叔父に家を追い出された僕が異世界から来た猫と出会い、ダンジョン配信でバズ狙いすることになった件。ちなみに元アイドルで美少女探索者の従姉妹は僕にべた惚れです
220.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(17)-1
220.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(17)-1
※時系列的には『217.猫とみんなで頑張った(1)』と同時進行になります。
Side:美織里
話はちょっと戻って、午前3時。
「じゃ、
「ぼ、ぼげぇええええええ」」
「こんばんわ~。冒険姫メリッサで~す」
作戦が終わって戻るまでの間をつなぐのは、イデアマテリアの探索者、おてもやんと冒険姫メリッサだ。
2人とも明け方から中層のセーフハウスに行く予定だったのだが、なんだかんだあって、東京から
もっとも、彼らが任務に就くのは午前4時からの予定だったから、それがちょっと早まっただけともいえる。
「予定だと、4時30分からイデアマテリアの社長の小田切さんが1人で焼肉を食べるってコーナーになるはずだったんですけど、ダンジョンブレイクの疑いがあるってことでそうもいかなくなりまして~。それでちょっと企画を変更してですね、おてもやんとメリッサさんが焼いたお肉を、いま避難のためここに来ている男鹿高校のみなさんに食べてもらおうという、そういうコーナーで! 時間を潰して! その間にあたし達はちょっと早めの休憩を取らせていただくという、そういうことになったわけです! じゃ、おてもやんとメリッサさん、お願いします! では!」
我ながら力業なトークで配信を離脱し、彩ちゃん&パイセンとともに、レストランを出た。
おかしな気配に気付いたのは、装備を調えるため事務所に足を踏み入れたのと同時――
「(ぼそっ)なんか、いやなざわめき方ですね」
と、彩ちゃんが耳打ちする通り、決して陽性とはいい難いざわめきが、事務所を満たしていた。
トラブルの渦中でも、建設的に物事が進んでるなら、そこには一種の朗らかさとでもいうべき前向きな雰囲気が生じるはずなのだが……見れば奥の方でソファーに座ってる小田切さんも、横顔を険しくしている。
「……上手くないですね」
理由は、パイセンの呟きと視線で分かった。パイセンが見てたのは、そしてざわめきの中心となっていたのは、壁に掛けられたモニターの映像だった。
ダンジョンの周辺を映す、監視カメラの映像だ。
ダンジョンブレイクの恐れがある現在、ダンジョンの周辺に人がいてはならない。それはスマホへの警報や付近にあるスピーカーからの放送で伝えられ、退去を促されている。
でもいま、カメラが映すダンジョン周辺――駐車場の映像には。
「ラーメン屋と野次馬……それと、走り屋ですかね」
またも、彩ちゃんの言う通り。映像には、図式的ともいえる分かりやすさで、駐車場にたむろする人々が映されていた。
さすがに100人はいないだろうが、50人は超えてそうだ。
まず中央にいるのは、タオルを鉢巻きにして腕組みしてるデブ数人――麺やくろさきだろう。これは『来る』と予告があったことだし(ああ、本当に来たんだ)くらいにしか思わない。それをちょっと離れて囲む、2,30人の野次馬もだ。
そして、くろさきを囲む輪とは別にたむろしてる、10数台の自動車。どれも改造車で、微妙に低い車高やちまちま弄った感じの外装から、そうと分かる。
「ああ、美織里――これよ、これ」
あたし達に気付いた小田切さんが、スマホを示して見せる。それで分かった。ラーメン屋と野次馬と走り屋――この図式が、何を伝えようとしているのかを。
スマホに表示されてるのは、ネットの掲示板にある、あたしのスレッドだった。
それによると――ああ、なるほど。
「あの改造車……蒲郡先生が……なるほど」
なるほど、と思うしかなかった。
麺やくろさきだけでなく、彼に賛同するラーメン屋が現れて――おそらく、それによって麺やくろさきも後に引けなくなり――騒ぎを大きくしていることとか。
蒲郡先生がUUダンジョンから帰った足で首都高に向かい、そこでバトルして仲良くなった走り屋を連れてUUダンジョンに戻ってきたとか。
――なるほど、なるほど。
あたしは言った。
「彩ちゃんとパイセンは、装備を整えたら、さっき話した通りにお願い。こっちは――駐車場は、あたしがなんとかする」
「「……(こくり)」」
なんともいえない表情でうなずく2人に、あたしも、なんともいえない気持ちで微笑み返した。
「美織里、ごめん」
いいってことよと小田切さんに手を振り、事務所を出た。一瞬見えた別のモニターには配信が映されていて、そこには。
「うぉ~い、焼けたぞ~。持ってけ持ってけ~」
ハウル笹塚の焼いた肉を、おてもやんとメリッサが男鹿高校の生徒達に配る光景が映されていた。まあ、そうなるよね――おてもやんは酔っ払ってるし、メリッサも最近まで実家暮らしで料理なんてやったことなさそうだし。
「さて、行きますか」
そしてゲートを潜り、あたしは駐車場へと向かったのだった。
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