第67話 楽園へ
▽
「──VIPサイドの身元、もっかい確認したほうがいいよぉ? あと、身体検査ね♡」
蛇王ルキは告げた。
「……? 再チェックですか? なぜです?」
眉間に皺を寄せる黒服。
鈍感クンな彼の顎に指を這わせて、ルキは艶やかに囁く。
「──佐々木蒼が紛れてるから♡」
「……は!?」
黒服が唖然とした。サングラス越しでも目を見開いたのが分かる。
「佐々木蒼。知ってるでしょぉ? ウチの元マネ。きっと、この
「馬鹿な……。……ちっ。門番は何をしていたんだ……!」
給仕係の黒服は舌打ちをして、足早にルキの傍を立ち去った。
…………。
……………………。
…………これで、いい。
…………きっと、これで、いいんだよね──。
▼
「おほんッ!! ははっ!! こんばんはっ、芸能界のVIPたち!! よく来てくれた!! この私、
俺が入場して数分後。
金城直美が屹立して、大声で叫んだ。
「今宵お集まりいただいたのは、若きフィクサー、プロデューサー、ビッグネームたち!! 辛く厳しい芸能界を生き抜き!! ははっ!! けれど少しばかりの息抜きを求めている、やんちゃな獅子たちだ!!」
俺の周りのVIP達、脂っこい目の男達が笑い声をあげる。
笑えねえよ、と怒りを溜めながら俺は努力して笑みを作った。
「そして!! 今夜もVIP達との交流を求めて、実に華やかな美女たちが集まってくれた!! モデル、歌手、声優、アイドル!! ははっ!! 珍しい肩書では、流行りのVTuberの演者まで!! どうぞ心行くまで!! 呑み、話し!! 深く深く繋がってくれたまえ!!」
金城直美が、ニッ!! と歯を剥いて笑った。
「それでは!! ここからの流れをご説明する!! まずは女性陣から浴室を使っていただきたい!! ははっ!! 何事にも清潔さは大切だ!! 湯上がり後の女性陣がお化粧を整えているあいだに、次は男性陣が────」
金城が言葉を止めた。
見れば、金城の背後から彼の部下らしい黒服がなにやら耳打ちをしていた。
──なんだ? どうした……? まさか…………
じろりと目を見開いたまま、口は歯を光らせて開いたまま、金城直美は突然、ひときわ大きく、笑い声をあげた。
「ははははははははははっ!!!!!!」
俺だけでなく他のVIPや女性陣も戦慄したのが分かった。
声量だけでびりびりと視界が歪むかのようだ。
そのくらいに金城の笑みはおぞましかった。
「──ははっ!! 申し訳ない!! 少し再チェックといかせていただきたい!!」
金城直美が、ぎろり、とリビングの隅に、つまりはこちらに、目玉を向けた。
「どうやら招かれざる客がいるようだ!!」
────な。
────おいおい……
「女性陣は先に予定通りにシャワーを!! ははっ!! その間にVIPの皆さんは、このリビングで黒服たちの身体検査を受けてもらう!!」
黒服の一人が、玄関のある廊下へ続く扉を閉め、サムターン錠を回した。そのまま扉に立ち塞がる。封鎖された。
VIPたちにざわざわと動揺が広がる。そんな男たちを、屈強な黒服が囲んでいく。
「徹底的な再チェックの後、問題のなかった方だけ!! 真に招かれた者だけ順番に!! 華やかに香る女の子たちの楽園へ!! 2Fに向かっていただこう!!」
金城直美の顔は、まるで悪魔のように、爛々と笑んでいる。
「ははっ!! なに、大半の方々には関係のないこと!! それでは!! ははっ!! ネズミ探しを始めようか!!」
────────マジかよ。
俺は、自分が演技を忘れて表情を失っていることに気がつかなかった。
──────────────────────
今回もお読みいただきありがとうございます。
蛇王ルキ編、佳境です。
ここからハッピーエンドがありえるのかどうか。
最後まで見届けていただけますと……。
執筆の励みになりますので、
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