187.猫は棺桶で空を飛ぶ(下)
それからすぐ宴会は終わり――ということはなく、1時間ほど続いた。
その間、僕は美織里達にからかわれ続けていた。
美織里:明日、もう一度、ここに来て下さい(キリッ)
美織里:美味しい大鬼蜘蛛料理を、みなさんにご馳走します(キリッ)
美織里:いや~。これ、次に販売するスタンプに入れる?
パイセン:(それな)のスタンプ
彩:(金を持ってけ)のスタンプ
やめて……やめて…………
羞恥に身悶えしてると、声をかけられた。
武人にエルフに獣人――東方諸国の3人だった。
「光様……先ほどは、ありがとうございました」
「我々のために、あのようなお言葉、なんと申したら良いか……」
「有り難く……誠に有り難く」
そんな風にお礼を言われて、困った。
だって、僕は……
「僕はただ『嫌だな』と思って、それを口にしただけですから――お礼を言われるほどのことではありません」
「「「!!」」」
何かを呑み込むような顔で頭を下げる3人に、僕が更に困ると、彩ちゃん父がやってきて言った。
「お~い、ぴかりん。カッコよかったじゃん。で、どうするの?
それはそうだが、あてはあった。
さんごを見ると。
「僕頼みかい?」
悪いけど、その通りだ。
「
「ダンジョンに連れてくまではどうにかなるけど、潜れるかどうかは別だよ」
そうなの?
「手続きが必要だったりするかもしれないしね」
すると、3人の1人――武人が言った。
「ダンジョンに入る手続きは必要ですが、なんとか出来るかもしれません。実は……私の息子が、
ああ……予感の通りだったわけか。
「
と、エルフも同行を申し出て。
「私は、こちらに残って調理の準備を整えましょう。商工ギルドで鍋釜を揃えますので、必要なものをお教え下さい」
獣人が言って、後は隣国――チ=カバへ行くだけとなった。
●
「うん……まだ、生きてるのがあったか」
●
宴会が終わり、僕らは馬車で街を出発した。
チ=カバへ行くメンバーは、僕、さんご、武人、エルフ、そして――
「あたしと光は
美織里だった。
ちなみにブラムは武人、イクサはエルフのことで、ここにはいないが獣人はエシカムという名前だった。
美織里が担いでいるのは銀色のサーフボードで、
同じものを僕も担いでいて、僕と美織里はこれに乗ってチ=カバへ行くことになっている。
でも、こんなのには乗れないブラムとイクサの移動手段がどうなったかというと……
「近場に生きてる奴があって良かったよ」
さんごが言った次の瞬間、夜空に星より眩い光が瞬いて、こちらに向かってきた。
「緊急離脱用ポッドさ。僕らが生命の危機に陥ったときの避難用に軌道上に待機させていたんだ。呼べばこの惑星のどこにいても15秒以内に迎えに来て、成層圏外まで連れてってくれる。もっとも、これを使わなきゃならない時なんて、死んだ方がマシなシチュエーションしか思いつかないんだけどね。だから、僕らはこう呼んでいたんだ――『
僕らの前に降りたそれは、まさに棺桶そのものの姿をしていた。
「本来の用途とは違うけど、ブラムとイクサには、これに乗って移動してもらう」
「「……承知いたしました」」
ブラムとイクサが、表情の消えた顔で頷くと、棺桶の蓋がぱかっと開いた。二人とさんごがそれに乗り込んだら、出発だ。
「『
ふわりと空に浮かんだ棺桶を追って、僕と美織里も銀色のサーフボードで空へ。
「はぁ? 誰にもの言ってるか分かってる?――行くわよ、光」
「うん、行こう。美織里」
次の瞬間、ひゅん、と風をきって飛び去った棺桶を追って、僕らも飛んだ。一瞬で、最高速度まで加速して。
突如現れた高速飛行する物体に、慌てたドラゴンが襲ってきたりもしたけど。
「結界!」
全て、結界や。
「
雷の光弾で退けた。
「ちょっと光! あたしにもやらせなさいよ!
雷の槍が口から尾まで串刺しにする。
そんな感じで、チ=カバまでは10分もかからず到着した。
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