第47話 勇者と魔王
数日後
魔王の執務室
勇者のヒロインズたちがやってきた。
ハッピーファンタジアにおけるメインヒロインである大魔女ルイス、大聖女アンナ、エルフ族の姫サフィナ。
二人はいわば爆乳グループとして数多くの男性たちを悶々とさせてきたものだ。
一体この3人は俺に何の用があるのだろう。
改めて見ると、本当に綺麗だよな。
イゼベルも相当なものを持っているが、この3人もすごい。
いや、今そんなことを考えてどうすんの。
今、ハーレムに目が眩んだ勇者によって世界の平和が脅かされているんだ。
だから、まずはその平和を取り戻さなければならない。
俺はそんなことを考えながら、なるべく魔王面してワインを飲む。
現在、俺の執務室にいるのは俺、イゼベル、勇者のヒロインズ3人(サフィナは様子がちょっとおかしい)。
俺は口を開いた。
「それで、なぜ敵であるこの俺の城にやってきたのか理由を聞こうではないか。もしや、勇者の代わりにこの俺の首を貰いにきたわけではありまいな?」
警戒するふりをして、なるべく虚勢を張っていると、聖女であるアンナが納得顔で言う。
「まず理由を言う前に、あなたの暗黒の魔法を私にかけてちょうだい」
「は?お前は何を言っているんだ?」
聖の力を操る彼女が、聖とは真逆である暗黒の力の頂点に君臨するこの俺に、暗黒の魔法をかけろと?
理解ができない。
そんなことをしてしまったら、アンナは間違いなくダメージを受けてしまうんだ。
こいつ、ヤンデレ属性だからM属性は持ってないはずだが。
俺が眉間に皺を寄せていると、アンナは真面目な表情をして俺を見上げてきた。
「これは、とても大事なことなの。私の体を覆うくらいの暗黒を見せて。お願い」
「……」
丁寧にお願いするアンナ。
Sっ気のある魔女のルイスも、口を噤んで俺を見つめていた。
どうやら『協力しろ』と促しているようだ。
イゼベルは突然すぎるアンナの言葉に面食らっているようだ。
「ふっ愚かな小娘、聖を司るお前が暗黒の力に犯されたら、死ぬかもしれないぞ。それを望むなら、かけてやっても構わない」
「……」
アンナは顔を顰めるが、こくっと顔を頷ける。
まじかよ。
一体何のつもりだ?
一度言い出してしまった手前、今更引き返すことはできない。
いくら勇者のヒロインズでも、彼女が苦しむ姿は見たくない。
エロゲのように、快楽に溺れる姿は見たいけど!
おっと……今サラッと心の中で本音が出てしまった。
俺は気を取り直すための咳払いをしたのち、手を挙げた。
「自分の愚かな行いを悔やむがいい」
やべ……
アンナちゃん……
逃げるなら今のうちだ。
なが、アンナは逃げない。
俺は彼女に暗黒の魔法をかけた。
すると、俺の指先から放たれた真っ暗な光は、アンナの身体全体を包み込んだ。
「っ!あっ!っ!!」
アンナは苦しむ。
そりゃそうだろ。
今すぐにでも攻撃をやめてやりたいが、魔王である手前、そんな軽い行動はできない。
「アンナ……」
「アンナさん……」
暗い表情のサフィナと魔女ルイスはそんな苦しむアンナに心配の視線を向けてきた。
「まだ……まだ……もうちょっと……あん!」
くっそ!!
そのセリフと喘ぎ声はやめろよ!!
エッチシーンを思い出して、俺が人間クズになっていく気がするんだよ。
俺が必死に理性を保とうとすると、
「っ!も、もういいわ……」
アンナが止めるように求めてきた。
なので、俺は素早く攻撃を止める。
「はあ……はあ……はあ……」
激しく息切れするアンナ。
だが、時間が経つにつれて、呼吸を整えるアンナ。
一体この行為に何の意味があるというのか。
俺はため息混じりにアンナを見つめた。
すると、
彼女は
口角を吊り上げた。
そして、自信に満ちた表情になり、俺を指差して言う。
「魔王アークデビル」
「なんだ……」
「映像で見たときは正直に言って半信半疑ではあったけれど、今ので確信したわ」
「……」
映像。
つまり、俺がアリアに送った例のあれだろう。
アンナはルイスとサフィナに意味ありげな視線を向けたのち、俺を見て口を開く。
「あなた、勇者になって私たちと共に、ゼン・ライトを倒しましょう」
追記
コミックスの作業で、ちょっと文字数少なめです。
悪しからず!
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