第50話

『すまない』

『俺たちが悪かった』

『エルデニア王国のアリア女王とアークデビルのことを、我々は誤解していたようだ』

『申し訳ない。アリア女王、国交を再び結んではくれないか。できればデビルニア王国とも国交を結びたいところだ』


 アリアとビルジニア女帝の仲裁のもと、俺は、諸外国の王ら女王らと通信魔法で話し合っている。


 開口一番、各々の王、女王達は俺とアリアに謝ってきた。


 どうやら、俺が残した映像をアリアがビルジニア女帝に見せ、ビルジニア女帝が諸外国の王達に見せたということ。


 勇者がハーレムのために魔王になる。


 そのことは、デビルニアとエルデニアだけでなく、全国に多大なショックを与えたようだ。


 プライドの高い国のトップ達が、通信魔法越しとはいえ、頭を下げて謝ってきたのだ。


 まあ、俺があいつらだとしても、同じことをしたと思う。


 俺は冷静な表情で口を開く。


「そんなことは、勇者を倒してからでも構わない。とりあえず、俺たちは目の前に置かれている現状を打破する手立てを講じなければならない」


 言い終えた俺がため息をつくと、ビルジニア女帝が深刻な表情で口を開いた。


「悪魔と化した勇者の蛹に関してだが、まずは国際連合軍を結成し、そこに赴く必要がある」


 彼女の言葉に、王、女王らはドヤ顔で頭を頷く。


「今は有事だ。軍と兵站は出し惜しみせず国際連合軍にくれてやろう」

「私も同じだ」

「俺も」

「あんな奴が魔王になったら、間違いなくこの世の中は地獄と化す」


 口々に、勇者討伐を買って出てくれた。


 なんていう団結力だ。


 まさしく原作で、魔族との戦争が終盤に差し掛かる頃の団結力に酷似している。


 普通、こういう時って文句を言ったり、反対のための反対をして、いちゃもんをつける連中が必ず現れるはずだが、ここはそういった奴が一人もいない。


 勇者のハーレムへの執念が、種族を問わずみんなを団結させたというのか。


 実に皮肉な話だ。


 この話し合いで、国々が勇者の蛹がいるところに国際連合軍という形で兵と兵站を送るということが正式に決まった。

 

 総司令官はビルジニア女帝。


 他にも国の王族らも参加する。


 大遠征軍ってわけだ。


X X X


 半月後、


 ことは順調に進んでいる。

 

 人族やエルフ族などからなる国際連合軍の一部がユウイチロウに到着した。

 

 サーラとリナちゃんとアハズ村の人々は、交際連合軍が泊まれる場所の用意や料理といった世話をすることとなった。


 印象に残ったのは、国際連合軍の人々はアハズ村の人たちに慰めの言葉をかけていたということだ。


 思えば、アハズ村の住民って本当に辛い人生を送ってきたんだよな。

  

 アハズ村の人々も、国際連合軍たちを歓迎して受け入れてくれた。


 魔族たちも、国際連合軍の人族たちに対して、難色を示すことなく、紳士的に接してくれた。


 どうやら、魔族たちはエルデニア王国の住民らと少なからず交わりを持ったため、人族や他部族に対して耐性ができたらしい。


 それに、俺を裏切ったと思われる魔族らは勇者側についた。


 これが何を意味するのか。


 我が国を蝕む要素が間引かれたということになる。


 あとは、俺の話をしよう。


 俺は勇者になって勇者パーティーに入った。

 

 けれど、それだけでは黒化した勇者を倒すことはできない。


 アンナ曰く、奴がエクスカリバー(現在はアクスカリバー)という必殺技を持ったように、俺も必殺技を持たなければならないらしい。


 だから、俺はその必殺技をどうやって見つけるのかと訊ねたら、それは自分で見つけなければならないとのことだ。

 

 というわけで、俺は堕落した勇者を倒すためのスキル開発に勤しんでいる。


 今は、どっかの荒野で絶賛研究中なのだが、


「ウルトラカリバー!!!」


 グアアアアン!!


 山が一つなくなった。

 

 だが、これだけではだめだ。


 これだと勇者と戦った時の俺の力と何も変わらない。


「えいっ!これならどうだっ!超ウルトラ……カリバー!!」


 俺の暗黒の剣ダークソードから放たれた暗黒の光は別の山へと飛ぶ。


 山が半分ほど破壊された。


「ちくしょ!超がつくのになんで威力が半減するんだよ……」


 悔しさのあまりに、俺は暗黒の剣ダークソードを地面に投げつけた。


「全然コツが掴めね……もう半月も経つんだけど、このままじゃ勇者に立ち向かうことはできない……」


 俺は跪いて悔しそうに右手で地面を叩いた。


「勇者になれば、何でもかんでもうまくいくと思ってたのによ……やっぱり破滅フラグを回避するのって一筋縄ではいかないな……このままだと、あの度し難いクッソパチンクズに負けちまう……」

  

 絶望する俺。


 そこへ、


「何しけた顔してんの」


 魔女のルイスが声をかけてきた。


 俺が頭を上げたら、そこにはルイス含むヒロインズ3人がいた。


 うち聖女であるアンナは心配そうな表情で口を開く。


「お役に立てなくてごめんなさい……」


 爆乳エルフであるサフィナも続く。


「私も……」


 ちなみにサフィナは依然として浮かない顔だが、少しは俺に話せるようになったらしい。


 俺は立ち上がって、早速魔王面を決め込む。


「このアークデビルの手にかかれば、あの勇者などイチコロだ。貴様らに心配される筋合いなどない」

 

 俺の言葉に、ルイスが呆れたと言わんばかりにため息をつく。


「あんたも本当にブレないね。まあ、いいけど」

「これは単なる暇つぶし程度だ。なんなら、今すぐにでもあの勇者を倒せると断言しよう」


 俺は嘯いた。


 それと同時に、


 イゼベルが大慌てで飛んできた。


「アークデビル様!!!アークデビル様!!!」


 地面に着地すると、イゼベルは紫色の目を大きく開ける。


「イゼベル、どうした?」


 俺の問いに、イゼベルは返答する。


「蛹から大量の魔族たちが出てきて、国際連合軍を攻撃しています!」

「な、なに!?」


 俺が当惑すると、アンナが意味ありげに顎に手をやる。


「どうやら、






追記



いよいよ始まります


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