第4話 ある風俗嬢

 高杉がいつもいくソープランドでは、三人か四人の贔屓の女の子がいた。やはり高杉も男、当然容姿が重要である。ただし、彼は綺麗系の女の子よりも、かわいい系の女の子が好きで、選んでいる三人のうち二人までは可愛い系の女の子であった。

 もう一人は綺麗系の女の子であるが、この三人は、店の中で指名やリピーターが決して多いわけではない。そういう意味では、その日に予約なしで行っても、それほど待ち時間もなく相手をしてもらえる。

 だが、高杉が行くのはいつも待ち時間がない朝からであり、そのためには休みに日に行くことが多かった。

 仕事の関係で、日曜日以外は、平日に休みが取れる。だから、その休みの時に、朝から行くことが多かったのだ。

 店は七時から開いている。高杉のお気に入りの子は早番ばかりで、いや、正確には早番の女の子しか見ていないので、三人に絞ったのは、早番の女の子ばかりだった。

 一か月に一度とはいえ、それで十分だった。やはりそれは性欲を補って余りある、趣味や仕事の充実感がそうさせるのだろう。

 特に絵を描くことは今の高杉にとって重要な生きがいであり、他の三十歳の連中が仕事以外に趣味を持っていないことを見ていると、

「かわいそうだな」

 と、感じていた。

 この感覚は、本当に気の毒だと思っているわけではなく、他人事として見ているからであって、他人事でなければ、人に対して、かわいそうなどと思えるはずもなかった。

 確かに趣味に充実した毎日ではあるが、まだまだ毎日を満足できるだけの心に余裕があるわけでもなかった。それでも、三十歳になって仕事では第一線では、それなりの成果が出せているので、満足はしていた。趣味でも仕事でも何とか充実した毎日を過ごしていることで、性欲が満たされなくてもよかったのだ。

 結婚願望があるわけでもなく、彼女がいなくても、別にいいと思っていたのだが、そんな気持ちに少し変化が起こってきたのは、会社に一人の女の子が入ってきたことだった。

 派遣社員の女の子であったが、事務員として働いていて、いつも明るいというのが特徴だった。

 その子の名前を谷口弘子といい、スリムでビジネススーツがよく似合った。特に後ろから見るタイトスカート姿は、そそるものを感じさせた。

 今まで彼女のいたことがなかった高杉は、自分の気に入った女性が今会でいなかったからというのもあるが、それ以上に、

「一人の女性に絞ってしまうと、他の女性を抱くことができなくなるので、そうなると、性欲の飽食状態となり、性欲のバランスが取れなくなる」

 ということを懸念したからだった。

 だから、風俗通いをしているのであって、風俗では、

「お金で楽しい時間を買っている」

 と思っていた。

 他の風俗通いの連中が感じるであろう罪悪感のようなものを絶対に感じたくないと思ったのは、

「お金で、女を買っている」

 と、あからさまに感じるからではないかと思うのだった。

 お金で楽しい時間を買っていると思うことで、疑似恋愛ができるのであり、アイドルとの妄想疑似恋愛をしている連中だって、グッズやCDにたくさんのお金を使うのも、疑似恋愛のためであり、これは、趣味にお金を使っているという感覚と同じではないかと思うのだった。

 高杉は、谷口弘子に対して、今まで他の女性に感じたことのない何かを感じていた。

 綺麗だという感覚だけではない、そう、心地よさのようなものを感じた。

「一緒にいるだけで楽しそうだ」

 という感覚で、彼女が入ってきてから、一か月、ロクに話をしたこともなかったが、彼女の方も、高杉を意識することもなく、ただ、いつも同じ事務所にいるのに、すれ違っているという感覚だった。

 だが、一か月近くもすれ違ったままだと、却って意識してしまうというのか、それは彼女も同じことのようで、たまに、高杉は彼女の視線を感じることがあった。

「話かけてくれればいいのに」

 と感じたが、それは自分が話しかけなければいけないことだということに気づかなかったのは、やはり彼女いない歴が、年齢と同じだということが影響しているのだろう。

 谷口弘子のことを意識し始めたのは、彼女が入ってきて三週間くらい経った頃だっただろうか? いつものように一か月に一度のソープ通いをした時、ソープの近くで、その後姿が谷口弘子に似た女性を見かけたからだった。

 前述のように、風俗街というのは、一定の地区に集中していて、ソープ街に関しては、完全に街の一角を占めていたのだ。だから、そのあたりを歩いている人は、風俗に勤めている女性だということになり、同じ会社の谷口弘子が平日の朝、そのあたりをウロウロしているわけはなかったのだ。きっと他人の空似だったということなのか、それとも、いつも意識をしてみていたタイトスカートと同じ雰囲気の後ろ姿に目が行ってしまって、別人を見間違えたということなのだろう。

 後から確認すると、その日、彼女は普通に出勤していて、朝一番でいつも出勤してくる彼女はその場所にいることはないという、アリバイは成立していることになるだろう。

「そんなにまで、谷口弘子を意識しているということなのだろうか?」

 と、それまでにない感情が自分の中に現れていることを、感じていた高杉だったのだ。

 彼女に似た女性を見たということが、今度は会社において、彼女の後姿にそれまで以上の妖艶さが感じられるようになり、まるで自分を誘っているのではないかというほどに感じられるようになってきた。

 まさか、そんなバカなことはないだろうと思いながらも、見かけた場所の異様さから、彼女を意識するようになったというのは、実に高杉らしいと言えるのではないだろうか。

 今回のソープで指名した女の子は、源氏名を「さくら」と言った。

 小柄な女の子で、ショートヘアのよく似合う、おとなしめであることから、話をしても、声は小さく、すべておいて控えめなのだが、決して謝ることをしないことに気づいてから、

「この女の子は、意外と気が強いのではないだろうか?」

 と感じた。

 自分のことを、Sだと思っている高杉にとって、さくらのような大人しく自分を表に決して出さないようにしている女性は、

「苛め甲斐がある」

 と思ったが、どうもそうではないようだ。

 ただ、高杉がSであるということを理解しているからなのか、プレイ中のさくらは実に従順だった。

 他の客もさくらを見て、

「ドMなんじゃないだろうか?」

 とすぐに気付くだろうと思っていた。

 だが、高杉がさくらが自分から謝ることがないことを知り、

「従順ではあるが、自分の信念をしっかり持っている女性だ」

 ということに気づいたかと思うと、最近では少し態度が変わってきていた。

 態度が変わったと言っても、あからさまに従順さがなくなっていったなどという感じではなく、どちらかというと、

「目力の強さが感じられる」

 という雰囲気になってきた。

 上目遣いが結構多く、猫のような雰囲気は相変わらずなのだが、その目には妖艶さが含まれるようになってきて、笑顔というよりも、ニヤッとしているその表情は、まるで男性を見つめることで、その人の性格を読み取ろうと必死になっているかのように感じた。

 高杉は、そんなさくらが嫌いではなかった。相手の性格を読み取ろうとしているのは、それだけその人に興味があるからであって、その分、安心して身を任せることができると感じるからだ。

 そう思うと、別に彼女が従順である必要はないと思うようになり、相手の妖艶さを楽しもうという気持ちになってきたのだ。

 それは、彼女の性格が変わったというわけではない。人の性格などそう簡単に変わることはない。彼女がそういう態度を取るようになったのは、普段から高杉を見ていて、高杉が自分を見る目が変わってきたと感じたから、自分もそれに合わせているのだろう。

 そういう意味で、さくらが本当はどういう性格なのかということが却って分からなくなり、分からないところが余計に、

「さくらという女の子が奥の深い女の子である」

 と感じさせるに至った。

 そんなさくらは、この間店で指名した時、髪を金髪に染めていたのはビックリした。

「少しイメチェンかな?」

 と言っていたが、何かを思いつめてのイメチェンではないということは分かった気がしたので、敢えて触れないでいると、次第にこの時のイメチェンをしたさくらが、いとおしく感じられるようになったのだった。

「ねえ、高杉さん。高杉さんは今回の法律で決まった、セックス同意書制度というのをどう思っている?」

 と、急にさくらが聞いてきた。

「そうだなあ、頭から反対というわけではないけど、基本的には、あまり賛成できないような気がするんだ」

「どうして?」

「うん、確かにこの法律の成立基盤にあるものとして、まずはコンプライアンス問題がそもそもの始まりだと思うんだけど、結局は、ブレ幅が広いわりに、一気にブレてしまったということが、すべての元凶だと思っているんだよね」

 と、意味深なことを、高杉は言った。

「ん?」

 さくらは分からないようだったが。

「要するにアコーディオン状態といえばいいのかな? まず元々は男女効用均等法というものの観点からもそうなんだろうけど、ハラスメントのようなものが会社において問題になってくると、男性による女性に対しての行為がちょっとしたことでも、ハラスメントに引っかかるようになってきた、ちょっとした世間話のつもりでも、それをセクハラだと言われれば、何も言えなくなってしまうでしょう? さらに個人情報ほどなどのプライバシーの問題、上司が部下に対して仕事上の命令もなかなかできなくなる。最近では働き方改革などというものもあり、下手をすれば、会社における階級制度が壊れかけていると言ってもいいですよね、そうなると、会社の命令系統はズタズタになってしまう。まったく仕事の効率が悪くなって、コスパとしては最悪だよね? それがまず第一の問題」

 と高杉がいうと、

「問題は一つじゃないというのね?」

 とさくらが聞いた。

「うん、僕はそう思うんだ。そしてもっと大きな問題として、冤罪問題なども出てくるのかも知れない。つまりは、今までは、電車の中での痴漢犯罪など、女性が恥ずかしくて何も言えなかったことが、今の時代はまわりが指摘したり、本人も勇気を出して進言すればまわりが助けてくれるという風潮になってきているんだけよね。でも、中には犯人ではない人を捕まえることだってある、自意識過剰な女性がいて、満員電車のことなので、別に触る意志があったわけではなく、ただの接触だけであっても、相手が騒ぎ立てれば、犯罪を犯したという、推定有罪にされてしまう。そうなると、容疑者はまず孤立無援にされてしまう、要するに冤罪がまかり通ってしまうということになるんだよ。男女平等と言っておきながら、女性が権利を主張し始めると、今度は男性が迫害される世界というどんでん返しを食らってしまう。それは、さっきの話の会社での階級制度の崩壊と同じものではないだろうか? 行き過ぎが起こってしまって、それまでの秩序が崩されてしまうことで、いろいろな弊害も起こってくるということなんだよね」

 と高杉がいうと、

「うーん、なるほど、確かにそうかも知れないわね」

 と、さくらが言った。

「アコーディオンと言ったのはそういうことなんだ。つまりは、元々男性に有利だった世の中を、いきなりハラスメントやコンプライアンスという言葉で、逆から押さえつけようとすると、却って、行き過ぎてしまうことになりかねない。そのことを分かっていないと、社会のバランスは崩れていく。何しろそれまではいい悪いは別にして、それが常識だったわけだから、それを急に反対から抑え込もうとすると、相手も反発してくる。さらに強い力で押し込もうとすると、そこに他の力も働いてくるから、押し込まれてしまって、こちらからは押すことができなくなるだろうね。バランスを逸するということはそういうことであって、実に暮らしにくい世の中になるんじゃないのかな?」

 と、高杉はいう。

「でも、それは男性側からの発想ですよね?」

 とさくらがいう。

「確かにそうなんだけどね。さくらさんも、男性側からの発想だと思うかい?」

 と言われて、

「うん、それはそうなんじゃないかって思うの、虐げられてきた女性がやっと自分の権利を言えるようになった世の中。本当はこれが本来の姿なんじゃないかって気もするのよ」

 と、いうさくらに対し、

「うん、確かにそうかも知れないね。僕の話も少し極端なのかも知れない。だけど、結局は、男は男の、女は女の、それぞれの側からしか見ることができないのであれば、この問題が平行線であって、解決することはできないんだろうね。何を正しいかとするよりも、どこを落としどころにすればいいかというところになるんじゃないのかな? だから、お互いに何が正しいのかということばかりを追求していくと、何も結論めいたものは永遠に出てこないんだろうね」

 と言った。

「じゃあ、今度の法律はどう思ってる?」

 とさくらに言われて、

「これも、落としどころの一つなんじゃないかとは思うんだ。確かに強引な法律ではあると思う。でも、そうでもして、強引なことをしないと、悲惨な事件がなくならないとすれば、必要な措置だと思うんだ。何しろ決定的に、男女で身体の作り、それから精神的なことが違っているんだから、しょうがないだろう? 元々僕は精神的な違いというのは、肉体的な違いから来ているんじゃないかと思っているんだけど、その二つを違うものだと考える人がいるから、犯罪も起こるし、こんな法律で抑えなければいけないようになると思うんだ」

 と高杉がいうと、

「じゃあ、高杉さんは法律の制定には賛成なのね?」

 とさくらは少し強めに聞いた。

「うん、基本的にはね。だけど、この法律はかなり人間の尊厳や欲望を押さえつけるような法律なので、このままでは、「張り子のトラ」のようになって、外見は厳しいけど、中身はズブズブにならないかという懸念もあるんだよ」

 という高杉に対して、

「どういうことなの?」

 とさくらは聞いた。

「人を抑えようとすると、必ず反発がある。抑え込もうとする側に、その反発に対しての備えがなければ、下手をすると押し切られてしまう可能性もある。もちろん、それくらいは政府も分かっていると思うので、それなりの法律に柔軟性を持たせているとは思うんだけど、でも、そのわりに、成立までにそれほど時間が掛かっていない。ほぼほぼ、反発には耐えられないものだという気がしているんだ。そうなると、施行されてすぐに、予期せぬ状況が現れて、そこから審議して、さらに但し書きを増やしていく。でも、それは根本的な解決ではなく、枝葉をつけていくだけなんだよね。会社で何かのプロジェクトを起こそうと思うと、そんな枝葉で固めたものが、諸刃の剣であることは誰もが分かっていることなんだ。だけど、一旦法律が施行されると、が示されて、法律の施行と平行して研究され、最後に置き換わるということでもしない限りは、まずうまくはいかないだろうね。だけど、政府がそんなことをするわけがない。基本的に、その法律の審議は終わっているということになっているので、またほじくり返すことは、時間とお金の無駄遣いでしかない。それは政府には許されないことなんだ」

 というのを聞いて、さくらは少し黙り込んだ。

「そんな理不尽な」

 とボソッと口走ったが、

「確かにそうなんだよ、最初から完璧なものを作り出すということは、到底不可能なことだと言えるんだけど、でも、少しでも完璧に近づけるという気概を持って当たらないと、できたものは中途半端でしかない。それを見切り発信させてしまうと、途中で何かあってそれを修正しようとしても、すべては後手後手に回ってしまうんだ」

 という高杉に、

「ええ、そうなのよ、政府の政策って、考えてみたら、まともに行ったことがないって思うのよ」

 とさくらはいった。

「だけどね、これはある意味難しいところで、僕は別に政府の肩を持つわけではないんだけど。世の中、特に政府や会社の役員会などの、会社は国民の代表がやることとというのは、できて当たり前、できなければ、攻撃されるというのが当然のようになっているんだよ。だから、世間やマスコミは、政府が成功した事案は法案に関しては、あまり騒ぎ立てることはしないけど、ちょっとでもミスがあると、皆で寄ってたかって非難するでしょう? だから、政府に関しては、プラスの印象派ないけど、マイナス印象しかない。これはマスコミの連中が、マスゴミといわれるゆえんであって、一種の情報操作ではないかとも思っているんだ。これは結構危険なことで、まるで、戦時中の情報操作に似ているんじゃないかとも思うんだ。もちろん、根本的には違っているんだけどね」

 と高杉がいう。

「うんうん、それは私も分かる気がするわ。マスゴミって本当にそうよね。自分たちの雑誌や新聞が売れればそれでいいと思っているので、モラルも何もあったものではないと思えてくるものね」

 とさくらは言った。

「もちろん、マスコミのすべてが悪いとは言わないけど、昔から、新聞社や雑誌社には自分たちの主張のようなものがあって、同業他社と違った論理を戦わせるという意味で、ある意味政党のような役割がある。平等な報道が求められるべきマスコミが偏った報道になっているのではないかと思うと、ちょっと怖いよね」

 と高杉は言った。

「私もそれは分かっているのよ。だから、高杉さんがどう考えているのか、ちょっと聞いてみたくなったの」

「さくらさんは、この質問を他のお客さんに聞いてみたかい?」

 といわれたさくらは、

「いいえ、今のところ、高杉さんが最初なのよ。高杉さんなら、何か考えがありそうな気がしていたので聞いてみたんだけど、私の期待した答えではなかったのよ。だけど、ここまで詳しく説明してもらって、お話ができれば、私が聞きたかったことに対しての回答のような気がして、それだけでも嬉しいわ」

 と言った。

「そう言ってくれると嬉しいね。さくらさんは、直接的な答えを期待していたことは分かっていたんだけど、僕も正直。あの法律に対しては、何が正しくて、何が間違っているのかは分からないんだ。ただ、弊害がどこかで起こるというのは分かってはいるんだけどね。だから、そこには、押さえつけようとした時の反発に対して、いかに問題が出てくるかということしか言えないんだよ」

 という高杉に、

「ええ、分かっているわ。高杉さんがこのお店に来てくれるのは、男としての性だということも分かっている。特に最近は、彼女がいらないという男性が増えていることは私にも分かっているからね」

 とさくらはいった。

「さくらさんは、分かってくれていたんだね。確かにそうなんだ。一人に決めてしまうと、男として、同じ相手をずっと貫かなければいけないという気持ちはあるんだけど、身体がいうことをきかないというのも、大きな問題なんだ。ねえ、他のお客さんも同じような感覚なんだろうか?」

 と高杉が聞くと、

「ええ、そういう男性がたくさんいることは確かね。だから私たちも、男性を癒してあげているという気持ちにもなりやすいのよ。それだけ、セックスというのが、昔に比べてオープンになってきているのかも知れないとは思うんだけど、私たちは本当に、男性を癒すことができているのかという気持ちも正直あるのよ」

 と、さくらは言った。

「それは大丈夫だと僕は思うよ。他の人が僕と似たような人だったら、大丈夫だと自信を持って言える」

「ありがとう。さすが高杉さん。私ね、たぶん何か誰かに自分の中に人知れず考えていることがあって、それを誰かに聞いてもらいたいと思った時、最初に考えるのが、高杉さんなんじゃないかって思っちゃうの」

 というさくらに対し。

「ありがとう」

 と高杉は答えた。

 高杉も、男として、女性からそんな風に言われれば嬉しくないわけもない。

 人によっては、

「風俗嬢のいうことを真に受けて」

 というやつもいるだろうが、高杉とすれば、

「それこそ偏見というものさ。相手が風俗嬢であったとしても、普通の女の子なんだよ。確かに相手をサービス業の人がいう、営業トークだと考えれば、真に受けるのはどうかと思うけど、それは相手が風俗嬢かどうかということとは別の問題なんじゃないかと思うのさ」

 と思っている。

 もちろん、彼女たちの中にhいろいろな女の子がいるだろう、ただ、さくらに関しては。どこか自己主張の強い女の子だということも分かっていて、それでいて、従順に見せる小悪魔的なところのある女の子だということも分かっている。

 それなのに、いろいろ考えてしまうのは、

「俺が、風俗嬢以外の女性とほとんど話をしないからだろうか?」

 と考えてしまうのだが、それは事実である以上、他の人から言われると、言い返す言葉があったとしても、そこにどこまでの真剣な主張を繰り広げられるかというと、自分でも疑問であった。

「男女で、身体の作りが違うから、考え方もおのずと違ってくるはずだ」

 という考えが、どこまで通用するのか、疑問だったのだ。

 高杉は、考え込んでいるようだった。

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