貯金日記

@jori2

7月10日

 今日は仕事帰りに、壊れた除湿機を買い替えるためにリサイクルショップに寄った。仕事が終わったのは夜の十時過ぎで家電量販店はやっていなかったので、仕方なく深夜まで営業している近所のリサイクルショップに来た。どうしてもこの時期が湿気がひどく寝苦しくてたまらないので、応急措置として中古の除湿機を買いに来たのだ。

 リサイクルショップに来るのは今日が初めてだった。通勤路の途中にあるので、存在は知っていたが、外からリサイクルショップを覗くと、品が陳列されているというよりは、物置のように乱雑にいろいろなものが積まれていたので、変な店という印象しかなく、今までなかなか入る気にはならなかった。

 だが、今日はやむを得ない事情があるし、このリサイクルショップが少し気になってはいたということもあり、利用することにした。


 リサイクルショップの内装は外から見た通り、品物が積み上げられていて、百七十センチもある私の身長よりも高い位置まであり、積み上げられた品物が壁がとなり、迷路のように入り組んでいたのには驚いた。下敷きになっている品物はどうするのだろうか、そんなことを考えながらリサイクルショップをさまよっていたが、この中から目的の品を見つけるのは困難だった。

 というのも、品物の並べ方に統一性がないため、古本の上に車のミニチュアが置いてあると思えば、その隣に小さい仏の置物があったりと、実家の物置のほうがまだ整理されているような気がした。このまま探し続けても埒が明かない。私は除湿機が置いていないか聞くため、店主を探すことにした。

 とはいっても、店主を探すのにも一苦労で、十分ほど店内を歩き回り、ようやく見つけた。店主はレジが置いてあるテーブルの後ろの椅子に座っていたが、顔に雑誌をかぶせて、上を向いて眠っていた。察しがつくことだが、この時間の客足は少なくて暇なのだろう。

 私は店主に声をかけると、店主はビクッと体が跳ねて、はい、と返事をして、雑誌を取ると、顔は皺が寄っており、かなりの年配の男に見えた。私は、除湿機の場所を尋ねると、店主の耳が遠いのか、何度か聞き返された。

 結局、店主は除湿機を聞き取ることはできたが、除湿機がなんなのか理解できなかったため、私は呆れて、もう大丈夫です、と自分から話を止めた。

 明日の昼休みにでも家電量販店に行くか、通販で注文するか、と考えて、店主の前から去ろうとすると、呼び止められた。

 店主は、悪い、と私に謝り、そのお詫びとして、古めかしい木箱を渡した。木箱は、マグカップくらいのサイズの四角い形をしていて、細長い穴が開いたふたがついていた。店主曰く、これは貯金箱で、欲しいものを頭に思い浮かべて対価を支払えば、それに応じた品が手に入るのだという。私は胡散臭いなと思い、苦笑いを浮かべつつ、木箱を受け取るのを拒んだが、店主が騙されたと思って使ってみてほしい、と強気に言うので、受け取ることにした。


 私は、家に帰りつくと、木箱をテーブルの上に置き、財布から除湿機を買うために用意していた五千円札を取り出し、五千円札をふたつ折りにして、木箱のふたに開いている穴に押し込んだ。

 すると、ポケットに入れていたスマホが振動した。スマホのスリープを解除すると、メールの通知が来ていた。

 メールの内容は、置き配が完了したということだったが、はて最近何かを注文していただろうか。しかも、スマホに表示されている時間には、二十三時と書かれていて、こんな夜遅くに珍しいなと思いつつ、マンションの置き配ボックスまで、荷物を取りに行った。


 荷物は両腕で抱えないといけないくらいの大きさのダンボール箱で、軽いとはいえないくらいの重さだった。


 部屋に戻り、荷物の送り主を見ると、大手通販サイトの名前が記載されていて、配送日は7月8日と書かれていた。本当に心当たりがなかったため、おそるおそるダンボール箱を開けると、〇〇除湿機と書かれたパッケージが見えた。

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