第40話 亀裂が生じ始める
一日後
昼
ヘーゲルと話し合った勇者は帝国へと戻ってきた。
勇者の超人離れした身体能力を使ったため、たった一日でたどり着くことができたわけだ。
帝都を歩く勇者。
彼はニヤニヤしている状態だ。
やがて勇者パーティーの拠点である宿に着いたら3美女がちょうど昼食を済ませ、お茶タイムを楽しんでいる。
勇者はさらにニヤつく。
「ただいま」
彼の帰還をいち早く歓迎するのは、
「ライトさん!お帰り!予想より早く帰ってきてくれましたね!嬉しいです!ご飯はまだですか?私たちは済ませてますけど、お望みなら作ってあげます!」
「あはは、昼はいいよ。お茶だけ頼める」
「了解です!」
爆乳エルフのサフィナがご主人を迎える犬のように歓迎してくれた。
なので、勇者は自分の剣を隅っこに置いて、テーブルの椅子に座ってお茶を飲んでいる魔女のルイス、聖女のアンナの向かい側に腰を下ろした。
「ルイス、アンア、ただいま」
笑顔を向ける勇者の言葉に、ルイスとアンナは何食わぬ顔して平然とお茶を飲んだ。
見事にスルーされた勇者。
「今日は機嫌でも悪い?よかったら相談に乗るよ」
と、勇者はいつもの主人公っぽい口調で二人を宥めようとするも、二人は勇者の言葉なんかまるで聞いてない。
戸惑う勇者。
そんな彼を睨むルイスは、口を開いた。
「ライト、話したいことがあるの」
「あ、ああ!言ってみて」
と、勇者は嬉々としながらルイスの言葉を聞き入る体制に入る。
ルイスのいう『話したいこと』とは要するに、
お悩み相談。
Sっ気のあるルイスのお悩み相談はなかなか発生しないイベントの一つだ。
原作のストーリーが台無しになった状態でこのイベントは勇者にとって安心感を与えるに足るものだった。
彼女の悩みを解決することで好感度が上がり、サービスシーンを見せてくれる。
さあ、
ルイスはどんなことを言ってくるんだろう。
期待に胸を弾ませる勇者に
ルイスは言う。
「私、好きな男ができちゃったの」
「え!?」
何気なく放たれた言葉に勇者は口を半開きにして聞き返す。
「だからね、あなたが魔王を倒そうが倒さまいが、私は、その男のところに行くわ」
「……」
彼女の言葉を聞いた勇者は、
握り拳を作り、痙攣しだす。
アンナもルイスの言葉に従って、加勢した。
「よかったじゃない。私はあなたの恋を応援するわ。ライトも応援してくれるよね?」
アンナに問われた勇者は一瞬魂が抜かれたように口をぽかんと開けたが、やがて我に返って返事をする。
「いや、それはいきなりすぎるというか……何というか……」
「あら、なんでそう思うの?恋に遅いも早いもないわ」
「でも……」
「でも?」
「そ、そいつが変な男である可能性もあるだろ?だから、僕は心配で……」
「心配……ね」
アンアは戸惑う勇者にジト目を向けてくる。
そしたら、ルイスが顔を引き攣らせながら言葉を発した。
「あんたに心配されるほど、私は弱くないわ。私は誰だと思っているのかしら。まあ、でも、その男が私を騙した可能性もあるわよね」
「そ、そうだよ!世の中には危ない連中も多いわけだし!男なら尚更」
勇者がテーブルに手をついて上半身を乗り出した。
するとルイスはドS女王のように鋭い視線を勇者に向け挑発する感じで言う。
「そうね。その男が実は女たらしで、ハーレム作りに余念がないキチガイである可能性もあるものね」
「っ!!」
「でもね、もしそんな男なら、私はあいつ大切なところをね……ぶっちぎるわよ」
「あ……」
勇者が一瞬怯えるように自分の下半身を密かに抑えると、アンアがジト目を向けてきたl
「ライト、なんでそんな顔するの?変なものでも食べたかしら?」
「……いや、僕はいつも通りだよ」
「ううん。あなたは思いっきり動揺しているわ。私があなたを何年見てきたと思うの?」
「……」
沈黙を貫く勇者。
だから外から入ってくるスズメの鳴き声が余計に大きく聞こえてしまう。
シジマを裂いたのは、お茶とデザートを持ってきた爆乳エルフであるサフィナだった。
「それは女の敵ですね!魔王同様成敗しないと!」
彼女がお茶とデザートを勇者のところへ置くと、握り拳を作り意気込む。
「やはり男は危ないです!でもライトさんは、そういう人じゃないからとても安心しますけど」
「……」
サフィナは純真無垢な子供のように頬を緩めて勇者に信頼を寄せる。
勇者の顔は
依然として長い前髪に隠れて見えないままだ。
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