183.猫と最初のお嫁さん(後)

  僕と最初に結婚するのは、美織里だった。


 僕が来てるのと同じガウンを羽織って、でもその下は式の作法を教えるときマゼルさんが着てたのと同じ、全裸にシーツを巻いて腰に着物の帯を巻いたような姿だ。


 頭には花で編んだ冠を着けて、顔はベールに隠されて見えない。でも近付いてくる姿を見ただけで、僕は思っていた。


(今日までの……どんな美織里より美しい)


 光が蝶のごとく煌めく中、美織里が立ち止まり、向かい合って立つと、その想いはますます大きくなった。


 神父が言う。


「トレンタ神様に誓い、この若き男女が、雨と陽が命を生みし行いを倣うに充分たる、健やかな者達であることを、天と地の間にある全てに対し、王都コマシーノ協会より申し上げます」


 そして、僕と美織里を交互に見て続けた。


「では若き2人よ。証として、まずは天に対し、熱きベロチューを献げましょう」


 つまり、キスしろということか。


 美織里の顔を隠すベールに手を伸ばしかけて、僕は神父を見た。神父が頷く。ベールに触れ、左右に開いた。


「知ってるか? あれはな、女が男に股を開くことのメタファーなんだぜ」


 そんな参列者というか野次馬の声は、まったく気にならなかった。


 ベールの奥から現れた美織里が、それほど美しかったから。


「美織里、愛してる」

「うん。あたしも、愛してる」


 答える声は掠れていて、唇が触れる直前、目の端から涙がこぼれるのが見えた。僕も、ちょっと泣きそうになって――でも、そこまでだった。


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カクヨム運営からの指導によりここにあった内容を削除しています。


理由:過剰な性描写


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 ぐったりともたれかかる美織里をお姫様だっこして、僕は、神父に言った。


「次は、どうすればいいんですか?」

「いや、次は……聖堂で地に対し猛烈な交わりを献げて……」

「エッチしろってことですね」

「あ、うん……そうなんだけどね」


 美織里をお姫様だっこしたまま、神父が開けてくれたドアを通り、教会に足を踏み入れた。


 聖堂の場所は、すぐに分かった。



 教会に入ると、そこは大きく円を描くような廊下になっていた。そこを進むと、神父と同じデザインの服を着た女性が立っていて。


「ガウンを、お預かりいたします」


 彼女にガウンを渡し、開けられたドアの向こうの部屋――確かめるまでもなく、ここが聖堂に違いなかった。


 背後でドアが閉まる音を聞きながら部屋を見渡すと、聞いてたとおり、正面には……


「本当に、さんごだ」


 巨大なさんご。いや、トレンタ神の像があった。高さ4メートルくらい、と聞いてた気がするけど、でも塊として見ると、そんな数値は意味がないように思えた。


 部屋は円形で、中央にマットが敷いてある。そこに美織里を降ろして、横たわる僕の、まだなんて呼んだらいいか分からないその人に、添い寝する。


 しばらく待つと、薄目を開けて。


「……あたし、やっちゃった?」


 美織里が聞いた。


「うん」


 と答えながら、僕はキスをする。


 美織里が暴走するのはいつものことだけど、それは(誤用されてる意味での)確信犯で、今日みたいに彼女自身にもコントロール不能になるのは珍しい。


「うん……キャンディー。『状態異常無効』があるからいいかなって食べたら、その時は大丈夫だったんだけど……光の顔を見たら『状態異常無効』、とんじゃって、それで………………恥ずかしい」


 だから、ちょっと落ち込んでるのかな。

 いつしか部屋が暗くなって、視覚より、伝わる体温の方が饒舌になっていた。


 赤くなる一方の美織里に、また僕はキスをする。


「ごめんね――んっ」

「いいよ。ほら――」

「んちゅ……怒ってない?」

「怒ってないよ」

「ん”……キスしながら話すの、ずるい」

「そうかなあ」

「そうだよ。ちゅ。ほら……ん”、ん”……」

「ねえ――する? 最後まで」

「うん……してくれるの?」

「僕はしたいけど?」

「あたしも……したい」

「どんな風に?」

「いじわる……光の、したい風に。光の、したいように……して欲しい」

「いじわるでも?」

「いじわるなの……嫌いじゃないっていうか、好き? だし?」

「じゃあ――」


 美織里の服を剥いで、僕は自分のしたいようにして美織里を抱いた。後には彩ちゃんとパイセンもいるから、いつもみたく何度もではなかったけど、激しくもなかったけど、エッチで、気持ちよくて、ときどき自分が美織里と自分のどちらなのか分からなくなるくらいで、僕も美織里も、終わってすぐは、立ち上がれなくなるほどだった。


「光……顔、見せて……ん、くふぅ……もっと、光の、気持ちいい顔……見たい……あ、あっ……光も、気持ちよくなって。ん”、ん”ん”ん”ん”! もっと、光の好きにしていいから……あ、あぅう……あっ……嬉しい……光、あたしで気持ちいいの? あたしで気持ちよくなってるの? ん”……ん”ん”……んちゅ……光、溶けちゃってるよ? ふぅっ! あ……あたしの中で、びくびく動いちゃってるよ? そんなに気持ちいいの? そんなに溶けちゃった顔して、そんなに気持ちよくなってるの? ふあ、あ、ああああああ! もっと……もっと気持ちよくなって……いいよ

。あたしは、光のものだから……もっと、あたしで気持ちよくなって……ああっ!」


 終わった後、僕の胸に頭を押しつけながら、美織里が言った。


「今日は……あたしが『意地悪』しちゃったね」


 そんな美織里に返す言葉もなく、僕は美しくて可愛くて愛おしい彼女に、ただただ見蕩れるだけだった。


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