叔父に家を追い出された僕が異世界から来た猫と出会い、ダンジョン配信でバズ狙いすることになった件。ちなみに元アイドルで美少女探索者の従姉妹は僕にべた惚れです
220.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(17)-2
220.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(17)-2
「どうも~。お疲れ様で~す」
駐車場に出ると、視線が集まるのが分かった。
あたしは美人でエロいから、当然だ。
時刻は、もう少しで3時20分。
3時30分の作戦開始から、さんごがダンジョンコアを改造するのに10分。その後、彩ちゃんとパイセンが上層の特殊モンスターを片付けるのに15分と考えると、あたしに与えられたのは――
(35分ってところか。まずは状況確認……っと)
駐車場の様子は、さっきモニターで観たのと、当然だけど変わらなかった。
腕組みした鉢巻きラーメンデブが数人。それを囲む野次馬が30人弱。そして10数台の改造車。
「みなさーん、ダンジョンブレイクの恐れがありまーす。早急に解散して、この場を立ち去ってくださーい!」
ダンジョンの職員が呼びかけてるけど、まあ、あれでは誰も帰らないだろう。だって、誰も帰らない仕組みが出来上がってしまってるんだから。
いま駐車場にいる連中を、分類するとこうなる。
ラーメンデブ:言われても帰らない
野次馬:ラーメンデブが帰らない限り帰らない
改造車:誰かが帰れば帰る
一見して、一番攻略が簡単そうなのは改造車なのだが……
誰かが帰れば帰る彼らは、でも、誰も帰らないから帰らない。
何故誰も帰らないかといえば、駐車場の中央に居座ってるラーメンデブに全く帰る気配がないのを見て『じゃあ俺らもいていいんじゃね?』となってしまっているからだ。
つまり、改造車を帰らせるためには、まずラーメンデブを帰らせなければならない。そしてラーメンデブが帰れば野次馬も帰る……ということになるのだが。
「ラーメン屋なめんなよ! うお~っ!」
「「「「「うお~~~っ!」」」」」
空に向かって叫ぶラーメンデブとそれに呼応する野次馬達に、あたしは。
(うえぇ……めんどくせっ!)
そう思うしかない。
(これは……逆から行くか)
あたしは、駐車場の一角に向かった――改造車が集まる、その辺りへ。
ボンネットを開けた車を囲んで談笑する走り屋達の間を抜け、その一番奥へと足を運ぶ。そこには、他よりちょっと年齢層高めに見える人の輪があった。
輪の中心にいる彼女に、あたしは声をかける。
「お疲れ様です、蒲郡先生」
「あら~、春田さん。お疲れ様~。いまね、この人達に話してたのよ。ダンジョンブレイクがどれだけ大変かって。そしたらね『私の生徒もダンジョンブレイクを退治したことあるのよ~』って、あなた達が東京の――」
「OOダンジョンですね」
「そうそう。OOダンジョンでダンジョンブレイクを退治したときの話になったのよ~。ほら、彼女がね、いま話してた春田美織里さん。彼女って、本当に凄いのよ~」
蒲郡先生を囲んでるのは、4,50代と思しきおじさん達で、見事なまでにイケオジ揃いだった。しかも、色んなタイプの。
その中の、1人が言った。
「いま白ゆ……彼女に聞いてたんだけど、ダンジョンブレイクっていうのは、そんなに大変なものなのかい?」
「ええ。いまはまだその恐れがあるというだけなんですけど、実際に起こってしまうと――脅威値って、ご存じですか?」
「脅威値?」
「モンスターの危険さを表す指標です。脅威値1だと、拳銃を持った警官1人で対処出来る程度。10なら10人って感じで」
「ほう……」
顎に手をあてて頷くおじさんは、服装はツナギだけど髪は整えられ、同じく整えられた口髭とあわせて、かなり理知的な印象だ。
他のおじさんも、多かれ少なかれヤンチャそうではあったけど、数字を含んだ説明を始めたとたん感情論に逃げるタイプには見えなかった――あたしは続けた。
「ダンジョンブレイクが起こると、合計で400から700程度の脅威値のモンスターが、ダンジョンから逃げ出します」
「つまり、400から700人の警官が必要になると?」
「はい。でも実際は1000人集まっても対処は不可能でしょうね。警察でもモンスター制圧の訓練は行っていますが、それだけの数のモンスターを相手取った集団戦は、想定していません」
「じゃあ、どうするん――まさか」
「はい。
「「「「「…………」」」」」
マジか、という顔になるイケオジ達。
そこへ蒲郡先生が、スマホを差し出して言った。
「本当よ~。本当に、彼女って凄いんだから~」
「え!? 先生、これってどこで……」
「中国のインターネットで見つけたのよ~」
スマホの映像を見て、あたしは絶句した。
こんなものが流出していたのかと。
映像の中のあたしが、声を上げる。
『逃げるぅ? あんた、誰にもの言ってるか分かってんの!? 殺ルしかないでしょ! いくわよ!『サンダーインフェルノストーム・ツバイ!』』
それは、あたしの前のパーティー――C4G時代の映像だった。
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