第46話 可能性
『お前のせいで……全てが台無しだ……お前が大人しく俺にやられたら、こんなことをはしなかったはずだが……全部お前が撒いた種だぞ』
『どうやら図星のようだな。お前は俺の手のひらの中にいるぞ。大人しく俺に成敗されるが良い。アークデビル。若造の風情が調子に乗るんじゃない』
『あははは!やっと目覚めたようだな。魔剣アクスカリバー!!!』
『くらえ!アークデビル!これこそが真の魔王の力だ!!』
『いひひひひ!!無駄だよ!このアクスカリバーは聖剣エクスカリバーにも勝る強さを持っているからよ!』
『あはは!ハーレム……ハーレム……この俺を強める唯一の幸せ、ハーレム!!』
『オウ(oh)、マイ(my)、ドリーム(dream)……ハーレム!ハーレム!』
アリアに送られた映像をビルジニア女帝は、やってきた勇者のヒロインズ3人に見せている。
「気持ち悪い……予想はしたけど、あいつの本性を直接見たら、マジで吐き気がするわ。こんなドス黒いクズが今まで私たちを騙したってわけよ」
魔女のルイスが映像の中の勇者を殺す勢いで睨んできた。
そしたらビルジニア女帝が残念そうにため息をついて口を開く。
「実に残念でならない。まさか、勇者が魔王になったとは……」
女帝の言葉を聞いて、聖女のアンナは何か悟ったかのように言う。
「本当の悪は見分けでは判別することが不可能だったことでしょう……深淵にも善があり、明けの明星にも悪はございます……勇者と行動を共にしてから、たまに謎の違和感を感じていました。その違和感の原因……今になって気づくとは……聖女として失格でございます」
自分を責めるアンナを見て、ビルジニア女帝が慰める。
「大聖女様のせいではない。だから自分を責めることはしないでくれ」
言って、女帝はアンナの肩を摩って落ち着かせた。
魔女のルイスもアンナに慰めの言葉をかける。
「そうよ。女帝陛下のおっしゃる通り。やつはあなたが見抜けないほどのドス黒い悪をずっと心に秘めていたってわけ。魔王なんかと比べ物にならないほど最悪で陰湿よ。まさしく悪魔そのものね」
二人に言われてアンナは一瞬目をうるっとさせるが、やがて冷静な面持ちで口を開く。
「今は魔王と化したライト君を滅ぼすのが最優先課題です。ライト君が蛹から目を覚めたら、間違いなくこの世は地獄と化します」
アンナの言葉に二人は頷く。
「でも……一体どうすれば……魔王アークデビルが全力を出しても壊せなかったじゃん。あの蛹」
魔女のルイスが尖った自分の帽子の先端をいじりながらもどかしそうにいう。
「そう。あの魔王ですら敵わなかった。それに、勇者パーティーもこんな調子……手の打ちようがないというのが私の感想だ」
ビルジニアが深々とため息をついて、やるせない顔をする。
ルイスは必死に頭を絞るが、それらしきいい解決策は見つからず悔しそうに歯軋りしている。
だが、
アンナは何か閃いたように、止まっている映像の中にある魔王アークデビルの姿を見つめる。
「あの……女帝陛下、この映像をもう一度見せていただけますか?」
「あ、ああ。いくらでも」
言ってビルジニア女帝は再び映像を再生させた。
アンナは目を細めて、魔王の一挙手一投足を綿密に観察する。
特にアークデビルが勇者であるゼン・ライトと戦っている場面を穴が開くほど見つめている。
「こ、これは……もしや……」
アンナは何か悟ったかのような表情で女帝に言う。
「これは、是が非でも魔王と手を携えなければなりません」
「「魔王と手を携える!?」」
ルイスとビルジニア女帝の言葉が見事にハモった。
「はい。私は今の魔王から一つの可能性を見出せました」
「「可能性?」」
「とりあえず、私とルイス、サフィナは魔王に会う必要があります」
サフィナという名前が出た途端、アンナとルイス、ビルジニア女帝は隅っこにいるサフィナに視線を向ける。
「そんな……ライトさんがあんなことに……あり得ません……あんなに優しかったライトさんが……」
泣きじゃくるサフィナの姿に3人はため息をつく。
ビルジニア女帝はやれやれと言わんばかりに頭を左右に振ってから、アンナを見て問う。
「まず、その可能性とやらを私たちに説明してくれ」
X X X
魔王side
アリアから連絡が来た。
アンナとルイス、サフィナがデビルニアで俺に会いたがっているとのことだった。
一体なんのつもりなのだろう。
だが、悩んでも何も生まれない。
俺は一瞬の迷いもなく彼女らに会うことにした。
3人が来る間には主に、民のための食料や避難用品などを大量に作らせた。
勇者が倒せないなら、やつが目を醒めた時、被害を抑える方法を考えるべきだろう。
俺はそんな基本的なことをしつつ、3人を待っている。
一体、3人はこの俺に何を話すつもりだろう。
通信魔法でやればいいものを。
通信魔法では伝えられない、よほど大事な話でもあるのだろう。
それがなんなのかめっちゃ気になる。
なるべく勇者やヒロインたちとは絡みたくなかったのだが。
ストーリーがだいぶ変わって、ほぼオリジナルになったとはいえ、やはり強制力は健在のようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます