叔父に家を追い出された僕が異世界から来た猫と出会い、ダンジョン配信でバズ狙いすることになった件。ちなみに元アイドルで美少女探索者の従姉妹は僕にべた惚れです
213.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(14)-2
213.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(14)-2
猫と美少女たちは何気に仲良し(14)-2
Side:パイセン
配信してるレストランを出て、ゲートまで歩く。
途中ですれ違うダンジョン職員のみなさんは、明日の法定停電の準備でなのか、忙しそうだった。
ゲートの内側に入っているということは、この人達も――
(スキル持ち……探索者ってことか)
そんなことを考えながら、バーベキューエリアの方にも足を向ける。
そこでは男鹿高校探索部が合宿をしていて、既に野営に入っていた。何人か見張りを立てて、それ以外はテントに入っている。
不可解というか不気味なのは、生徒達がいるテントから、まったく声が聞こえてこないことだった。
就寝時間になっても騒いで怒られるのが学生というものではないだろうか。そこまで真面目でよい子達ということなのだろうか……いずれにしても。
(仲良く、なれる気がしない)
というのが、偽らざる気持ちだった。そんな風に思ってしまうのは、私が陰キャであることの証なのだろうが……そんなことを、考えていたら。
「(ぺこり)」
見張りに立ってる生徒と目があって、会釈された。
「(ぺこり)」
私も会釈して、逃げ出すようにその場を立ち去る。
●
ゲートを出て受付ロビーに行くと、ソファーには受付のとき話した職員さん。つまらなさそうな顔で、タブレットを見ている。停電で受付のシステムが使えないので、紙の名簿を持って入退館者の管理をしているのだ。
(……嫌だなあ)
光くんと付き合うようになってからも、いや付き合うようになったからなのか、若い男性が苦手な自分を自覚せざるを得ない今日この頃の私だ。
「……お疲れ様です」
ひと声かけてやり過ごし、駐車場に停めてあるバイクでも見にいこうかと思ったのだけど。
「すいません……いいっすか?」
職員さんから、声が返ってきた。嫌だなあ。嫌だなあ。嫌だなあ。ナンパされちゃうのかなあ。おぞましいぞ、と思ってたら……まったく違った。
「いまあ。
データとは、探索者協会が持ってるそれのことだろう。全国のダンジョンのマップ、モンスターの分布や過去の事故事例などが記録されている。
それを見てたら、何があったというのだろう?
「これえ。今日の昼間に追加されたデータなんですけどお。時間と階層からいってえ。追加したのってえ。春田光さんだと思うんですけどお」
確かに今日の昼間、光くんは下見でこのダンジョンを探索している。その時に報告した内容が、協会のデータベースに反映されててもおかしくはなかった。
「それでえ。このデータのことでえ。イデアマテリアさんに連絡っていってないっすかねえ」
「……イデアマテリアに?」
「本当ならあ。協会から
話を聞いて、ひっかかるところがあった。ダンジョン運営に連絡がないならイデアマテリアに? ということは……だ。
「……それって、協会から確認が来るような内容……ってことですか?」
ということなのだ。
職員さんは、頭を斜め上に傾けて頷くと、言った。
「このデータってえ――」
その言葉を聞いて、私はスマホを取り出した。
メッセージを送る。
パイセン:いまいいですか?
パイセン:実は――
返事は、すぐ来た。
美織里:了解
美織里:それで、こっちに戻る前にやってほしいことがあるんだけど――
みおりんからのミッションをこなし、私がレストランに戻るまで、10分もかからなかった。
美織里:OK
美織里:光も何か見つけるだろうから、連絡を待とう
●
21時になり、私も配信に復帰する。
タイムスケジュールにある『素敵なゲスト』とは――
「こんばんは! 逸見尾治郎です!」
尾治郎さんだった。イデアマテリア所属の探索者で、クラスAパーティー『ファストファインダース』の元リーダーだ。
「というわけで尾治郎さんなんですけど、なんで
みおりんからの不躾な問いかけに、大人の余裕で尾治郎さんが答える。
「それはな、24時間ノンストップ探索の支援統括――ぴかりんに何かあった時のために、今日は何人か待機してるんだがな。俺は、そいつらの指揮をとるために来たんだよ」
「へ~え。何かあった時」
「心配は要らないと思うんだがな。ぴかりんの実力なら。でも夜間帯もフィールドを動き回るなんて、ありえないだろ。夜なんて、普通はみんな野営エリアに固まって出てこないし、野営エリアにいないとしたら遭難してるってことだし……だから、こんな時間にフィールドを駆け回ってるぴかりんは、既に遭難してるのと同じなわけだ。だから、いつ何があってもいいように、俺達が待機してるってわけ」
「いいですね。『既に遭難してるのと同じ』って。カッコいいこと言いますよね。美人な彼女がいる人は言うことが違いますよね」
「いやあ、照れるなあ」
「で、そんな美人な彼女がいる尾治郎さんですけど、本当は支援だけじゃないですよね?」
「ん?」
「聞きましたよ。
「ああ、知ってたか。実は9月にある
「ちょっと『間引き』に関しては分からないことがあるんですけど……あれって、毎年8月半ばくらいからモンスターが繁殖して、それを駆除するためにやってるんですよね?」
「そうだが?」
「モンスターって、どんな風に繁殖するんですか?」
「……それは、分からん。というか分かってない。いまだに謎だ」
「これだけダンジョンに関係する産業が盛り上がってて、それでも分かってないって意外ですよね」
「調べようがないんだよ。どうやら夜間に何かが起こってるらしいというのは分かってるんだが、夜間はさ、ほら。さっきも言った通り、野営エリアから出ないのが普通っていうか、出たらすげえ危険なわけでさ。じゃあドローンならどうだって話もあったんだが、全部モンスターに撃墜されて、写真一枚だって撮れていない。だから、せいぜい、モンスターが普段とは違う場所に群れてたとか、そういう予兆があるってくらいしか分かってないんだよ」
そんな話の後、彩ちゃんと自衛隊のトレーニングの話で盛り上がり、尾治郎さんは仕事に戻った。
●
光くんからのメッセージが届いたのは、21時25分。
光:緊急事態。深層の地中に、魔力の塊が埋まっている。大きさはバレーボールくらい。込められた魔力は、モンスター1体分くらいだと思う
光:最初は、倒したモンスターの足下に埋まってるのを見つけたんだけど、ダンジョンコアの近くまで行ったら、何百個も埋まっていた
光:対処が必要なら指示を。放置していいなら、この探索が終わるまで無視する。気付いた情報は送るから、そちらで判断してほしい
それにみおりんは、こう返したのだった。
美織里:多分それ、モンスターの繁殖
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