいくつもの紙が貼ってあった。
「……気づかなかったな、こんなに紙が貼ってあるなんて」
俺は、石碑の足元に貼ってある紙を一枚はがして見た。
そこには、日本語で赤い文字が書かれていた。
『まずは、自分のステータスを確認せよ!
すべてはそこから始まる!』
ステータス?
すべては、これを確認するところから始まる……。
「……そうだよ、忘れてた。
神隠しで消えた人って、確か約四千人以上いたはずだ。
つまり、四千人以上の日本人がこの世界にはいるはずなんだ!」
なのに、ここには誰もいない。
ということは、みんなここから外の世界で暮らしているはずなんだよな。
もしかすれば、日本に帰る方法を探している人もいるかもしれない……。
俺は立ち上がると、石碑の側面に貼られた紙が目にはいった。
そこにはこう書かれていた。
『あきらめるな! 必ず帰る方法はある!!
だからまずは、生きていく方法を探せ!!』
こうなることが、分かっていたような紙の配置だな……。
とりあえず、俺はこの世界で生きていくために自分のステータスを確認する。
「生きていくにも、この世界で何ができるか確認だな。
【ステータス】」
そう言うと、目の前に半透明なボードが出現した。
名前 森島 裕太(もりしま ゆうた)
年齢 25歳 独身
職業/職種 『神崎なな子探偵事務所』所属の調査員/召喚士
レベル 1
体力 51(基本体力)×レベル
魔力 89(基本魔力)×レベル
スキル
特別スキル 『異世界言語理解』
ユニークスキル 『扉召喚』
通常スキル 『アイテムボックス』
……これが、俺のステータスか。
まずは名前、年齢、職業と職種。
なるほど、俺は召喚士という職種になったのか……。
それからレベル。
この世界には、レベルが存在する。
ならば、当面はこのレベルを上げて強くなればいいというわけか?
それと、体力と魔力。
これは、ゲームでのHPとMPだろう。
この数字を増やすには、やっぱりレベルを上げる必要があるみたいだな。
この算出方法だとするなら……。
後はスキルだが……。
まあ、異世界言語理解はいいとしよう。
俺たちは異世界の地球から来たんだ。
この世界の言葉なんて、話したり聞いたりして理解するなんてできるわけがない。
そして、一つ飛ばして、このアイテムボックスは、無限収納とかいうヤツだろう。
俺もこの手の漫画やアニメは見たことあるから知っているし、ゲームもよくやる。
だが、問題はこの『扉召喚』だな。
何だこのふざけた召喚術は! 扉を召喚した……だけ、で……。
いや、待てよ?
確か、詳細がさっき見えたな。
こうして、扉召喚の所を指でなぞっていて……。
扉召喚
あらゆる扉を召喚できる。
また、召喚者のレベルに応じて召喚できる扉の中も変わっていく。
「扉の、中?」
俺は、何かを確認するように扉召喚を行う。
すると、召喚できる扉のリストがステータスと同じような半透明なボードになって出現した。
ここから選べということだろう。
「えっと、自宅の玄関扉?
ガンショップの扉?
服屋ホーネスの扉?」
この三つだけが選べるようだが、自宅って俺の自宅か?
それと、ガンショップってなんだ?
もしかして、武器を売っている店の扉か?
服屋ホーネスって、うちの近所の服屋だぞ?
普段着や下着も売っているから、結構利用していたが……。
「と、とりあえず、【ガンショップの扉 召喚】」
そう唱えると、目の前に重厚そうな赤い扉が、床に現れた魔法陣からせりあがるように出現した。
「……これが扉召喚か。
確かに、扉だけが召喚されているな……」
扉をぐるりと回って見てみるが、扉のみがそこにあった。
これ、開くのだろうか?
そう疑問に思いながら、ノブに手をかけ回して押してみる。
すると、ゆっくりと扉が開いていった……。
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