188.猫と気のいい大男(下)
「あれって、どう
美織里に聞かれて、一瞬、意味が分からなかった。
美織里なら、一秒もかからず斃せるだろう。
なのに『どうやったら』って――ああ、なるほど。
「あれって食べるんだよね? 持って帰って、料理して……だったら斬ったり潰したりとかは不味いんじゃない? 焼いたりするのも、やらない方がいいよね?」
ということなのだ。
「そうだね。生でも食べてみたいから、焼くのもしたくないね」
「冷凍は?」
「冷凍は……パサパサになりそうだから、それも無しで」
「う~ん。どうする?」
「う~ん。どうしよう」
二人して悩んでると、さんごが言った。
「だったら、この間みつけた、
「あれ?」
「『結界』だよ」
「「「しゅはっ、しゅはっ、しゅはしゅしゅしゅっ」」」
仲間を呼び増えてく
『結界!』
結界で包む。
「「「しゅはっ、しゅはっ、は、は、は、は……」」」
すると眷属はみるみる弱って、5分も経たずに動かなくなった。
『結界』は、使った術者の魔力で維持される。ではそれをカットするとどうなるかというと『結界』の内側にいる生物から魔力を吸い取り始める。
この場合は、
吸い取る魔力の量は結界の強さによって変わって、いま僕が眷属を包んだ『結界』は、いつも使ってるのよりちょっと強めにしていた。
そして『結界』に魔力を吸い取られ続けると――身体中の魔力を失って、やがて死ぬ。
その通り、魔力を吸い取られた尽くした眷属は、いま『結界』の中で死んでいた。
問題は、こういう殺した方をしたことで、味にどんな影響が出るかなんだけど。
「じゃ、ちょっと食べてみましょうか」
先日、ジョウエンダンジョンでやったように『結界』で鍋を作り、眷属を茹でてみた。
眷属は濁った水みたいな黒色だったけど、熱が通るにつれて赤くなっていく。
「「「蟹だ……」」」
僕と美織里とさんごの声が揃った。
そして茹で上がった眷属の足をもいで、みんなに渡して食べてみると――
「「「「「「「「「んまーい!」」」」」」」」」」
当然、そういうことになった。
「はふはふ。
ブライが言えば。
「
と、ブラムも。
イクサが言うには、こういうことだった。
「市場に出回っている
聞くと『魔力〆』とは、死体に魔力を流すことで死体に元からあった魔力を一掃して劣化を防ぐ技術なのだという。
とりあえず『結界』を使った方法で美味しい眷属が手に入ることが証明された。
「さあ、どんどん狩っていこう!」
さんごの号令で、僕らは狩りを再開した。
明日ふるまう分としたら、これで充分だったわけだけど……
「もっと魔力の濃い場所で獲れたのと、味を比べてみたいわよね~」
と、美織里が言った。
『もっと魔力の濃い場所』とは、つまり――
「じゃあ行こうか、中層!」
ということだ。
「ふんふんふん!」
「はっはっはっ!」
そして中層に降りても、ブラムとブライ親子のテンポの良さは変わらなかった。
次々とモンスターを斃し、僕らを導いてくれる。
僕らも眷属を見つけては。
「『結界』!」
「『結界』!」
美織里も加わって『結界』で斃す。
美織里はこんな『結界』の使い方は知らなかったと言ってたけど、初手からあっさり成功させていた。といっても『結界』で相手を包むだけなんだから、簡単に習得できて当然か。
途中でまた広場があったので、中層の眷属を試食してみると。
「「「「「「「「「またまた、んまーい!」」」」」」」」」」
なのは当然として。
「なんだこれは……身から染み出す汁気が……とろり、いやどろりとして濃厚。噛まなくても、口に含んだだけで旨味が広がってきやがる。身のプリプリした食感も面白い……うん。好みは別れるだろうが、俺は、中層で獲った奴の方が美味いと思う」
意外な食レポの巧さでブライが評する通り、上層の眷属よりも濃厚で美味しかった。
それから上層の倍ほどの数の眷属を狩り、僕らはダンジョンを後にしたのだった。
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