211.5.猫と美少女たちは何気に仲良し(4)

 Side:パイセン


『24時間ノンストップ探索記念スタンプ』って、めちゃくちゃ見たいんですけど。


 小田切:ほら、こういうの

 小田切:(アニメ絵の光くんのスタンプ。キメ顔で『24時間ノンストップ探索! 行くぜ!』)

 小田切:(アニメ絵の光くんのスタンプ。走ってるポーズで『24時間、ノンストップだぜ!』)

 小田切:(アニメ絵の光くんのスタンプ。キス顔で『24時間、愛してる』)


 うわあ……これはまた、光くんの羞恥心を限界突破させそうな……


 小田切:こういうのが、30パターンね

 小田切:あと、これが重要なんだけど

 小田切:UUダンジョン側の担当者の名前と電話番号


 美織里:あー、それは重要だわ

 美織里:そうだ……重要っていえばさ、彩ちゃんって、いまどこにいるの?


 そうだ――心配なのは彩ちゃんがいまどうしてるかで、それが分かってないからメッセージアプリの不調なんて些細な……少なくとも、いつもの探索で起こってるトラブルよりはずっと些細なことで話しあいなんてしているのだ。


 しかしこれについては、さんご君があっさり答えてくれた。


 さんご:彩は車でUUダンジョンに移動中だ

 さんご:蒲郡に呼び出されたということは

 さんご:何かあるかもと思って

 さんご:ドローンに追跡させてたんだ


 美織里:いや~、デキる男は違いますな~


 さんご:当然、君達のこともドローンに追跡させてる


 美織里:あ~。これってやっぱり、あんたのだったのね~


 みおりんが顔を上げたので私も目線を上げると、私達の十数メートル上空に、空気……いや光の淀みみたいなものが出来てるのが見えた。


「……あれが、ドローン?」

「そうそう。『不可視モード』ってやつね」


 言われてみると、海外の動画で見る『光学迷彩』みたいでもある。


 さんご:君達が野球をプレイしてる姿も撮影してあるから、MTTの動画で使うといいよ


 小田切:さんご君、ありがと~

 小田切:(お辞儀のスタンプ)

 小田切:じゃあ、彩ちゃんとは現地で合流出来るわけね

 小田切:UUダンジョンの担当さんに電話して、伝言お願いしてみるわ


 彩ちゃんの安否が分かり、私達の緊張もちょっとは解けた。


 小田切:だめだ……電話、繋がらない


 あくまで、ちょっとだけだ。

 依然として、不安とその元凶は残る。


 さんご:通信トラブルについては、蒲郡の『シュリンク』の影響と考えていいだろう。そして蒲郡が関係している以上、同様のトラブルが連鎖する可能性が高い。


 さんご:そこで、美織里とパイセンに頼みたいことがあるんだけど――いいよね?


 否があるはずもなかった。



 それから十数分後、私達は光くんの家にいた。

 山の中にある、あの小屋だ。



「うえ~い。やっとるかね、君達~」

「「「「「ふみゃ~お」」」」」


 みおりんの声かけに、揃って挨拶を返すさんご隊――小さなさんご君型のロボット達。


 この子達は光くんの小屋の地下にある工房で、日夜イデアマテリア関係の動画を編集したり、コメント欄の荒らしを駆除したり、配信中のチャット欄をコントロールしたり、投げ銭したリスナーの名簿を作ってお礼を言い忘れたりしないように助けてくれたり、それから――さんご君謹製装備の整備と製造を行ってくれている。


「さんごから連絡いってると思うんだけど、聞いた?」


「「「「「みゃ~ん」」」」」


「UUダンジョンに『空飛ぶサーフボードシルバーサーファー』を送ってくれってことで、伝わってる?』


「「「「「みゃ~ご」」」」」


「じゃ、そういうことでヨロシク!」


「「「「「んみゃ!!」」」」」


 さんご君の頼みとは、彩ちゃんの援護のため、UUダンジョンに『空飛ぶサーフボードシルバーサーファー』を派遣してほしいということだった。


 蒲郡先生の『シュリンク』――ささいな出来事をピタ○ラスイッチ的に連鎖させることで自分に都合の良い現実を実現させるスキル――の影響がある以上、通信での指示では心許ないということで、私達が直にさんご隊に指示を出すことになった。


空飛ぶサーフボードシルバーサーファー』には何種類かあって、まずは2次元素材の刃で敵を切り裂く『ダガー』。魔力の砲弾を撃ち出す『ヴァレット』。それからダンジョンでの運用は初めてになるという『ファランクス』の3種類に加え、つい最近開発が終わったばかりだという『グラッセ』がある。


「さんごからの指示を伝えま~す。『ダガー』と『ヴァレット』は3機ずつ。『ファランクス』は6機。『グラッセ』は1機――計13機をUUダンジョンに派遣。ダンジョン外殻から沈降して彩ちゃんを護衛。彩ちゃんからの距離は『ファランクス』が50メートル。『ダガー』が100メートル。『ヴァレット』が200メートルを保つように。なお『グラッセ』は彩ちゃんの移動にあわせて、ダンジョン各階層の入り口付近で待機。以上!」


「「「「「み”ゃ!」」」」」


 ほどなく、さんご隊の操作により『空飛ぶサーフボードシルバーサーファー』の編隊が発進し。


「お~、これか~。ちゃんと映ってるね~」


 工房の隅の個室でモニターを見ると、そこにはサービスエリアで名物の『おでん天ぷら串』を食べる彩ちゃんの姿が映されていた。ドローンからの映像で、一緒にいるのは探索部の生徒か。


 さんご君の情報では、彩ちゃん達は他の高校の探索部と一緒にUUダンジョンに潜ることになっているのだという。


「じゃ、それが終わるまでモニターで見守って、それからあたし達も出発するとしますか」


「……ですね。っていうか」


おでん天ぷら串あれ、美味しそうだよね」


「……ですね」


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