第2話 法律の問題点

「セックス同意書制度」

 という法律は、実際に法制度として確立される前も、確立されてから施行されるようになるまでにも他の法律に比べて少し時間が掛かった。

 法整備を早めに進めたのも、そのせいではなかったと思うと理解できるところもあったが、果たしてこの法律が、可なのか不可なのかということを考えるとすると、微妙なところであった。

 元々この法律が叫ばれるようになったのは、十数年くらい前から存在していた、

「ユーチューバー」

 なる商売が影響している。

 彼らはユーチューブというネットの媒体を使って、個人が広く情報を提供する。いや、自分をアピールしながら、情報発信することで、広告収入をネット会社も得ることで、個人にその収入が還元されるというものであった。

 つまりは、それまではテレビや映画などが中心だったのだが、それらが、個人でできるようになったということで、一気にブームが過熱した。

 再生回数であったり、チャンネル登録者数であったりがそのまま単価となって、発信者の収入となる。人気ユーチューバーともなると、月収で何百万、いや、何千万という収入が入ってくるのだ。

 作者個人としては、

「楽して収入が得られるなんて、才能でもあればいいが、才能もないのに、ただウケたというだけで収入が得られる商売なんて、認めたくない」

 というのが本音だった。

 最初にやった人間はパイオニアとしてすごいと思うが、その後から続く人間なんて、しょせん二番煎じであり、ただのサルマネに過ぎないと思っているので、それでお金がボンボン入ってくるなどというのは、

「何の苦労もせずに、金儲けしやがって」

 としか思わない。

 嫉妬といえば嫉妬だが、その後蔓延ってきた、

「迷惑ユーチューバー」

 と言われる連中の存在がどれほどのものかを考えると、自分の「嫉妬」も、まんざらでたらめの感情ではないと言えるだろう。

 ユーチューバーというのは、少なくとも、オリジナル作品を書いている作家や絵描き、さらには音楽家などのような芸術的な才能があるわけではない。ただ、ウケることだけを追求して、

「それが世の中の迷惑になろうがどうしようが、モラルや常識など関係ない、自分さえよけばいいんだ」

 という考えを持って行動しているのが、迷惑ユーチューバーである。

 やつらは、危険なことであっても、犯罪であっても、視聴者数が稼げればそれでいいのだ。

 高層ビルのてっぺんに登って下りれなくなり、レスキューの出動を招いたり、わざと警察に捕まるようなことを起こして警察に追われている動画を撮影させ、それをアップしたり、国宝や世界遺産を傷つけてみたりと、完全に犯罪を犯してでも、視聴者数を稼ごうというのだ。

 普通の会社であれば、当然首になってしかるべきだが、ネットの世界が曖昧なのか、犯罪であっても、お金になるのならと、ユーチューバーが所属する運営会社も大目に見ているくらいだ。

 これは完全に運営も同罪と言ってもいいだろう。それだけに罪が深いと言ってもいい。それほどユーチューバーと呼ばれる連中の悪行は、すさまじいものがあり、それを考えると、

「世も末だ」

 とも言えるだろう。

 例の世界的なパンデミックの時に、

「やはり、これで世界も終わりか」

 と思った人が結構いたかも知れない。

 それを思うと、ユーチューバーという連中の罪は大きなものだったに違いない。

 確かに、全員が全員迷惑ユーチューバーと言われるわけではないとは思うが、迷惑でなければそれでいいという考えが果たして通用するのかというのが問題であろう。

 特に問題になったのは、人気ユーチューバーということで、個人的に仲良くなった女の子がいたのだが、その女の子はまだ未成年で、さらに児童だったことで、大きな問題になった。

 何とこのユーチューバーの男は、その子にわいせつな写真を撮らせて、それを送らせ、さらには、それをネタにさらにわいせつな写真と強制的に撮らせたり、さらには金銭を要求したりなどという犯罪を起こしたりしていた。

 このようなニュースはどんどん増えていき。それまでの迷惑ユーチューバーのさらに進化した形として、許されることではなくなってしまっていた。

 それらの法律としては、児童ポルノ法くらいしかなかったが、それでは犯罪がなくなるはずがないということで、どうすればいいのかということが、政府では水面下で進められていた。

 どのように解釈しようとも、なかなか落としどころを決めるのは、至難の業であった。男女平等の観点からも、冤罪を招くという観点からも、さらには、個人情報、プライバシー保護という観点からも難しかった。プライバシー保護と平行して考えられたのが、人権問題だった。どこまで司法や警察が介入できるかという問題があったので、双方に納得させる形にするには、何かの開発が必要とされた。

 その考えが、今回の、

「セックス同意書」

 という考え方である。

 まず、悪質な強要などによる性行為であったり、暴力を撲滅しなければいけない。そのためには、セックスに対して、何らかの制限を設ける必要がある。

 その第一に考えられることとして、

「セックスというのは、好き合っているもの同士が行うのが前提であり、目的として子孫を残すということでなければいけない」

 と定義づけることが必要だった。

 つまり、目的を脅迫であったり、金銭であったりというのは、卑劣な行為であり、到底容認できるものではないというものだった。

 しかし。人間には性欲というものがある。これが異常なのが問題なのだが、だからと言って、性欲をすべて悪だとして締め付けるのは難しいだろう。

 だからこそ、風俗業愛が存在するのであり、

「法律に遵守していれば、風俗業というのは、市民権を得ることができるのだ」

 ということである。

 だから、風俗営業法に遵守していれば、ソープランドなどのセックス業界と呼ばれるものは合法的に営業ができる。

 昔のパチンコ屋のように、その収入がヤクザの資金源になったりという偏見もあったが、今の風営法ではどこまで許されるのかである。

 ただ、逆にいえば、風俗業を失くすというわけにはいかない。性犯罪を失くするために、性的欲求不満のはけ口である性風俗がなくなってしまえば、さらに性犯罪が増えるということで、本末転倒となるのは、当たり前のことだった。

 だから、今回の法案に上がった。

「セックス同意書制度」

 というものを単純に施行してしまうと、風俗業の営業にも大きな障害をもたらしてしまうことになる。

 また、ホテル業界においても同じだった、ただ、これらの問題の解決に一役買ったのも、この法律によるものであった。

 問題は。性犯罪において、美人局のような連中がまだまだいるということだった。

 男が女の誘惑につられて、ホテルなどにノコノコとついていくと、そこに待っていたのが美人局であり、それらのような連中に男が脅されるという、性犯罪の盲点をついたような犯罪は昔からあった。

「強引に誘う男が悪い」

 という決まり切ったかのような考えに、世間は騙されがちになってしまう。

 女が、自分が襲われたと言い張れば、裏で何があっていようと、女を信じるのが世間であった。男が女を蹂躙しているのがカメラに収まっていれば、それだけで、動かぬ証拠になってしまう。

 女の方から、

「襲われているかのようなプレーをしたい」

 とでも言われれば、ホテルにホイホイついてくるような男なので、簡単に騙せるに違いない。

 相手は知能犯だが、それだけではない。完全に相手の弱みを握ることで何でもできると思っているのだ。

 そうなってしまうと、女性を守るのも難しい。ある程度の制限をかけなければいけないだろう。特にホテルなどに入る場合に、

「セックス容認カード」

 がないと、部屋に入れない仕組みにしておくなどである。

 基本的には夫婦間だけには、婚姻届けの提出と同時に指紋登録をして、許可書を配布してもらうということになる。つまり、ラブホテルなどを利用する場合は、夫婦でなければいけないというものだ。

 そうなると、普通に恋愛してのホテル利用もできなくなる、それこそ、

「自由恋愛に対しての冒涜」

 あるいは、

「民主主義の個人の自由への侵犯」

 と、野党は攻撃した。

 しかし、実際にここまでしなければ、多発していて、歯止めの効かなくなってきている性犯罪はなくならない。性犯罪が次第に脅迫であったり、詐欺などに使われるようになると、放っておくわけにはいかない問題に発展していた。

 つまりは、脅迫された男が、他の犯罪に加担するように協力させられるということだ。

 詐欺の電話を掛けたりする「掛け子」、振り込みの金を引き出しにいく「出し子」、さらには金融講座を遣わすに直接接触して現金を受け取る「受け子」を始めとして、見張り役のようなことに使ったりしていた。いわゆる特殊詐欺と呼ばれる連中の犯罪も多様化していて、脅迫を受けている人間が、詐欺に加担させられるというのも新たな手口として問題になっていたので、このような詐欺を撲滅する観点からも。美人局のような犯罪を撲滅すr必要があった。

 そもそも美人局というやり方は、以前に比べれば、結構少なくなっていた。

「それは実際になくなっているわけではなく、形を変えて、新たな犯罪に利用されるようになったからだ」

 という話をしている評論家の先生もいた。

 そのような犯罪を防ぐ意味でも、、ラブホテルというのは、グレーゾーンだった。ただ一つ問題になったのは、デリヘルだった。

 そもそも、国家の本音とすれば、

「未婚の男性であれば、風俗を利用してくれればそれでいい」

 という風に考えていたのだ。

 最初は公式ではなかったが、

「セックス同意書制度」

 が国会を通過した時、それと同時に、ソープランドのような一部の風俗に、国から補助金が出るという制度もできた。

「どうして、風俗業に国から補助金が出るんだ?」

「どうして、ソープだけなんだ?」

 と言われていたが、ここには、苦肉の策があったのだ。

 ラブホテルを利用した自由恋愛ができなくなったことで、

「結婚しなければセックスができない」

 というt縛りが設けられたことになり、そのような性的ストレスの解消が、別の犯罪に波及することを恐れたのだ。

 それが、公共交通機関における痴漢や盗撮のような犯罪であったりするのだ。

 これが増えてくれば、それこそ本末転倒である。

 そのために、

「風俗を活性化させて、性的ストレスをためないようにしないといけない」

 という問題から、ソープランドに支援金を出すようにしたのだ。

 その支援金を使えば、ソープの値段がどんどん下がっていき、それによって、未婚の男子がソープランドを利用しやすくなることで、他の犯罪に走らないようにするのが目的だった。

 だが、そうなると別の問題が出てきた。

 一つは、

「ヘルスなどの他の業界との金銭格差がなくなってきて、ヘルスを利用する客が減ってくる」

 という問題であった。

 本番行為の有無で、ヘルスとソープは別れていたが、ソープのようなサービスではなく、部屋も粗末なところで、シャワーすらないというヘルスは、

「ソープよりもお手軽」

 という意味で、料金もお手軽だったら、利用されてきた。

 しかし、その金銭的な優位が減ってくると、

「今までヘルスにしか行けなかったけど、ちょっとだけ出せばソープにいけるじゃないか」

 という客が増えてくるのだ。

 当然、ヘルス業界からの反発が強くなってくる。そうなると、風俗業界でも、それまでのタブーを破る店も増えてきた。

「本番不可」

 というのが、ヘルスの常識だったが、実際には公然の秘密のように行われるところが出てくるという弊害が起こってきたのだ。

 さらに、問題だったのは、袁術の、

「デリヘル業界」

 である。

 ホテルに入れる男女は、

「セックス同意書」

 がなければ入室が不可になったということで、ホテル出張が主流となっていたデリヘルは痛手だった。

 しかも、デリヘルを自宅に招くという行為も、違法となった。セックス同意という観点があるのに、風俗であっても自宅に呼ぶということを許してしまうと、今回の法改正お意味がなくなってしまう。

 今回の法律では、

「家庭において起こった問題は、セックス同意書がなければ、その理由如何に問わず、男女ともに罰せられる」

 という厳しい問題があったのだ。

 だから、デリヘル嬢を自宅に呼ぶという行為自体が犯罪として扱われるというわけである。

 そのため、デリヘルはこのままでは、存続が難しくなった。そうなると、すたれ始めているヘルス業界を活性化させてデリヘル嬢の受け皿になる必要があった。そうなると、今までのように、風俗の店を開店できるという範囲を条例で設けているところの自治体の法律を撤廃する必要があった。

 そもそも、一つの地域に密集させるということで、風俗を隔離できて、教育上の問題の解消や、利用する人に、入店の際に恥ずかしくないように感じさせるという利点が損なわれることになるが、これも、実際の卑劣な犯罪を抑制するという意味で捉えると、仕方のないことなのかも知れない。

 そのため、築によっては、開店できる場所を広げて、飲み屋街やキャバクラの密集している地域に割り込めるようになったことは、果たしてよかったのかどうか、結果が出るのはしばらくしてからのことであろう。

 しかし、そのおかげで、もう一つの問題が解決されることになるのだった。

 性風俗と呼ばれる店の開業できる範囲が増えたことは、

「女性の性風俗誕生」

 という意味で、立地的によかったのではないだろうか。

 今までの女性のための風俗というと、ホストクラブというイメージが強かった。しかし、ホストクラブというと、あまりいいイメージがない。

「ホストに入れあげて、高額の借金ができてしまったことで、自分たちがソープやヘルスに勤める」

 という状況が一般的になっているからだった。

 だが、中には風俗が自分に合っているという女の子もいて、昭和の頃のような風俗嬢に対してのイメージが薄らいできた。今の風俗の女の子は実に男性に対して明るく接することができ、男性も昔のように風俗通いを後ろめたい気持ちで通うというわけでもなさそうだった。

 だが、少し前の時代から、やたらと、

「男女平等」

 という言葉が叫ばれるようになった。

 元々は、男女雇用均等という概念で、活躍の場を男性と同じ立場でというのが主流だったが、今では拡大解釈をして、

「男と同じ権利を」

 と言われるようになると、それまで使われてきた言葉まで変わってくるのだった。

 例えば、看護婦が看護師になったり、婦警さんという言葉も女性警察官と言わなければいけなかったり、さらには、スチューデスという言葉も、キャビンアテンダントなる言葉に変わってしまい、

「そこまでする必要があるのか?」

 と思わせるほどになってきた。

 そんな時代において、考えてみれば、女性向けの風俗のほとんどが、ホストクラブのみというのもおかしなものだと、どうして誰お気付かないのか、男女平等というのであれば、もっと女性向けの性風俗サービスがあってもいいのではないかと思われた。

 ただ、実際に意見として、

「需要が圧倒帝に少ない」

 という理由がある。

 まず一つは肉体的な意味合いである。男性と女性の一番の性的な違いというと、

「女性は何度でもできるが、男性は一度満足すると、なかなかできない」

 と言われる。

 つまり、ソープ嬢のように、一日に何度もできる女性とは、肉体的な限界があるということである。

 また精神的には、女性の中には、男性に対しての対しての罪悪感や、好きな人以外とはできないという考えを持っている人が多いと言われている。そこも、問題ではないか。

 さて、前者の問題であるが、人によっては、

「肉体を駆使して、無理に本番でなくても、女性が満足できればいい」

 という意見もあるようだが、もしそれでいいのであれば、女性エステというところで行っているところもあるという。

 しかも。同性同士の性的サービスというのは、風俗許可申請の必要がないということなので、別に女性用風俗店を設ける必要なないということであろう。

 後者においても、男女で絶対的な感覚が違うことで、自分が好きでもない男性に身を任せるということを嫌うのだ。潔癖症なのか、それとも。罪悪感というものが強いのか。それだけプライドが高いのかも知れない。

 だから、男性が不倫をすると、女性は絶対に許せないのだ。

 男性とすれば、

「お前も不倫をすればいいじゃないか」

 ということになるのだろうが、それはきっとテレビドラマとかの見過ぎではないだろうか?

 何といっても、不倫や浮気ネタというのは、ドラマのテーマに一番なりやすいものであり、誰もが見てしまうものなのかも知れない。

 他人事であれば、気にせず見れるのか、それとも、自分の罪悪感を和らげるために、

「他の人もやっていることなんだ」

 という意識を持つから見れるのか、どちらにしても、男女ではかなりの差があるということは周知のところのようである。

 ただ、このような理屈から今まで女性風俗はなかったと言われているが、最近では時代が変わってきている。

 時に、女性も肉食が目立つようになり、昔ほどの貞淑な女性が減ってきたのも事実で、

「そろそろ時代的に面白いのではないか?」

 ということで、風俗業界で成功している会社が、これからの女性性風俗のパイオニアになりたいという理由で、小規模な女性風俗サービスの店を立ち上げたりした。

 いきなりの宣伝をしても、なかなか来る人はいないだろうから、呑み屋などで、一人で呑んでいる女性を見つけ、彼女たちに声を掛け、仲良くなったところで、サービスを紹介する。

 もちろん、友達になる勧誘をする相手は女性である。

 最近は、

「一人○○」

 などと一人でいる人が増えた半面、ソロ活をする女性も増えているので、一人でいる人が増えたりはしているが、本当に寂しくて一人でいるわけではない女性も結構いる。そういう意味では結構しっかり見ていかないと、判断が難しくなる。

 そして、男性のソープとの一番の違いは、

「男性と女性、どちらをチョイスしてもいい」

 というやり方であった。

 好きではない男性とは生理的にダメだと思っている人でも、相手が女性で、自分をリードしてくれる人であれば、委ねたいと思うこともあるだろう。男性の友達はおろか、女性の友達もいないから一人でいるのだ。だったら、女性相手でも十分にありえるだろう。要するに、男女隔たりなく、最後には、

「心地いい気分で帰ってもらう」

 ということが大切で。罪悪感を感じると、二度とこなくなる。

 それだけは避けなければいけない。

 さてもう一つ問題点があるのだが、それは、前述で少し触れたことであった。


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