第三章

第8話

 私の名前は斎藤ひかり。

 彼と別れて、もうすぐ一年になる。別れた原因は、私の自殺だ。もっとも、私はまだ生きているのでそれは未遂に終わったわけだが。

自殺に踏み切った理由は色々あるが、一番は親友の死だろう。私が事を起こす少し前、親友が死んだことを聞かされた。

 彼女とは中学生の頃から仲が良く、違う高校に進学してからも度々交流を持っていた。人と仲良くするのが得意とは言えない私にとって、彼女はかけがえのない親友だった。彼と付き合えたのだって、彼女のアドバイスがあったからだ。

 

 だから、その報せが私の心を打ち砕くのは当然だった。


 病院のベッドで目を覚ました時、私はある女性に声をかけられた。彼女は肩甲骨まで伸びた綺麗な黒髪をひとつにまとめていて、それには所々白いメッシュが入っている。顔つきはわざわざ言うまでもない美人で、彼女に言い寄る男の人は多いだろうなと思った。


「あの……貴方は?先生ですか?」

 とりあえず状況を知ろうと、私は彼女にそう訊ねる。

「!?……ああ、違います。私は医者じゃありません。少し貴方にお話ししたいことがあって、ここに来ました」

 彼女は眼を見開いて驚いたような反応をした後、何度か頷いて納得した様子で言った。

「話……?」

「そう、話」

 それから彼女は、私に話をした。内容を要約すると、「タイムマシンの開発を目指してくれないか」というものだ。


 私は二つ返事でOKした。もしタイムマシンが開発できれば親友は死なないし、別れた彼とも元通りになれるからだ。

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