第2話 委員決め
多喜くんは四角い。
正確には限りなく四角に近い台形を逆さまにしたような形だ。
小さい頃からスイミングスクールに通っていて、高校生になった今でもほぼ毎日プールに通っている。
水泳選手の体型は逆三角形と呼ばれるが、多喜くんは三角形ほど鋭利な角度ではない。もっと四角寄りだ。そこが好きだ。
顔も四角い。髪型も角刈りに近い。四角い。
いつも本気で楽しんではいないようにニヤニヤと笑う。
でも時々子供みたいな楽しそうな顔で笑う。そこが好きだ。
入学式の日から私は多喜くんに一目惚れし、それからの三年間多喜くんしか見ていなかった。
スイミングスクールに通っているため、多喜くんは学校の部活は最初から幽霊部員になると決めていた。しかも物理部だ。
私が物理部に入ったところで多喜くんは来ない。
部活がダメなら同じ委員になろうと思った。
接点を持つのに必死なのだ。
多喜くんの希望は文化委員だった。
文化祭に力を入れているうちの高校は、文化委員の人気が高い。立候補者多数のためくじ引きだ。
ハズレくじには誰もなりたがらなかった委員名が書いてあるというくじ引き。博打だ。
一か八かの勝負に挑んだ私は運動委員を引いた。
人生で一度も運動部に所属したことのないこの私が運動委員とは。
ちなみに多喜くんもハズレた。
多喜くんは学級委員。
「最悪や……」
多喜くんが落ち込んでいる。
学級委員は超人気薄だったから立候補すれば簡単になれたのに……
急いては事を仕損じる。
最悪や……
私も落ち込んだ。
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